新たな決意を胸に、私たち、看護の道を歩んでいきます。〜ナーシング・セレモニーを終えて〜
2024年1月20日(土)、アニー・ランドルフ記念講堂にて「2023年度ナーシング・セレモニー」が開催され、看護学部第1期生105名が、看護の道へと進む決意を新たにしました。
セレモニーでは、学生実行委員11名が、企画から当日の運営までを担いました。そこで、学生実行委員を代表して、永田絢女さん、伊東早織さん、中西晶子さんの3人に、セレモニーに込めた想い、医療現場での実習の様子、今後の抱負を聞きました。
「看護」という目標に向かって、みんなの心をひとつにできたナーシング・セレモニー
― ナーシング・セレモニーの企画・運営に、学生が関わったそうですね。
永田:はい。⾃ら⼿をあげて集まった学⽣実⾏委員11名が、企画から当⽇の運営までのすべてに関わりました。⾦城の看護学部としては初のセレモニーで、その記念すべき第1回のセレモニーに携われることに魅⼒を感じたし、⾃分たちの考えも反映できるというので、やってみたい!と思いました。昨年の4⽉に委員会を⽴ち上げ、⽉1回の会議。夏休み明けからは毎週1回集まって準備を進めました。
― そもそもナーシング・セレモニーとはどんなセレモニーなのでしょう。
永田:2年生の終盤から本格的な病院での実習が始まります。初めて自分の受け持ちの患者さんを担当し、実際に援助をする実習なので、看護学生としての自覚を新たにし、その責任の重さを覚悟するための儀式です。賛美、聖書の朗読、お祈り、誓いの言葉と、厳粛な雰囲気の中で式は進行し、1期生105名が気持ちをひとつに、実習に臨む決意をしっかり固めることができました。
― 讃美では、マザー・テレサの『わたしをお使いください(マザー・テレサの祈り)』を捧げました。曲目は皆さんで選んだのですか。
中西:宗教主事の松⾕曄介先⽣が選曲してくださり、『わたしをお使いください(マザー・テレサの祈り)』が決まりました。私たち全員もこの選曲に賛成でした。マザー・テレサという、病や貧困に苦しむ人々のために生きた偉⼤な先⼈の背中を⾒て、私たちも芯を持った看護師になりたいと思いました。
伊東:「必要としている人に、私の手、足、声、そして心を差し出して、他者を助けたい」という歌詞も、私たちの気持ちにピッタリでした。
― 準備にあたって苦労したことは?
伊東:校歌の練習です。全員で斉唱するのですが、校歌は入学式の時に一度聞いただけで、メロディも歌詞も馴染みがありません。期末試験の間近ということもあって、みんなで集まって練習する時間もなかなか作れず、悩みました。
中西:そう、練習時間が全然足りません。そこで考えたのが、お昼の時間に校歌を流すという戦略。毎日、ずーっとエンドレスで流して、脳内に叩き込んでもらおうと。
伊東:とりあえず毎日耳にしていれば覚えられるよね、って。
永田:そうしたら、本番では今までの練習がウソみたいにピタッと合って!
伊東:みんな、やる時はやるねって。「誓いの言葉」もきれいに揃って、みんなの声がホールに響き合った時は心が震えました。
永田:100人以上が声を合わせるって、大変。でも、本番では見事に揃った。1年、準備してきた甲斐がありました。
― 大役を果たせた感想はいかがですか。
中西:式の当⽇まではずっと打合せの会議で、慌ただしい毎⽇だったので、終わってすぐは、責任を果たせた!という解放感がすごかったです。後⽇、その⽇に撮った写真を⾒返していたら、私たちはこれから実習に出て看護師の道を進むんだ、という実感がじわじわ湧いてきました。特にみんなで灯したキャンドルライトのあかりを⾒た時は、感動で胸がいっぱいになりました。
永田:私は司会もやっていたので、式が終わった時は重圧から解放されたという気持ちでいっぱいでした。今思うと、誓いの言葉も賛美歌も校歌もきれいに揃ったし、入学した時と比べて、みんな大人になったな、看護学生として成長したなっていうことをすごく感じます。
伊東:ナーシング・セレモニーは、これから本格的な病院実習に立ち向かっていく心構えを新たにする大切なセレモニー。そんな節目のセレモニーにイチから携わり、最後までやり遂げることができて、私自身も人間として成長できたなと思います。
永田:⻑い看護師⼈⽣の中でも、たった⼀度のセレモニー。そこに関わることができたのはすごく貴重な経験。いつも私たちを⾒守り、必要な時にはサポートやアドバイスをくださった看護学部の教職員のみなさん、宗教主事の松⾕曄介先⽣にも感謝しています。
中西:おかげさまで、記念すべき第1回のセレモニーを、感動のうちに終わらせることができました。来年もきっと、後輩たちが引き継いでくれるでしょう。
患者さんとの関わりの中で、多くの学びと気づきを得ました。
― 初めて患者さんを受け持った病院実習はいかがでしたか?
