マガジンのカバー画像

ことばの樹

21
文芸作品と金城学院大学のことが大好きな教職員が結成した文芸俱楽部「ことばの樹」。四季折々で表情を変える美しいキャンパスやいきいきとした学生達の雰囲気などを掌編小説で紹介します。
運営しているクリエイター

#先生

ことばの樹

文芸作品と金城学院大学のことが大好きな金城学院大学教職員が集まり、クラブを結成しました。 文芸倶楽部 「ことばの樹」 部員達がオリジナリティ溢れる感性で掌編小説を執筆します。 四季折々で表情を変える美しいキャンパスやいきいきとした学生達の雰囲気など、さまざまな情景が思い浮かぶ作品を紹介します。 部員紹介 加藤 大樹 金城学院大学人間科学部多元心理学科教授。 文芸倶楽部ことばの樹の部長。 アートセラピーや対人関係の研究に取り組んでいる。 学生時代から小説の執筆も続け,

カワセミ先生(後編)

※連載小説「リリィ」は、金城学院大学を舞台にした物語です。 この物語はフィクションであり、実在の人物とは関連がありません。 史料館のすぐ隣のE1棟を五階まで登っていく。エレベーターホールのところでフロアマップを確認する。川澄研究室は、廊下を進んだいちばん奥だ。このフロアに来るのは初めてで何だか少し緊張する。一階と二階には教室があるので,いつも来ているが、三階より上は事務室や研究室があるので、これまで訪れる用事がなかった。目的の部屋の前に立ち、プレートを確認する。部屋番号の隣

カワセミ先生(前編)

※連載小説「リリィ」は、金城学院大学を舞台にした物語です。 この物語はフィクションであり、実在の人物とは関連がありません。 キャンパスの桜の木もすっかり緑の葉っぱに覆われて、すぐに緑がきれいな季節になった。今年の春は肌寒い日も多かったけれど、五月に入ったら上着を着ていると汗ばむ日もあるほどだった。私は、着替えのTシャツとジャージが入ったトートバッグを抱えて、体育館への道を足早に歩いていく。白色がまぶしいE1棟の建物を通り過ぎて、角を右手に曲がる。その先には大学の史料館に続く