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日常と違う場所へ運んでくれる「旅の本」でアフリカやアジア、空想の国へ

数年ぶりに渡航や行動の制限が緩和され、自由に旅を楽しめる雰囲気が戻ってきました。旅行に出かけづらい時期が長く続いたことで、旅とは何か?旅が私たちにもたらすものは?といった考えを深めるきっかけにもなったかもしれません。

そこで今回は、ページをめくることで旅をするような体験ができる本を、三重県伊勢市にある書店「散策舎」代表の加藤優さんに選んで頂きました。

■ 『ちきゅうパスポート』

パスポートのような形をしたユニークな絵本

戦争に巻き込まれて苦しむ子どもたちがいたり、パンデミックが収束せず続いていたりと閉塞感のある日常で、子どもたちに希望を伝えたいと企画されたプロジェクト。

6か国24人の絵本作家がそれぞれに、子どもたちへのメッセージとして想像の国を描いています。


― こちらは今年の春に出版されたばかりのユニークな絵本ですね。

加藤:日本の絵本作家である、ささめやゆきさんや田島征三さんなどが発起人になっていますが、一つのプロジェクトのもとにいろんな国の作家さんが集まっていることに興味を持ちました。装丁もすごくユニークで、実際のパスポートに寄せています。旅に欠かせない大切なツールを絵本で表現しているところも面白いなと感じました。

― 収益の一部はウクライナの子どもたちの支援に寄付されるそうですね。

加藤:そうですね、そういう点でも有意義な企画だと思います。こういったプロジェクトの実現や旅すること自体も、平和でなければできませんよね。子どもも大人もこの本にふれるとき、旅について考えさせられることがあるのではと思います。
 

国境を越えてつながる想像の国

― 想像の国は本当に個性豊かでバラエティーに富んでいますね。

加藤:まったく違うテイストの絵が並んでいて、しかもそれぞれが手を取り合うようにジャバラ型につながっています。動物が多いように感じますが、まったく違った発想の絵(国)もあって、その豊かさに驚きます。

― 絵の上には〝○○の国〟という国名だけが記されています。

加藤:作家名は別にまとめて書かれているので、想像の国の絵をどなたが描いたのか想像する、というのも楽しそうです。こんな国を想像する作家さんはどんな絵本を描いているんだろうと興味が湧いたら、その方の絵本を探してみるのもいいかもしれませんよ。
 

書籍情報:『ちきゅうパスポート』

『ちきゅうパスポート』
絵:24人の絵本作家 
発行:BL出版

■ 『旅立つには最高の日』

辺境の地での出来事を疑似体験できる

1990年代にエジプトに暮らし世界各地を旅してきた著者が、アフリカ・アジアへ旅したエピソードを中心に、出会いと別れをテーマに選んだ15編のエッセイを収録。著者自身が撮影した写真9点も掲載されています。

― 「散策舎」さんには旅をテーマにした書籍が充実しています。その中でこの本を選ばれた理由は何でしょうか。

加藤:著者の田中さんが現地での体験を自分の中で咀嚼して、自分の目線で書いているということです。辺境の地を旅して苦労したエピソードが多いのですが、日本と違ってただ面白かったという書き方ではないので、旅の体験をそのまま描いた紀行エッセイとは違うと感じています。

― 一般的な旅行ではなかなか行けない場所や、体験できそうにない出来事がたくさん出てきます。

加藤:そうですね。スーダンの列車旅のエッセイでは、列車がいつ目的地に着くかわからないといった状況や、客室が混雑して屋根の上で過ごすなんてエピソードも出てきて、日本との違いに驚かされます。砂漠の中にある修道院を訪ねたりもしていて、世界にはこんな場所があるんだ!と思いましたね。


― 辺境の地に実際に行くことは難しそうですが、エッセイを通して疑似体験することができますね。

加藤:田中さんのエッセイは、〝疑似体験力〟がすごく高いと思います。出会ったことのない世界のことばかりが書かれていますが、その場の匂いや空気まで伝わってくるような感じがします。写真もカバー以外はモノクロで点数も必要最低限なので、想像力を働かせながら読むことを楽しめますね。
 

読書も日常と違う世界を結ぶ旅といえる

― 旅の記録だけでなく、著者の生い立ちや旅先で出会った人の話も収められていますね。

加藤:本のあとがきにもありますが、旅には出会いと別れがあることを意識して作品を選ばれたようで、それが共通のテーマになっていますね。

― この2冊を通して、あらためて「旅」とはどんなものだと感じられましたか?

加藤:現実だろうと空想だろうと、いろんなところに旅はあると感じています。どこかに行って戻ってくる現実の旅と同じで、読書にも読み始めと読み終わりがある。自分にとっての日常とまったく違う世界を一瞬結ぶという意味では、どちらも同じ旅なのかなと思いますね。

書籍情報:『旅立つには最高の日』

『旅立つには最高の日』
著:田中 真知
発行:三省堂

三重県伊勢市の書店「散策舎」の情報はこちら

散策舎
伊勢神宮 外宮前のレトロなビルにある、小さな新刊書店。深い蒼緑で彩られた空間に「心・食・旅」のテーマに沿って選んだ3000冊の本が揃う。散策するように、日々を確かに歩むための心と身体の糧となる本との出会いを楽しむことができる。

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