永田:病院実習は、5〜6人のグループに分かれて、複数の病院、病棟に配置されます。実習期間は2週間。看護学生1人が1人の患者さんを継続して受け持ち、大学の講義で学んだ知識や技術を医療の現場で実践します。
中西:最初の2日か3日間で、患者さんがどういう病気で、どういう状態なのかをカルテや患者さんとの会話から情報収集を行い、その上で、患者さんに少しでも良くなってもらうために、私たちは何をしたらいいか看護計画をたて、2週目から実際の援助に取り組みます。そのつど指導者さんからフィードバックを受け、じゃあ次はこういう援助をしよう、ああしよう、こうしようと、その繰り返しでした。
伊東:患者さんのケアをしている時に、たとえばもしシーツが汚れているのを見つけたら、「あとでシーツを交換してもよろしいですか」と聞くなど、看護計画になかった活動も、そのつど指導者さんに相談しながらやっていました。
永田:振り返れば、これまでの人生でこんなに緊張したことがなかった。緊張に押しつぶされて、息ができないくらいでした。
伊東:私も、毎朝電車の中で立っていられないくらい緊張した。
永田:実習は、辛い、苦しいことが多いけれど、グループの仲間がいるから助けられた。終わってみれば、みんなよく頑張ったなと思う。
伊東:あと何日だから、あと何時間だから、ってみんなで励まし合いながらね。
中西:それもこれも、今思えばすべてが学び。吸収したものしかない。悩んだり失敗したりしたことも、次の実習に活かすことが大事だよね!
― 患者さんとの関わりで心に残っていることは?
永田:私はターミナル期(終末期)にある患者さんを受け持ちました。最初はどんなお話をしていいのか悩みましたが、幸い患者さん自身がお話しするのが好きな方で、いろいろなお話をしてくださり、むしろ患者さんに助けられました。
伊東:私は消化器外科の患者さん。嚥下障害があって、食べられるようになれば退院できるという方だったので、毎日、少しずつ、柔らかいご飯から普通のご飯まで食べられるようになるまでの過程を受け持たせていただきました。作業療法士が行うリハビリにもついて行かせていただき、顔まわりの筋肉の体操などを実際に見せていただきました。作業療法士の方には、病棟でもできる体操などを教えていただき、患者さんと一緒にやったりしていました。
中西:私は皮膚科に入院されている患者さんを担当。ひとりでは歩けないし、食べることもできないので、生活は誰かがサポートしないとできない方でした。認知症も患っていらして、挨拶をしに行くと、毎回「 あら、学生さんはじめまして」とおっしゃるんですよ。退院される日が、ちょうど実習の最終日だったのですが、「学生さんのおかげですごく楽しい入院生活だった」と言っていただきました。体を拭いたり、お手洗いを手伝ったり、という限られたことしかできなかったのですが、患者さんのその一言で、“私は看護の道を歩んで間違っていなかった!”と思いました。それぐらい嬉しかったです。
永田:私の患者さんもずっとベッド上で過ごしている方だったのですが、実習の最終日にご挨拶に伺った時に、患者さんから売店に行きたいと言われ、買い物の付き添いをしました。その時に、「明日から学生さんがいないと一緒に来てくれる人がいなくなっちゃうな」と言われて。自分が少しはお役に立てていたのだと思って、ちょっと泣いちゃいました。
伊東:私の患者さんは、お風呂には入れる方だったのですが、足の冷えがすごかったので、足浴をさせていただきました。 最初はやったことがないから、と渋っていたのですが、「血行もよくなりますよ」と、足浴のメリットを説明したら受け入れてくださり、「足浴ってこんなに気持ちがいいんだ。明日もやってほしい」と。「学生さんがいなかったらこういう機会ももてなかったし、入院生活でこれが一番気持ちが良かった」と言っていただき、とても嬉しかったです。
― 実習が終わって、今思うことは?
