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コンビニも映画館もない離島に留学!?

53限目 地域の活性化とIターン
『島の高校をよみがえらせた「島留学」!?』
国際情報学部 国際情報学科 グローバルスタディーコース

2013年8月掲載「車内の金城学院大学」

地域にひとつだけの高校が
廃校の危機に。

島根半島北60km先に、3つの小さな島(海士町・西ノ島町・知夫村)からなる隠岐島前おきどうぜんと呼ばれる地域があります。

この島前地域にある唯一の高校、島根県立隠岐島前高等学校(以下、島前高校)が、人口減少や少子高齢化で生徒数が年々減少。1997年には77人いた入学者数も、2008年には半分以下の28人に減少し、統廃合の危機に直面しました。

地域から高校がなくなると、15歳から18歳の子どもが島からいなくなるだけでなく、働き盛りの親たちが家族ごと島を出てしまう恐れもあり、人口減少に歯止めがかからなくなってしまいます。

島前高校の存続は、島の存続に直結する。
危機感をつのらせた島前3町村が協議し、見出した活路が、高校の魅力化。高校と連携しながら「島前高校魅力化プロジェクト」を立ち上げ(2008年)、日本各地から意欲ある入学者を募る「島留学」制度や、手厚い指導で学力向上や進路実現を支援する公営塾を設立するなど、地域総がかりで魅力ある学校づくりに取り組みました。

島留学で活気を取り戻した
島前高校。

島前高校の島留学は、島外の高校生が雄大な自然と古くからの文化・伝統が残る島前地区で寮生活をしながら高校へ通うプロジェクト。

地元地域を教材に、地域の魅力や課題を探究していく授業や、島というローカルから世界を展望し、自分自身の夢を言語化していくプログラムなど、地域資源を活かした独自のカリキュラムを編成。

さらに島外からの留学生には、地域住民が「島親」になり、留学生と地域をつなぐ役割を果たすなど、留学生は、人と人、人と自然のつながりの中で、充実した3年間を送っています。

一方、島内の生徒にとっても島留学生との交流は多様な価値観や考え方に触れ、視野を広げると同時に、島の魅力を再発見し、「いつか島に戻ってきたい」という思いを抱くきっかけにもなっています。

全国に先駆けて行ったこの取り組みは注目を集め、現在(2023年5月現在)の全生徒数は164名(島内生56名・島外生108名)と、離島・中山間地域では異例となる生徒数の倍増を実現。全国各地から、さらには海外からも生徒が集まる高校へと変貌を遂げ、地域にも活気をもたらしています。
 

島で暮らし、
島で働く「大人の島留学」。

隠岐島前は以前からIターン者を柔軟に受け入れ、Uターンを含む地域住民と協力しあって地域産業の活性化に取り組んできました。高校の魅力化も、かつてIターンした人と島の人々とが協力して考えたアイデアでした。

高校魅力化の取り組みは、今では島前地域全体に広がり、保育園から小・中学校までを含めたプロジェクトになっているほか、地域の魅力化も視野に入れた事業も始まっています。

そのひとつが、島で暮らし、島で働く大人の島留学

大学生〜20代の若者に、1年間、島での仕事や暮らしを体験してもらう就労型お試し移住制度で、役場でのサポート業務や岩ガキの養殖業、ホテルスタッフ、農業など、働き方もさまざま。

大人の島留学生には月額176,000円の報酬が支給されるほか、住居は町が管理するシェアハウスを用意。

離島という環境で挑戦してみたいという若者を官民一体となって支援することで人材が島に還流し続け、それによって島の魅力あるひと・活力あるしごとの創出につなげることを目指しています。

2020年にスタートしたこの制度は、すでに200名近い若者が活用。都会から離島へと人が動く、新しい流れが生まれています。
  

持続可能な地域をつくり、未来につなぐ。

本土からフェリーで約3時間。コンビニも、ショッピングモールも、映画館もない離島というハンディキャップを独自の魅力と捉え、逆転の発想でさまざまなプロジェクトを興し、移住者や島のファンを増やしてきた島前地域。
  
その一方で、人手不足・担い手不足といった課題は依然として大きな課題。地方創生の先頭を走るからこそ、見えてくる次の課題もあります。
  
島前を若者で溢れかえるような元気な地域にするためには、教育の魅力化、地域の魅力化をさらに推進するとともに、新たな取り組みにも挑んでいく必要があります。
 
島前地域の挑戦はまだまだ続きます。
 
地域を見つめ、人々の豊かな暮らしを考える。
それが国際情報学部 国際情報学科 グローバルスタディーズコース。

 

<参考文献>

■島根県立隠岐島前高等学校HP

 ■隠岐島前教育魅力化プロジェクト

 ■大人の島留学

 


2013年8月掲載 『車内の金城学院大学 53限目』 はこちら


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