マガジンのカバー画像

「スクリーンの中の私」 女性に響くCinema

40
登場人物や監督、原作者など映画に関わるさまざまな女性の姿。あなたとどこか重なる部分や、違うからこその気づきがあるはず。名古屋の映画館がおすすめする、女性に注目したい映画をご紹介し…
運営しているクリエイター

#映画

心に残る、忘れられない映画と出会いませんか。

ドラマやドキュメンタリー、アニメーションなどさまざまなジャンルの映画を気軽に楽しむことができる現代。 独自の文化や歴史が色濃く感じられる、世界各国の作品にふれられる機会も少なくありません。 ストーリーがもたらす感動や高揚感、出演者の巧みな演技、好奇心を満たす映像体験など、1本の映画にはさまざまな魅力が詰まっています。      たくさんの映画の中には、楽しめる、感動するといったシンプルな娯楽作品だけでなく、作品に描かれた出来事や人物から何かを感じたり、自分に置き換えて考え

教訓や答えを求めるのではなく、体験するという映画の楽しみ方

無駄がなく、わかりやすい。それは簡単で手軽かもしれませんが、世の中はそれほど簡単に割り切れることばかりではありませんよね。 人間が一面的ではなく、いろいろな要素を持っているように、映画や文学などでもさまざまな問いが散りばめられ、多様な見方ができる作品があります。ストーリーを追って、予定通りの結末にたどり着くのとは違う楽しみ方を見出してみるのはいかがでしょうか。   ■『悪は存在しない』世界が注目する濱口監督の最新作 自然が豊かで、昔からの住民と移住者が穏やかに暮らす長野

それぞれの居場所で、日々を生きていくということ

夜、眠りについて目覚めると次の朝がやってきます。 当たり前のようですが、それを繰り返して毎日を生きていくことは簡単ではないと、感じるときがあるかもしれません。大きな苦難を乗り越え、時には心を痛める悩みを抱えながら、前へ進んでいくにはどうすればいいのか…。 今月、名古屋市内のミニシアターで上映される女性が主人公の映画を通して、〝生きていくこと〟という大きなテーマについて、あらためて向き合ってみませんか。 ■『朝がくるとむなしくなる』生きづらさを抱えた女性の再生の物語 会社

女性の権利のために立ち上がるヒロインたちの実話に勇気づけられる

1973年、アメリカ連邦最高裁が女性の人工妊娠中絶の権利を合法とした歴史的な判決を下しました。 それまで非合法とされてきた人工妊娠中絶を女性の権利として勝ち取った背景にあったのは、名もなき女性たちの活動です。私たちが今、無意識に手にしている自由や権利は、勇気を持って立ち上がった人たちによるものだったことを伝える作品があります。作品を通して歴史を知るだけでなく、私にもできる!と力をもらえるかもしれません。 ■『コール・ジェーン ― 女性たちの秘密の電話 ―』人工妊娠中絶を必

当事者として政治や選挙を考えたくなるドキュメンタリー映画

日本各地で時折行われている地方選挙や、国政選挙。ニュースで見かけることはあっても、自分に関係のある出来事としてとらえている人は少ないかもしれません。 もしかして、自分が住んでいる自治体の選挙にも無関心という人はいませんか? 女性候補者が現職を破って当選した東京都の区長選挙を追ったドキュメンタリー映画を通して、日々の暮らしや未来に大きく関わるものとして選挙を考えてみませんか。   ■『映画 ◯月◯日、区長になる女。』区長選に立候補した女性と支援者に密着 2022年に東京都

大正時代の女性解放運動家の生涯を通して、女性の生き方を見つめ直す

決まり事や慣習、同調圧力。 私たちを縛るものに疑問を感じたとしても、意義を唱えて声を上げることは案外難しく、勇気がいるのではないでしょうか。なんとなく従っておけば波風が立ちませんし、そもそも疑問を感じるには常に問題意識を持って物事と向きあう姿勢が必要かもしれません。 言論などさまざまな自由が認められている現代でさえ、そう感じてしまうのに、今から100年前の日本で生きる女性の立場だったらどうでしょうか。 ■『風よ あらしよ 劇場版』劇場版としての編集でさらに際立った人物像

子どもたちに食べてほしい給食を実現する、夢みる大人たち

多くの小学校や中学校、幼稚園などで提供されている学校給食。好きなメニューがあった、給食が苦手だったなど、いろいろな思い出がよみがえることでしょう。 でも、給食にどんな食材が使われていたかは、あまり記憶にないことが多いのでは? もし、オーガニック食材を使った給食だったらどうでしょう。 大人になってからも、「私の学校はオーガニック給食でこんな食材が使われていた」と思い出せるかもしれませんね。   ■『夢みる給食』給食を含めた健康のための食情報 地産地消、できるだけ農薬を使

