自分の生き方に目覚める女性が主人公! 時代を超えた普遍的な物語『山女』
岩手県遠野に伝わる逸話や伝承を記録した柳田國男の『遠野物語』。
日本の民俗学の発展に大きな役割を果たし、後の文学者たちにも影響を与えた説話集です。座敷童や河童など昔ばなしのように思える物語だけでなく、日本人が抱いてきた神や自然への畏怖や死生観など現代に通じるテーマも。
時代を超えて読み継がれる名著から、新たな物語が誕生しました。
■ 『山女』
過酷な運命を乗り越えてたくましく生きる女性
「遠野物語」に着想を得た『山女』の舞台は、大飢饉に襲われた18世紀末の東北の寒村。
先代の罪を負ってひっそりと暮らす家の娘、凛が主人公です。ある時、事件を起こした父の罪をかぶって村を離れることになった凛。村人が恐れを抱く山に入ったことから、彼女の運命が動き出します。
作品を上映するミッドランドシネマ 名古屋空港の支配人、森さんに見どころを伺いました。
― 主人公の凜はどんな環境で暮らす女性ですか?
森:冷害に見舞われた村は食糧難で、祈禱師が神頼みをしたり、人減らしが起きたりと厳しい状況です。その中でも、さらに凜の一家は先祖が起こした罪によって田畑を取り上げられたり仕事を限定されるなど、過酷な運命に耐えて暮らしています。
― 閉鎖的な村の慣習や差別に縛られている女性なんですね。
森:そうですね、そんな彼女が自分の生き方を見つける物語です。かつての東北が舞台ですが、いろいろな制約に縛られた女性がそこから脱却して自分の人生を見出していくという意味では、普遍的な内容だと感じました。
言葉を介さない山男との不思議な関係
― 村を離れて山の奥深くへと入った彼女が出会うのは-。
森:伝説の存在として恐れられている山男です。森山未來が演じていますが、一切セリフなし、身体表現のみで山男を体現していて、さすがだなぁという印象です。
― 個性的な役柄を演じることが多い森山未來ですが、セリフなしでの演技は難しそうですね。
森:セリフも詳しい説明もありませんが、神秘的でスピリチュアルなものを感じるロケーションや世界観のせいもあってか、山男と凜の心の交流も自然に感じられましたね。
― 二人の関係には何か、他の人と違うものがあったのでしょうか?
森:村での凜はさまざまなしがらみにとらわれていますが、山男との間ではそういった背景は必要ありません。人間として自然な姿で向き合えたことが心の解放につながったのかもしれませんね。恋愛や損得などではなく、相手をどこか神聖な存在、守るべきものとお互いが感じているようにも見えました。
意志の強さを感じさせる主演女優のまなざし
― 主演の山田杏奈は、森さんも以前から注目されていたそうですね。彼女の魅力はどんなところにありますか?
森:彼女は訴えかけるような目がとてもいいんですよね。今回のように素朴な出で立ちでセリフも少なく、表情で伝える演技が多い役柄では、目の印象が一層際立つように感じました。
これまで公開された出演作では、考えるより先に動くような体のアクションも印象的でした。この作品では川辺で髪を梳く場面がありますが、彼女の存在感と世界観がマッチして、神々しいような感じさえありました。
― 脇を固める俳優にも演技派がそろっていますね。
森:凜の父親には、最近ではダメ親父役が増えてきた永瀬正敏。村人には、山中崇やでんでんなどどこかで見たことがあるバイプレーヤーや、『ドライブ・マイ・カー』で一気に注目を浴びた三浦透子など非常に濃い顔ぶれが集まっています。
― 作品の時代設定にも関わらず、40代と比較的若い監督なのは意外でした。
森:民族的なテーマに関心がある監督のようで、前作もアイヌが題材でした。時代や伝承をふまえながらも押しつけがましさはなく、一人の女性の物語としてすんなり受け入れられるのは、監督のバランス感覚の良さかもしれません。
『山女』の予告編はこちら
ミッドランドシネマ 名古屋空港 劇場情報
県営名古屋空港に隣接する、エアポートウォーク名古屋内のシネマコンプレックス。ソフトレザーシートを配した12スクリーンを備え、バラエティに富んだ作品ラインナップとスタッフ手作りのPOPも魅力。
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