スマホでぐるっと撮影するだけで3Dモデルができる?
フィルムからデジタルへ、そしてスマートフォンへ。
一瞬を切り取る報道写真から、日常の風景、家族や友人との思い出など、移ろいゆく瞬間を写し、表現するメディアとして、大きな役割を果たしてきた写真。
その歴史を遡れば、およそ200年前の1822年、フランスのジョゼフ・ニセフォール・ニエプスがアスファルトを感光材料に、6~8時間もかけて1枚の写真を撮影したのが、現存する最古の写真と言われています。
その後、ニエプスと共同で研究を行っていたルイ・ジャック・マンデ・ダゲールが、1839年にダゲレオタイプ(銀板写真)を発表。これにより、露出時間は30分程度に短縮されました。
写真技術はその後も改良が重ねられ、1888年には、アメリカのコダック社がセルロイドを使った透明なロールフィルムを開発。1900年にはブローニーという安価なカメラを発売し、カメラが一般に広まるきっかけとなりました。
そして1935年にはカラーフィルムが、20世紀の半ばには撮影の直後にプリントが見られるインスタント・フィルムが開発されるなど、フィルム写真の技術革新はさらに加速。カメラ本体の小型化・高性能化も進み、写真技術は市民のものとして広がっていきました。
このフィルム全盛の写真技術に大きな変革をもたらしたのが、1980年代後半から1990年代初頭にかけて登場したデジタル写真です。
フィルム不要のデジタル写真技術の進歩はめざましく、市場も急速に拡大。現在ではデジタルが写真の主流となり、今もなお進化し続けています。
また、近年はスマートフォン(以下スマホ)にも高性能カメラが搭載され、誰でも簡単に高画質の写真や動画を撮影し、瞬時に共有することができるようになりました。
写真から3Dモデルを生成して、防災やアーカイブに活用。
写真の主流がフィルムからデジタルに移行したことで、写真撮影のプロセスは大幅に簡素化され、画像の編集・加工・共有も容易になり、写真表現の幅も大きく広がりました。
さまざまな角度から撮影した写真をもとに立体的な3Dモデルを生成する「フォトグラメトリ」の飛躍的進歩も、そのひとつ。
フォトグラメトリ自体は古くからある技術ですが、近年のデジタル技術の進展やAIの導入により高度で効率的な技術へと進化し、多様な分野で活用されています。
たとえば、災害現場を撮影した複数の写真を3 D モデルに変換して、多方面から被害の全容を確認する、数ある写真を使って世界遺産や歴史的建造物を3Dモデルとして保存し、調査・研究や修復時の資料として活用したり、学習教材やバーチャル観光資源として利用するなど、活用の場はさまざまに広がっています。
国内外から寄せられた写真をつないで、首里城の3Dモデルを復元。
「みんなの首里城デジタル復元プロジェクト」は、2019年10月に火災で焼失した首里城(那覇市)を3Dモデルとして復元し、年代ごとの首里城のかつての姿を見ることができるように、研究者や学生が中心となって火災直後に立ち上げたもの。
プロジェクトではネットで首里城の写真や動画を募り、国内外の3,000人から寄せられた8万点以上の写真と動画をAIで分類し、正殿の画像を取り出して、フォトグラメトリで3Dモデルを完成させました。
現在、完成した3Dモデルは公式サイトで公開。実物が再建されるまでの観光資源として活用されています。
AIと写真技術の進化が向かう先は?
ほんの少し前までは、写真から3Dモデルを作成するには、高度な技術と専門的な知識、そして高価なソフトウェアやハードウェアが必要でした。
しかし、今やその光景は大きく変わりつつあります。
フォトグラメトリ、さらにはレーザーを用いて三次元をスキャンできるLiDARスキャンなど、スマホ向けのアプリの開発が進んだことで、誰もが手軽に撮影した画像で3Dモデルを作成し、共有することができるようになりました。
さらに近年は、テキストで完成形のイメージを伝えることで3Dを含めた画像を生成してくれる画像生成AIも登場し、オリジナルの写真なしでも3Dモデルを作ることが可能になってきました。
日々進化を続けるAI。この先にはどんな未来が待っていて、私たちの生活や社会にどんな新しい価値をもたらしてくれるのか、想像してみるのも楽しいですね。
一方で、こうした画像生成AI による画像、イラスト、3Dモデルについては、すでに存在するモノ、人物と類似することもあり、知的財産権、著作権、肖像権などに抵触する可能性もあるので、活用には十分な注意が必要なことも知っておきましょう。
情報社会を多角的に見つめ、新しい未来を描く。
それが 国際情報学部 国際情報学科 メディアスタディーズコース
参考サイト
「みんなの首里城デジタル復元プロジェクト」公式サイト
記憶をつなぐー思い出の写真から復元した首里城
2020年9月掲載 『車内の金城学院大学 138限目』 はこちら
金城学院大学 国際情報学部 国際情報学科 のページはこちら
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