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通訳と翻訳は異文化コミュニケーションの橋渡し。

46限目 言語と文化
『日本語をそのまま英訳すると通じない!?』
文学部 英語英米文化学科

2013年1月掲載「車内の金城学院大学」

言語と文化は、切っても切れない関係にある。

留学費用を全額サポートする「通訳翻訳留学プログラム」で留学中の金城生。

 言葉は、それが使われている文化と密接に絡み合っており、ちょうど織物の縦糸と横糸のように、切っても切れない関係にあります。

例えば日本のような「ムラ社会」では、すべてのことを言葉に出さなくても、あうんの呼吸で相手の気持ちや意図を察し合い、コミュニケーションが成立するという文化があります。

日常のさまざまな場面で便利に使われる「どうも」や「よろしく」、「おつかれさま」などは、こうした文化の象徴とも言える言葉ですが、これに該当する英語はなく、通訳・翻訳の際は、その場の状況や内容を正しく理解し、できるだけ自然な訳語をあてていく必要があります。

また、日本語は主語や目的語を省いても文章が成立する言語で、例えば愛の告白でも、「愛してる」と動詞だけで伝えます。

一方、英語圏の人たちは、“I love you.”というように、誰が何をどうしたのかをきちんと伝えなければ、文章として意味が成立しません。

歴史を通じて民族の移動が絶えなかったヨーロッパや、移民大国であるアメリカでは、お互いの気持ちを「言葉」にすることが大切で、物事をはっきり、具体的に言うのがコミュニケーションの原則なのです

遠回しに、角が立たないように言うのが日本語?

留学費用を全額サポートする「通訳翻訳留学プログラム」で留学中の金城生。

 「和」を尊ぶ日本社会では、物事に対する拒絶をはっきり表明することを避けます。例えば何かを頼まれて断る場合も、「それはちょっと難しいです」というように、婉曲的な表現をします。

これをそのまま英語に訳し、“It’s difficult”と言っても、英語圏の人は断られたとは思ってくれません。

“difficult”は単に「難しい」という意味で、そこに「できない」という意味がないため、「難しいが、努力する余地はある」と捉えられてしまうのです。

この場合、通訳者は例えば “I don’t think it‘s possible.”とすると、本来のニュアンスを大切にしながら、可能か不可能かを正しく表現することができます。

外国語でのコミュニケーションは、ただ言葉を伝えるだけではなく、それが相手にどう伝わるかに目を向けることが大切なのです。 

ことわざや慣用句には、
その国の文化や風土、価値観が反映されている。

実際の文学部 英語英米文化学科の授業風景

日本語と英語では、同じ言葉でも、その描き出すイメージは文化によって異なることがあります。

例えば、柑橘系フルーツの「レモン」は、日本語では「さわやかで好ましい」というイメージがありますが、英語では「ポンコツ、欠陥」の意味で使われることがあり、“ My car is a lemon. ”と言われたら、「僕の車は欠陥車なんだ」という意味になります。

さらに、背景となる文化を色濃く反映している例として、ことわざや慣用表現が挙げられます。

「犬猿の仲」は、英語では “Cats and dogs”と言います。
「アメとムチ」は、 “The carrot and the stick”(人参と棒)となりますが、これは馬の調教に例えた表現です。

英語のことわざや慣用表現には馬が頻繁に出てきますが、これは馬が生活に密着した動物であったことの表れです。

また、唯一の弱点を意味する「弁慶の泣き所」は、“Achilles heel”(アキレスのかかと)となり、強い男の代表が、日本では弁慶であるのに対し、西洋ではアキレスなのです。

通訳者・翻訳者は文化的なフィルターを無色透明にする。

「英語スペシャリスト養成プログラム」で行われた「模擬国際会議」の授業風景。
模擬国際会議のチラシ

 私たちが言語情報を処理する時には、必ずその人独自のフィルターを通します。
そのフィルターは決して無色透明ではなく、何らかの色がついています。

さらにその色も、その人が育った環境や属する社会などの個人的経験によって異なります。

例えば「日本海の近くの町」と言われて、冬の荒波を想定して、荒涼たる町の風景を思い描く人もいれば、夏の海水浴場を想像して、楽しく賑わった町をイメージする人もいるでしょう。

このように、個人によって異なるフィルターを通すことで、同じ言語情報が異なった映像を描き出すのです。

話し手や書き手の意図やイメージを正確に訳すためには、通訳者・翻訳者は、自身の思い込みや主観といった個人的なフィルターを、歪みのない、無色透明に近いものにすること。

同時に、どんな内容でも、そのまま柔軟に受け入れることのできる姿勢を持たなければなりません。

そのためには、それぞれの言語が属する社会の習慣やものの考え方といった文化的要素をよく知ることが重要です。

文化への深い理解があって、はじめて言語の真意を伝える通訳・翻訳ができるのです。

文化や考え方の違いを知り、生きた英語を学ぶ。
それが文学部 英語英米文化学科

 


2013年1月掲載 『車内の金城学院大学 53限目』 はこちら


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