わずか1%の出産を選んだ女性と、それをサポートする助産師の記録
「あなたのお母さんは、あなたをどこで産みましたか?」と聞かれたら、ほとんどの人が病院と答えるでしょう。現代の日本では病院で出産する人が圧倒的に多いですが、病院以外でも出産できることを知っていますか?
今では珍しくなってしまった出産の風景について、ドキュメンタリー映画を通して理解を深めてみませんか。
■ 『1%の風景』
助産所での出産を経験した女性が監督
99%の出産が病院やクリニックといった医療施設で行われている日本。残りの1%は助産所や自宅での出産です。助産所とは助産師が医療機関と連携し、妊娠や出産はもちろん、産後や子育てなどでも母子をサポートしていく施設。助産所ってどんなところ?自宅でどうやって出産するのだろう。
助産所や自宅での出産を選んだ女性と、彼女たちをサポートする助産師の日々をみつめた『1%の風景』は、そんな疑問に答えをくれるドキュメンタリー映画です。
作品を上映するシネマスコーレの支配人・坪井さんに、映画の見どころを伺いました。
― 出産のなかでも、特に助産所や自宅での出産がテーマですね。
坪井:そうですね、出産をテーマにしたものはこれまでにもありますが、助産所や自宅での出産にスポットを当てた作品は非常に珍しいと思います。途中で新型コロナウイルスの流行が起きたこともありますが、撮影期間は4年間だそうで、人の命に関わるドキュメンタリーは1年や2年では撮れないんだろうなと感じました。
― 監督の吉田夕日さんも助産所での出産を経験された方なんですね。
坪井:実際に経験された方だからこそ、助産師さんや助産所での出産を選んだ女性の思いや、助産師さんの立場をちゃんと理解して、信頼関係を築けているように感じました。伝えたいことが明確なので観客にわかりやすく、一生記憶に残るような作品になっていると思います。監督の舞台挨拶が11月26日(日)に予定されているので、その際に詳しく聞いてみたいですね。
お母さんに寄り添い、出産までの道筋を作る
― この作品を通して見た助産所や自宅での出産について、どのように感じましたか?
坪井:赤ちゃんを産むのはお母さんなので、お母さんの気持ちに寄り添ってケアをしていくことが大切で、赤ちゃんが生まれるまでの道筋を作ってあげるのが助産師さんの仕事なんだと感じました。助産師さんは赤ちゃんが生まれる瞬間までお母さんと向き合っていくので、そのおかげでいろんな悩みが軽くなっていくようにも見えましたね。お母さんが〝安心して気持ちを任せられる人が近くにいる〟と感じられるのが、助産所の強みなのかなと思います。
― 特に印象に残ったシーンなどはありましたか?
坪井:ある赤ちゃんが逆子だと診断されて、お母さんはちょっと不安そうなんですが、助産師さんは「全然心配ないよ!」と言って、心配させないようにするんですよね。しかも、逆子を直す体操みたいなのをお母さんに教えて、やってもらうと本当に直っちゃうんですよ。人と向き合ってきた助産師さんの熟練の技とでもいうのか…、本当にすごいなぁと思いましたね。
妊娠中の異常などに備え、地域の産婦人科医にお願いできるように連携も取れているんですよね。そういったつながりもしっかりしているんだなと感じました。
1%は0%にならないと感じられる
― 今でも数少ない助産所や助産師さんはさらに減っていくのでしょうか。
坪井:この作品の中では、もうお産の扱いを止める助産師さんもいましたが、その一方で新しい助産師さんが生まれてくることも伝えられていました。看護学校の学生に助産師さんが自分たちの仕事を伝えるシーンもあります。1%が0%になるっていう撮り方ではありません。お母さんから赤ちゃんへ命がつながるのと同時に、助産師さんの仕事もつながっていくことが感じられます。
この映画を通して助産所や助産師さんに興味を持ったり、出産や子育てに新たな可能性を感じたり、いろいろな広がりがある作品だと思います。日々の暮らしの中ではなかなか知ることができないテーマについて伝えてくれるドキュメンタリー映画を、ぜひ見に来てください。
『1%の風景』の予告編はこちら
シネマスコーレ劇場情報
シネマスコーレ
映画監督の若松孝二氏が1983年に立ち上げた、名古屋駅西口にあるミニシアター。2023年に開館40周年を迎えた。アジア映画、日本映画、インディーズ作品などを中心とした多彩なプログラムに加えて、作品を盛り上げるイベントにも力を入れている。
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