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家庭での洗濯が海の汚染につながっている!?


実は、マイクロプラスチックの35%は洗濯物から出ている。 

出典:国際自然保護連合(IUCN)

世界では、毎年800万トンのプラスチックごみが海に流れ込み、このペースで進めば、「2050年には魚よりプラスチックごみの量が多い海になる」と言われています。
 
そのなかでも特に生態系への悪影響が懸念されているのが、「マイクロプラスチック」の急速な増加。
 
マイクロプラスチックとは5mm以下の微細なプラスチック粒子で、洗顔料や歯磨き粉のスクラブのようにもともと小さなサイズで作られた「一次マイクロプラスチック」と、ペットボトルやレジ袋などのプラスチック製品が紫外線や水の力で劣化・破砕はさいして細かい破片となった「二次マイクロプラスチック」の2種類があります。
 
この一次マイクロプラスチックの発生源として、近年問題視されているのが、合成繊維の衣類を洗濯する際に抜け落ち、洗濯水と一緒に海に流されてしまうファイバーフラグメント(長さ5mm以下の繊維くず)。
 
国際自然保護連盟(IUCN)の報告によれば、世界の海に放出された一次マイクロプラスチックの35%をファイバーフラグメントが占めており、マイクロプラスチック問題の大きな原因のひとつになっているのです。
  

ファイバーフラグメントがヒトと生態系に与える影響は?

合成繊維の布地から発生するファイバーフラグメントはどんなに小さくても自然分解されず、一度海に流れ出てしまうと半永久的に漂い続け、蓄積されていきます。
 
このファイバーフラグメントを魚がエサと間違えて食べてしまうと、魚の成長や生殖機能に影響を及ぼし、やがては海の生態系のバランスを崩してしまう可能性があると言われています。
 
また、海洋中の残留性有機汚染物質や海底の泥にたまった汚染物質がマイクロプラスチックに吸着することが指摘されています。
 
それが海洋生物の体内に蓄積され、食物連鎖に入り込むと、最終的には人間の健康も損なってしまう恐れがあります。
 
海を汚染し、生態系に悪影響を及ぼすファイバーフラグメントの流出を少しでも防ぐために、私たちにできることは何でしょうか。
  

ファイバーフラグメントを減らすために、私たちができること。

ポリエステルのフリースやアクリルのニット、ナイロンの下着など、合成繊維で作られた衣類は私たちの衣生活の7割以上を占め、「着たら洗う」が習慣となっています。
 
クローゼットから合成繊維の衣類を排除することは難しいですが、洗濯の回数を見直すことはできます。
 
たとえば、

  • 「着たら洗う」を「汚れたら洗う」習慣にシフトする。

  • 下着以外の衣類は、洗濯回数を2回から1回に減らしてみる。

  • 衣類を目の細かいネットに入れて洗う。

  • 小さな下着やニットは、手でやさしく洗う。

 それだけで、洗濯機からのファイバーフラグメント放出量を大幅に減らすことができます。
 
繊維の抜ける量が減る、ということは服が長持ちすることでもあり、電気や水の節約にもつながります。
  

洗濯条件を検討し、ファイバーフラグメントの流出削減につなげたい。

ラウンダーメーターで洗浄中の様子(左)
洗浄中の液を吸引ろ過する様子(右)

本学環境デザイン学科アパレル・ファッションコースの学生(4年生)は、現在、卒業研究として、私たちが毎日使うタオルを対象に、洗浄力は保ちながら、ファイバーフラグメントが生じにくい洗濯条件を検討しています。
 
このテーマに取り組み始めたきっかけは、

「綿の繊維くずは、マイクロプラスチックとは見なさないとの見解もあるが、海洋中では生分解されにくい。海洋汚染において、綿の繊維くずも看過できないのでは?」

と、問いをもったこと。
 
折しも、2023年2月にISO4484-1「繊維および繊維製品‐繊維源からのマイクロプラスチック 第1部:洗濯中の布地からの材料損失の測定」が制定されたことから、使用機器はこれに準拠し、洗浄条件はアレンジして実験に取り組んでいます。
 
例えば、洗浄時間、浴比(水量)、洗浄温度などをさまざまに変え、綿100%組成の甘撚り糸のタオルと一緒に湿式人工汚染布を洗浄することで、タオルからのファイバーフラグメントの脱落を抑制しつつ、十分な洗浄力も得られる洗浄条件を検討しています。
 

ろ紙に残ったファイバーフラグメント
洗剤なし(左)洗剤あり(右)

また、洗剤に配合される酵素や柔軟剤使用の有無による影響も調べています。
 
ファイバーフラグメントの流出を最小限に抑える洗濯条件を明らかにし、人々が実践すれば、SDGsの「海の豊かさを守ろう」、「つくる責任つかう責任」の達成に向け、誰もが貢献できるのではと考えています。
  
 
デザインを広く学び、ものづくりの可能性を追求する
それが生活環境学部 環境デザイン学科
 


 参考文献

WWFジャパンWEBサイト「海洋プラスチック問題について」

 IUCN(2017), Primary Microplastics in the Oceans
https://portals.iucn.org/library/sites/library/files/documents/2017-002-En.pdf

 BOKEN TOPIC
https://www.boken.or.jp/wp-content/uploads/2023/03/topic_350.pdf

 KAKEN information
https://messe.nikkei.co.jp/files/EP7273/9-202211011424530678.pdf 
  


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