女性の働き方はMからLに変化!?
M字カーブは解消した一方で、新たな課題が浮上。
M字カーブとは、日本の女性の労働力率を年齢層別にグラフにすると、出産や育児を機にいったん離職し、育児が落ち着いた頃に再び働き出す女性が多く、アルファベットのMのような曲線を描くことから名づけられました。
近年は、M字カーブの底にあたる30代の労働力率が大幅に上昇したことからグラフの曲線はM字から逆U字(台形)に変化。日本の女性労働力率は、北欧のそれにも匹敵するようになりました。
長い間日本の女性労働の特徴とされてきたM字型就労は、今や過去のものになったのです。
その背景にあるのは、ひとつには結婚しない女性が増えて、就業率が上がっていること。もうひとつは、育児休業や時短勤務などの支援制度を活用して、出産後も働き続ける女性が多くなってきたこと。
第1子出産後の就業継続率は、1990~2009年までに出産した女性では約4割だったのに対し、2015〜2019年に出産した女性では約7割にまで達しています。
ただ、これで女性の労働環境がすべて解決したわけではありません。それを端的に示しているのが、L字カーブです。
女性の正規雇用比率は20代後半をピークに下がり続ける。
上記のグラフでもわかるように、女性の正規雇用比率は20 代後半にピークを迎え、その後、一貫して下がり続けます。これをグラフにするとアルファベットのLのような形になることから、L字カーブと呼ばれます。
このL字カーブから読み取れることは、出産・育児などのライフイベントの際に、「仕事か家庭か」の二者択一を迫られるのは多くが女性であること。そして、女性がいったん離職すると、正社員での再就職が極端に難しいこと。
男女別の非正規雇用比率を見ても、2023年は男性が22.5%であるのに対して、女性のそれは53.2%。女性の非正規雇用は男性よりも圧倒的に高く、それが女性のキャリア形成に影響を及ぼし、男女間の賃金格差をもたらしています。
賃金や雇用機会の不平等は世界的に見ても顕著で、日本のジェンダーギャップ指数の低さ(世界146国中118位/2024年)にも大きな影響を与えています。
世界がジェンダー平等に向かうなか、日本ではなぜL字カーブの解消が進まないのでしょうか?
女性の継続就業をはばむ「専業母」規範。
L字カーブの解消をはばむ要因はさまざまにありますが、そのひとつが、日本にはまだ、育児期は子育てに専念する方が望ましいという「専業母」規範が強く、「幸せな家族には専業母が必要」という神話が根深く残っていること。
この「専業母」規範は年配者だけでなく、女性にも男性にも、若い人たちにも根強く影響を与えており、結果、出産・育児を理由に仕事を辞めたり、仕事を継続しても、育休後に育児支援制度を利用することなどによって、仕事のやりがいやキャリア形成から阻害される、いわゆるマミートラックに陥ったりします。
しかし、専業母でなくても家族が幸福であることは、夫婦共働きがあたりまえで、父親も積極的に子育てに関わる北欧諸国が「世界幸福度ランキング」の上位を占めていることからもわかります。(2024年の世界の幸福度ランキングで日本は51位)
誰もが自分らしい働き方、生き方ができる社会へ。
女性も男性も、すべての人が仕事と生活を両立させながら、安心して働き続けるためには、まずは「幸せな家族には専業母が必要」という無意識の偏見に気づき、見直すこと。
そして、社会や時代の変化にアンテナを立てながら、自分はどんな生き方、働き方をしたいのか、もう一度考えてみること。
あわせて、休暇制度があたりまえに利用できる、時短勤務やリモートワーク、フレックスタイムといった多様で柔軟な働き方が選択できるなど、男女ともにワーク・ライフ・バランスを実現できるような環境整備を加速させることも不可欠です。
それが、誰もが性別の役割に縛られず、いきいきと働きながら、自分らしい生き方ができる社会、大切な人と共に生きることのできる生活を創ることにつながっていきます。
社会を様々な角度から見つめ、豊かな暮らしを支える
それが生活環境学部生活マネジメント学科
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参考文献
「男女共同参画の現状と 女性版骨太の方針2023について」| 内閣府男女共同参画局
2016年5月掲載 『車内の金城学院大学 86限目』 はこちら
金城学院大学 生活環境学部 生活マネジメント学科のページはこちら
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