人には「自分のことは自分で決めたい」という本能がある!?
いまやろうと思ってたのに・・・
「そろそろ勉強しなきゃ。このマンガを読み終わったらやろう」。そう思っている矢先、親から「マンガばかり読んでないで、早く勉強しなさい!」と言われ、一気にやる気がなくなってしまった。
皆さんも、そんな経験があるのではないでしょうか。
心理学の世界では、このような心の動きを「心理的リアクタンス」と呼びます。
人間は生まれながらにして、自分の選択や行動を「自分で決めたい」という欲求を持っています。
そのため、他人に「~しなさい」と強制されたり、「~してはダメ」と制限されると、自分の行動や選択の自由が奪われたように感じ、失われた自由を取り戻したいという反発心が生じて、反対の行動を取ることがあります。
これが心理的リアクタンス。親から勉強しろと言われと逆にやる気を失ってしまうのも、この心理的リアクタンスの表れなのです。
障害があればあるほど、愛が深まる?
みなさんもよく知っているおとぎ話や物語にも、この心理的リアクタンスの現象がしばしば描かれています。
たとえば、『浦島太郎』では、「絶対に開けてはいけない」と言われていた玉手箱を開けてしまい、太郎はおじいさんになってしまいます。
『鶴の恩返し』でも、老夫婦が「決してのぞかないでください」と言われていた部屋を我慢できずにのぞいてしまい、娘は去っていきます。
また、シェイクスピアの名作『ロミオとジュリエット』は、敵対する両家に生まれた2人が大きな障害の中で愛情をより深めていくという物語ですが、「恋愛は周りから反対されればされるほど、激しく燃え上がる」という心理的リアクタンスは、「ロミオとジュリエット効果」とも呼ばれています。
人はなぜ「限定」という言葉に弱いの?
「やれ!」と言われると、やりたくなくなる。「やるな!」と言われると、やりたくなる・・・。
この心理的リアクタンスはマーケティングの場でもよく活用され、集客や売り上げのアップにつなげています。
たとえば、「1人限定2つまで」とか「数量限定の特別モデル」、「24時間限りの割引セール」、「地域限定品」などといった表示を見ると、消費者は買う、買わないという選択の自由を制限されたように感じ、「今買わないと、次の機会はないかもしれない」という心理的リアクタンスが生じて、ついつい買いたくなってしまいます。
そこには、手に入りにくいものほど価値が高いと感じる「希少性の原理」という心理も働いています。
こうした心理的リアクタンスを巧みに活用した手法は、消費者の購買意欲を促進し、商品やサービスの価値を高めるのに有効な手段ですが、そこで大事なことは、誠実さと透明性の確保です。
「期間限定」と言っておきながら、期間が過ぎても商品を売り続けたり、「数量限定」とうたいながら、実は在庫が存分にあるとしたら、企業の信頼性を損なうことになります。
一方、消費者側も、企業から提供される情報を客観的に評価し、その商品が自分にとって本当に必要なものであるのかどうかを冷静に見極めることが必要です。
心の働きを知り、行動の意味を考える。
それが人間科学部 多元心理学科
2010年9月掲載 『車内の金城学院大学 18限目』 はこちら
金城学院大学 人間科学部 多元心理学科 のページはこちら
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