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ヒトの心身を司る脳には「門番」がいる!?

93限目 脳毛細血管内皮細胞
『脳には門番がいる?』
薬学部 薬学科

2016年12月掲載「車内の金城学院大学」

脳はさまざまな仕組みで守られている。

脳は、生命維持の中枢器官として、思考や判断などの知的活動、感覚機能、運動など、人間の体全体をコントロールする司令塔です。

非常に重要な器官でありながらも、柔らかく繊細なため、さまざまな仕組みで守られています。

脳が頭蓋骨という厚い骨の層で囲まれているのも、そのひとつ。また、頭蓋骨と脳の間には脳脊髄液という液体が存在し、外部からの衝撃を吸収するクッションのような役割を果たしています。

「血液脳関門」(Blood-Brain Barrier:BBB)も脳を保護する重要な仕組みのひとつで、脳にとって不要な物質や有害な毒素の侵入をブロックすることで、脳の安全を守っています。

では、血液脳関門はどこにあり、どんな働きをしているのでしょうか。
 

血液と脳との間に立ちはだかる血液脳関門。

私たちの体内では毛細血管によってさまざまな物質が運ばれ、毛細血管を通過した物質が組織液を介して細胞内に取り込まれています。

それが可能なのは、体内の毛細血管の壁には小さなすき間がたくさんあり、そのすき間を通って、血管と組織の物質が自由に行き来できるようになっているからです。

しかし脳内の毛細血管に限っては、「脳毛細血管内皮細胞」という特殊な細胞が互いに強く結合し、毛細血管の内壁を密に覆っているため、すき間がありません。

この脳毛細血管内皮細胞の構造そのものが血液脳関門で、「脳内の神経組織に異物や有害物質が侵入するのを防ぐ」一方で、「脳の活動を維持するために必要な栄養素を血液中から選択的に取り込む」、「脳にとって不要な物質を血管に排出する」という役割を担っています。

言ってみれば、血液脳関門は、脳と血管の物質の行き来を管理する “門番”のような役割を果たしているのです。

脳の中に薬を送り届ける薬の開発をめざして。

血液脳関門は、脳の機能を健全に保つ上で重要な組織ですが、その一方で、脳に原因がある病気を治療する際は、この組織が大きなバリアとなり、薬が脳内に入ることを制限してしまいます。

通常、点滴や錠剤などによって血液中に溶け込んだ薬は、血液の流れに乗って移動し、血管の壁にある小さなすき間から血管の外へとしみ出して、その薬を必要とする臓器へ届けられます。

対して、脳血管の壁にはすき間がないため、もし、脳の病気に有効な治療薬が見つかったとしても、それが血液脳関門を通過できず、脳の中に薬を送り届けることができません。

脳の病気の治療薬を開発するには、このバリアを通過するという難題を克服する必要があるのです。

ただ、血液脳関門の機能やメカニズムについてはまだ解明されていないことも多く、薬を安全、かつ効果的に脳に送り届けるためには、依然として多くの課題が残されているのが現状です。

アルツハイマー病やパーキンソン病など、現在治療が困難と言われている脳の病気を治す薬は、世界中の人々が必要としています。
血液脳関門というバリアを突破し、脳内に薬を送り届けることができる画期的な方法が見つかれば、それは人類にとって大きな朗報となるに違いありません。

身体のメカニズムを学び 健康を支える。
それが 薬学部 薬学科

 


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