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監督の思いを強く映した、音楽との化学反応も新鮮な青春映画

映画と音楽の関係は深く、流れる音楽によってシーンの印象は大きく異なってきます。

できあがった作品にあわせて作曲したり、既存の曲に発想を得て制作される作品も。企画の段階から映画監督とミュージシャンがタッグを組んで制作に取り組むプロジェクトがあることを知っていますか。

映画と音楽の濃密なコラボレーションで紡ぎ出された作品の魅力を感じてみましょう。


■ 『ふたりの傷跡』

若者に希望あるメッセージを提示する青春映画

©アイオライトレコード

親友のハルを自殺で失い、自己嫌悪を抱きながら生きる高校生の木崎ミナ。転校生のドラム演奏者の黒田ハルカと(ハル)が残した未完成の楽曲を見つけ、ふたりは未完成の楽曲と共に当時の(ハル)の心に触れていく。
楽曲に導かれるように文化祭の出演が決まり、ふたりの思い出の夏が始まろうとしていたが…。

『ふたりの傷跡』は、明日を生きることに絶望している若者に希望あるメッセージを提示したかったという野田英季監督と人気のバンド、クレナズムのコラボレーションで誕生した青春映画。

作品を上映するシネマスコーレの支配人・坪井さんに、映画の魅力や見どころを伺いました。
 
― この作品は〝MOOSIC LAB(ムージック・ラボ)〟という企画から生まれた作品だそうですね。

坪井:MOOSIC LABは、2012年から始まった映画×音楽のプロジェクトで、企画の段階から映画作家とミュージシャンが映画と音楽との化学反応を意識して制作しています。作品の内容はさまざまで、ドキュメンタリーやアニメもあれば、この作品のような劇映画もありますね。
 
― 今年、シネマスコーレさんでもMOOSIC LABが行われたそうですね。

坪井:映画祭自体は毎年12月に行われるのですが、当館でもその後に上映を行っています。今年は5月に〝MOOSIC LAB2023〟を公開し、『ふたりの傷跡』も1回上映しました。この機会にお披露目されるだけの作品もありますが、『ふたりの傷跡』は単独で劇場公開しようという動きがあって、今回の公開に至りました。
  

完璧すぎないのがいい、と感じる作品

©アイオライトレコード

― 作品の内容は、女子高校生が主役の青春映画でしょうか。

坪井:そうですね。親友が亡くなって失望しているミナが主人公ですが、そのうえにコロナ禍が始まって世の中の状況も変わってしまうんですよね。その後、転校生との出会いがあって新たな希望を見出すのですが…というストーリーですね。
 
― 坪井さんは、この作品のどんなところが魅力だと感じていますか。

坪井:この作品は僕も好きな映画だなと感じていて、その理由の一つは音楽で人がつながる物語だということ。もう一つは、完璧すぎない作品ということでしょうか。
 
― 〝完璧すぎない〟という表現について、少し詳しく説明して頂けますか。

坪井:演出やカメラワークなどがわかりづらい、あまりよくないなんて言う人もいるかもしれませんが、僕はそこがいいと思っています。たしかに、監督の思いが強すぎて、先走っていると感じるところはありますが、そのちょっとちぐはぐな印象が主人公の心の揺れと合っているように感じますね。この作品を撮りたい!と思った人が撮るとき、完璧さや意味は必要じゃなくて、その思いをどう映すかが大切なんですよね。
  

登場人物によく合っているキャストの初々しさ

©アイオライトレコード

― キャストもクレナズムのメンバーやミュージシャンなど、多彩ですね。

坪井:ハルはクレナズムのヴォーカル&ギターの萌映さん、ハルカはセッションドラマーの佐久間遼さんが演じています。主演の八木みなみさんもこの作品が初主演で、彼女が監督の思いを受け止めることで、初々しい印象になっています。3人には映画をずっとやってきた人にはないチャレンジする感じがあり、ぎこちなさを抱えた登場人物とよく合っていますね。
 
― 映画のためにクレナズムが書き下ろした曲『ふたりの傷跡』が劇中で演奏されるんですね。

坪井:ただの楽曲提供とは違い、曲の歌詞が作品と一体になっていて、キャストのお芝居も楽曲も作品のメインになっています。楽曲を作り上げ、ミュージシャンも加わってお芝居をし、それも含めて作品になる。それがMOOSIC LABの面白さですね。クレナズムの曲『ふたりの傷跡』のPVを野田監督が撮っていて、それも今回同時に上映されますよ。
 
主演の八木さんは愛知県知多市の出身ですので、シネマスコーレでの上映はご当地になりますね。野田監督も力が入っていて、上映期間中は毎日、劇場に立ち会おうかと話していました。初日の1月27日はお二人の舞台挨拶を予定していますので、ぜひ劇場に足を運んで頂きたいです。
  

『ふたりの傷跡』はシネマスコーレにて、1月27日から上映予定。

『ふたりの傷跡』の予告編はこちら

 

シネマスコーレ劇場情報

シネマスコーレ
映画監督の若松孝二氏が1983年に立ち上げた、名古屋駅西口にあるミニシアター。2023年に開館40周年を迎えた。アジア映画、日本映画、インディーズ作品などを中心とした多彩なプログラムに加えて、作品を盛り上げるイベントにも力を入れている。

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