異国で懸命に生きる家族の姿を見つめ、多様な人々を思いやる

世界各国から集まった人々が多様な文化を織りなす街、ニューヨーク。活気があふれ華やかに映る街の片隅に目を向けると、理想にはほど遠い暮らしを懸命に生きる人たちの姿も見えてきます。そんな街でたくましく前向きに生きる移民の家族を描いた映画は、多様な人々の背景に思いをはせるきっかけにもなりそうです。  ■『ニューヨーク・オールド・アパートメント』ある家族を通してアメリカの移民問題を描く 安定した生活を夢見て、祖国ペルーからニューヨークへやってきた不法移民の一家。母はウェイトレス、二

監督の思いを強く映した、音楽との化学反応も新鮮な青春映画

映画と音楽の関係は深く、流れる音楽によってシーンの印象は大きく異なってきます。 できあがった作品にあわせて作曲したり、既存の曲に発想を得て制作される作品も。企画の段階から映画監督とミュージシャンがタッグを組んで制作に取り組むプロジェクトがあることを知っていますか。 映画と音楽の濃密なコラボレーションで紡ぎ出された作品の魅力を感じてみましょう。 ■ 『ふたりの傷跡』若者に希望あるメッセージを提示する青春映画 親友のハルを自殺で失い、自己嫌悪を抱きながら生きる高校生の木崎

ある事情を背負って生きる女性の闇と、かすかな光に心揺さぶられる衝撃作

世界の多くの国と比べると恵まれているように見える日本の社会。 しかしそこにも、さまざまな闇が存在しています。そして、日常の中でその闇はなかなか見えづらく、気づくことが難しいもの。過酷な状況に置かれている人たちの存在に思いをはせるきっかけとなるのは、事件報道にかぎらず映画や小説などの作品ということもあるかもしれません。 ■『市子』徐々に浮き彫りになる市子という人物 恋人の長谷川からプロポーズを受けた翌日に、突然失踪した女性、市子。 彼女の行方を探すうちに、長谷川は市子に関す

独自の姿勢を貫くフリーランスライターを通して、日本の政治と選挙を考える

ジェンダー平等を目指して前向きな取り組みが進んでいますが、世界に比べると大きく遅れている日本。 男女格差の現状を各国のデータをもとに評価した「Global Gender Gap Report」(世界男女格差報告書)の2023年版では、日本のジェンダーギャップ指数は146カ国中125位でした。順位は2006年の公表開始以来最低で、分野別にみると政治は138位とのこと。 男女格差を含め、さまざまな問題を抱えている日本の政治や選挙について、長年取材するライターの視点を通して考え

アイドルのその後を通して、次へと向かう人の覚悟と輝きを描く

学生生活を終えて社会人になる、住み慣れた故郷を離れて別の場所で暮らすなど、新たな環境へ踏み出したときは、これまでとの違いに戸惑ったり悩んだりすることも多いはず。 もしそれが、スポットライトを浴びる華やかな舞台から一般的な社会人への転身だとしたら、次へと進む道のりはより厳しいものに感じられるかもしれません。 ■『ファンファーレ』20代の女性の心情や葛藤を描く アイドルグループ〈ファンファーレ〉を卒業した玲は、スタイリストを目指して衣装会社で働く日々。同じく元メンバーの万理

わずか1%の出産を選んだ女性と、それをサポートする助産師の記録

「あなたのお母さんは、あなたをどこで産みましたか?」と聞かれたら、ほとんどの人が病院と答えるでしょう。現代の日本では病院で出産する人が圧倒的に多いですが、病院以外でも出産できることを知っていますか? 今では珍しくなってしまった出産の風景について、ドキュメンタリー映画を通して理解を深めてみませんか。 ■ 『1%の風景』助産所での出産を経験した女性が監督 99%の出産が病院やクリニックといった医療施設で行われている日本。残りの1%は助産所や自宅での出産です。助産所とは助産師

本音でぶつかり合う家族に笑って泣けるヒューマンドラマ

マスクを外す場面も増えてきて、ようやく素顔が見えたという間柄もありますよね。今まで見えなかった部分が明らかになることで、好感を抱いたり、ちょっと残念に感じたりすることもあるかもしれません。マスクのあるなしに関わらず、内に秘めた思いは身近な間柄でもなかなか気づけないもの。あらためて向き合うことで、初めて見えてくる真実もあるはずです。 ■ 『愛にイナズマ』理不尽な社会に反撃する女性と家族の物語 映画監督デビューの夢を理不尽なやり方で奪われた花子。反撃を誓った花子は、運命的に出