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ある事情を背負って生きる女性の闇と、かすかな光に心揺さぶられる衝撃作

世界の多くの国と比べると恵まれているように見える日本の社会。
しかしそこにも、さまざまな闇が存在しています。そして、日常の中でその闇はなかなか見えづらく、気づくことが難しいもの。過酷な状況に置かれている人たちの存在に思いをはせるきっかけとなるのは、事件報道にかぎらず映画や小説などの作品ということもあるかもしれません。


■『市子』

徐々に浮き彫りになる市子という人物

© 2023 映画「市子」製作委員会

恋人の長谷川からプロポーズを受けた翌日に、突然失踪した女性、市子。
彼女の行方を探すうちに、長谷川は市子に関する衝撃的な事実を知ることになります。名前を変え、人を欺きながら生きなくてはならなかった、彼女の人生を変えた宿命とは?
壮絶な環境を生き抜く女性の生き様が心に迫る『市子』

作品を上映する、ミッドランドシネマ 名古屋空港の支配人、森さんに見どころを伺いました。

― 監督は劇団の主宰者で、この作品も人気の舞台作品を映画化したものだそうですね。

森:そう聞いています。ただ、この映画は非常に映画的に仕上がっていて、これが舞台作品だったの?と驚くほどです。舞台では、どのように上演されたのか気になりますね。

― 映画として面白い、興味深い点はどんなところでしたか?

森:市子がどんな人物であるかを本人が語るのではなく、周りの証言によって彼女の実像が浮かび上がっていく構成です。黒澤明監督の名作『羅生門』もこのスタイルですね。この手法によって、非常にサスペンスフルで飽きさせない展開になっていると感じました。最後に、自身の言葉で語られる市子の思いが非常に感動的なので、そこもぜひ注目してほしいです。
 

当たり前の日常が叶わない人の存在に気づいて

© 2023 映画「市子」製作委員会

― 彼女が置かれていた特殊な環境とはどういうものでしょうか。

森:
そこはネタバレになってしまうので、あまり詳しく話せませんが、私たちのほとんどが当たり前にしている普通の生活、日常を送ることが難しい状況です。私たちが自然に享受している日常はすごく幸せなことなんだなとあらためて思いましたし、それを願いながら叶わない市子の姿を見て、とても痛々しく感じました。

― 彼女がそんな状況に陥ってしまった原因はどこにあると感じましたか。

森:一つにはやはり家庭環境のせいですね。親によって翻弄され、人生が変わってしまった子どもは被害者と言えるかもしれません。もう一つは、日本社会の仕組みにも問題があるのではないでしょうか。ニュースなどではこの問題を耳にしたことがありますが、解決するには法律の改正などが必要なのかと思いました。
 

市子として、生き抜く強さを放つ杉咲花さん

© 2023 映画「市子」製作委員会

― 私たちの想像を超えるような環境を生きてきた市子は、どんな人物に映りましたか。

森:過去に罪を犯したことも明らかになりますが、凶悪な犯罪者や自暴自棄に陥ったサイコパスなどではなくて、決してあきらめずに生きようとする女性だと感じました。悲劇的な状況に希望を持てなかった市子が、夢を持って動き出した過去のエピソードも語られ、彼女にも何か救いがあってほしいと思いながら見ていた私はほっとしました。

― その市子を演じている杉咲花さんの演技も話題になっていますね。

森:彼女の存在感は本当に際立っていました。なんとかして生きていこうという力強さ、根源的なエネルギーを感じました。また、恋人の長谷川を演じた若葉竜也さん、市子を探す刑事役の宇野祥平さんなど、周りのキャストも素晴らしかったです。宇野さんの刑事は、捜査として彼女を追うだけではなく、理解して寄り添おうとするような雰囲気も出ていて、若葉さんとともに、観客が共感しやすい人物の役割を果たしていたと思います。
市子は誰なのかを解き明かすサスペンスとしても、過酷な境遇の中で自分自身のアイデンティティを見出そうとする女性の人間ドラマとしても楽しめる、見ごたえのある作品です。

『市子』ミッドランドシネマ 名古屋空港ほかにて、上映中。

『市子』の予告編はこちら

ミッドランドシネマ 名古屋空港 劇場情報

県営名古屋空港に隣接する、エアポートウォーク名古屋内のシネマコンプレックス。ソフトレザーシートを配した12スクリーンを備え、バラエティに富んだ作品ラインナップとスタッフ手作りのPOPも魅力。

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映画紹介マガジン「スクリーンの中の私」

 


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