ショートストーリーで紡ぐ、国を超えて共感が広がる女性たちの声
世界のさまざまな国や地域で、悩んだり迷ったりしながらも前向きに生きる女性たち。その姿を見つめると、置かれている環境の違いに驚きながらも、同じような悩みを抱えていると気づくことがあります。
物語や映画の登場人物であっても、リアルに描かれていればいるほど、その姿に共感して勇気をもらえたり刺激を受けて自分を見つめ直したりすることが多くなりそうです。
■『私たちの声』
巧みな構成も楽しめるオムニバス形式
女性のエンパワーメントやジェンダーの多様性が叫ばれ、寛容な心が求められる現代。
「映画、芸術、メディアを通して女性を勇気づける」をスローガンとして掲げる非営利映画製作会社<We Do It Together(WDIT)>が企画した作品が誕生しました。
世界の映画界で活躍する女性監督と女優が集結して、女性を主人公とした7つのショートストーリーを紡ぎ出したのが、『私たちの声』です。
作品を上映する、ミッドランドシネマ 名古屋空港の支配人、森さんに見どころを伺いました。
― 上映時間が112分で7つの物語ですので、それぞれは短い作品ですね。
森:15分ずつくらいのショートストーリーですので、物語の舞台もワンシチュエーションだったり、限られた時間を描いたりというものがほとんどです。
7本の並び順にもメリハリがあって、よく工夫されているなと感じます。アメリカ、イタリア、インド、日本といろいろな国が舞台になっているので、そういう意味でも見飽きないですね。
変化に富んだテイストの異なる作品が集まる
― 7つのストーリーに共通するのは女性が主人公という点ですが、内容はさまざまですか?
森:そうですね。実話を基にしていたり実在のモデルがいたり、という少しシリアスなストーリーもありますし、ハートウォーミングなドラマもあるので変化に富んでいます。主人公と関わる人物も女性が中心ですね。
― 各国を舞台にしていますが、国ごとの個性も伝わってきますか。
森:一番はっきりしているのは、インドかなと思いました。街並みなども他の国とはかなり違いますしね。日本のストーリーは、主演が杏で、監督は『そこのみにて光輝く』の呉美保です。子育てと仕事に追われるシングルマザーのお話で、設定としてはそれほど珍しく感じられませんが、他の作品と比べると少し違った印象なので、このオムニバスのなかでは新鮮と言えるかもしれません。
― 最後の1本はアニメーションですね。
森:擬人化されたモノが解き放たれるようなストーリーで、作品全体に通じるメッセージを象徴する内容になっているのではないでしょうか。わかりやすく直接的に描いたものではなくて、あくまでイメージ的な伝え方の作品ですね。
女性の声に耳を傾けてともに考える
― 7つのストーリーの中で、個人的に印象に残ったものはありますか?
森:それぞれに面白さがありますが、あえて挙げるならインドを舞台にした「シェアライド」というストーリーでしょうか。着飾った華やかな主人公と、彼女が出会うトランスジェンダーの人物との対比も印象的でした。
自分の中にもう一人の人格を持つ女性が主人公の「ペプシとキム」では、2人の人物を演じ分けた女優さんの演技も光っていましたね。
― それぞれに個性があり、興味が湧きそうです。
森:そうですね。自立した女性ばかりですが、仕事や家庭など環境は一人ひとり異なりますから、いろいろな視点で見ることができますし、登場人物の誰かに共感できる点が見つかるのでは、と思います。
― 女性を勇気づけ、エールを送るという作品になっていますか。
森:全体としてそういう方向性で作られていて、オープニングでは企画趣旨の説明も入ります。とてもストレートでわかりやすいテーマのストーリーもありますが、幅広く多くの人に伝えるという意味では大切なことかもしれません。こういった女性をサポートする企画が必要とされる現状を考えると、映画制作の現場は女性が中心となって活躍するのは難しい状態なのかなと思います。映画業界に限らず、女性の自由や平等に関わる問題はまだまだ知られていないことも多いですよね。女性だけでなく男性も含めて社会全体であらためて関心を持ち、理解を深めていくことが必要だと気づかされます。
『私たちの声』の予告編はこちら
ミッドランドスクエアシネマ 劇場情報
名古屋駅前に14スクリーン、全席ソフトレザー張りの2,205席を備える都市型シネマコンプレックス。メジャー作品はもちろん、アートレーベルやアニメレーベルも設けて、コアなファン向けの作品もカバーする。
ミッドランドシネマ 名古屋空港 劇場情報
県営名古屋空港に隣接する、エアポートウォーク名古屋内のシネマコンプレックス。ソフトレザーシートを配した12スクリーンを備え、バラエティに富んだ作品ラインナップとスタッフ手作りのPOPも魅力。
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