異国で懸命に生きる家族の姿を見つめ、多様な人々を思いやる
世界各国から集まった人々が多様な文化を織りなす街、ニューヨーク。活気があふれ華やかに映る街の片隅に目を向けると、理想にはほど遠い暮らしを懸命に生きる人たちの姿も見えてきます。そんな街でたくましく前向きに生きる移民の家族を描いた映画は、多様な人々の背景に思いをはせるきっかけにもなりそうです。
■『ニューヨーク・オールド・アパートメント』
ある家族を通してアメリカの移民問題を描く
安定した生活を夢見て、祖国ペルーからニューヨークへやってきた不法移民の一家。母はウェイトレス、二人の息子は語学学校で学びながら配達員として働くことで、なんとか家計を成り立たせています。ニューヨークでの暮らしに疎外感を覚えながら、美しい女性に心ひかれていく息子たちと、新たな恋に希望を抱く母。それぞれの思いがたどりつく結末は―。
『ニューヨーク・オールド・アパートメント』は、アメリカが抱える移民問題を通して家族の絆を描いた感動作です。
作品を上映する、ミッドランドシネマ 名古屋空港の支配人、森さんに見どころを伺いました。
― 母と息子、移民の家族がニューヨークで生活していくことは大変そうです。
森:母親も息子たちも収入は限られていて生活は厳しそうですが、不幸や貧困のどん底とまでは感じさせないんですよね。息子たちはわりと明るく健気に、一生懸命生きているという印象なので、見ていてそこまで暗い気持ちになるということはありません。
― この家族は不法移民の状態ですよね。
森:そうですね。ひっそりと身を寄せ合って暮らしているという感じです。この映画が作られたのは、おそらくトランプ大統領の時期だったと思います。ですので、移民に対する風当たりがより強かったのかなという気がしました。母親が働いているレストランで、外国人だからと差別するようなお客さんもいて、時代背景を色濃く映しているのかと感じましたね。だからこそ、多様性の尊重や多文化共生を映画のテーマとして描こうとしているのかなと思います。
思春期の青年が抱える戸惑いや成長も
― 息子たちの恋も描かれていますね。
森:ちょうど高校生ぐらいの年頃で、異性に興味を持つ思春期なんでしょうね。少し年上の大人びた女性に魅かれるのですが、彼女からは恋愛対象としては見られていないみたいで、そこはちょっとおもしろかったですね。青年の成長物語の一幕のようで。
― その一方で、やはり大きな悩みを抱えています。
森:不法滞在者として生きている後ろめたさや、周りから認められていないという空虚さがあり、アイデンティティを確立できないことへの苦悩が時折感じられます。
― 兄弟と女性が親しくなるのは、異国で生きる者として共感があったのでしょうか。
森:彼女の方も生活のために夜の仕事をしたり、恋愛に問題を抱えていたりするので、移民かどうかに関わらず、それぞれ生きづらさを感じる状態だったのかなと思います。とはいえ、自分たちの居場所や拠り所が見つけられない暮らしの中で、出会った数少ない人とつながろうとする、ぬくもりを求めるという傾向はあったでしょうね。
風景や食からも伝わるニューヨークの街
― 母親にも白人男性との恋など、希望を抱くような展開がありますね。
森:そうなんですよね。息子たちがいるのに母親が家に恋人を連れてきたりして、ちょっとオープンだなと感じた場面もあります。母親もまだ若いですし、母であり女性でもある、ということかもしれません。
― ニューヨークが舞台ということで、街の様子も楽しめそうですね。
森:ニューヨークの街並みはもちろん、料理が出てくる場面もあって、食文化から街や国の雰囲気も伝わってきます。
ニューヨークに比べればずいぶん少ないですが、日本で働く外国の方も増えたように感じます。この映画を通して、多様な方たちの背景に思いを寄せることにつながるかもしれません。また、これから春にかけて新しい生活に向かう方もいますよね。その背中をそっと押してくれるような作品にもなりそうです。
『ニューヨーク・オールド・アパートメント』の予告編はこちら
ミッドランドシネマ 名古屋空港 劇場情報
県営名古屋空港に隣接する、エアポートウォーク名古屋内のシネマコンプレックス。ソフトレザーシートを配した12スクリーンを備え、バラエティに富んだ作品ラインナップとスタッフ手作りのPOPも魅力。
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