伊東:私は今回、理学療法士さんと一緒に患者さんに関わる機会が多くて、多職種連携が学べる貴重な機会になりました。理学療法士さんから患者さんの情報もいろいろ教えていただき、有益なアドバイスもたくさんいただいたこと。また、ドクターにも積極的に質問して、そのアドバイスを援助に反映することで、患者さんとの信頼関係がどんどんできていった。そういう意味ではすごく実りの多い実習でした。
永田:看護師は⼈と関わる仕事なので、やっぱり患者さんと関わらないと学べないことがたくさんあるなと実感しました。患者さんの体調の影響だと思うのですが、「今⽇は学⽣さんは来ないで」と⾔われたこともあって、⾃分の不甲斐なさを感じたり、まだまだだなって感じることも。⾃分ができること、できないことを深く⾃覚した実習でしたが、それも含めて、本当に多くの学びと気づきのある実習となりました。
中西:大学での学びは知識の面ではもちろん役に立つけれど、実際に患者さんに関わらないとわからないことがたくさんあります。そんな私たち実習生を受け入れ、ていねいなご指導をしてくださった病院の皆さまにも、感謝の気持ちでいっぱいです。
患者さんの「笑顔」と「ありがとう」が明日に向かう力に。
― 最後に、皆さんが看護師をめざすようになったきっかけと、今後の目標を聞かせてください。
中西:私は小さい時から誰かのお世話をすること、人が喜んでいる顔を見るのが一番好きだったので、ずっとそういう仕事に就きたいと思っていました。最初は薬剤師をめざしていたのですが、薬剤師より看護師の方が絶対向いているよ、と母に言われ、看護師をめざすようになりました。看護師は患者さんに一番近い医療従事者で、患者さんとふれあう時間が長いことも魅力でした。私の祖父が入院している時の看護師さんたちがみんなキビキビと誇りを持って仕事をされていて、その姿がめちゃめちゃカッコよくて、憧れを持ったことも看護師をめざす動機になりました。
永田:私も人のために動くことがずっと好きだったこと。また、私の叔父が看護師をしていて、ずっと仕事に誇りを持って働いているのを間近で見てきて、看護師っていいなと漠然と思っていました。その背中を押してくれたのが、 中学2年生の時に遭遇した事故現場での出来事。たまたま事故現場の近くに看護師さんが住んでいらして、テキパキと救助している姿を見て、看護師ってあんなことができるんだ、すごいな、と思いました。
伊東:私は人の役に立つ仕事をしたいとずっと思っていて、それって何だろう どんな仕事がいいんだろう、と考えた時に、一番最初に思いついたのが看護師で、そこから看護学部への進学を決め、今ここにいます。
中西:正直、看護学の勉強はとても難しくて、医療用語も全然わからない。テストも投げ出したくなるぐらい難しいので、私、看護師に向いてないのかな、とずっと思っていました。でも、病院実習を体験して、担当した患者さんから「あなたに受け持ってもらってよかった、会えてよかった」と言われた。私と関わることで患者さんが笑顔になっていく姿を見られるのがこの上なく幸せで、看護師という仕事は私の天職だ、と思えるようになりました。これからも頑張って勉強して、患者さんを笑顔にする看護師になりたいと思います。
永田:私は看護師を目指すうちに助産師にも興味をもち、大学卒業後に助産師の養成学校に進学しようかどうか、迷っています。病院実習を体験すると、患者さん一人ひとりを看る看護師もいいなと思ったり、助産師も憧れだなと思ったり、いろいろ迷っているところです。大学での学び、病院での学びを繰り返すうちに、自分が本当にやりたいことが見つかるだろうと思っています。
伊東:実は私の叔母が職場の環境が原因でうつ病になり、それがきっかけで企業のメンタルヘルスに関心を持つようになりました。病気になる前になんとか防げなかったのか、と。健康だった人が職場環境が原因でメンタルに不調をきたしてしまうのは残念なことだし、会社にとっても損失です。そんなことから企業の保健師をめざすようになり、今は保健師の勉強もしています。でも、永田さんと一緒で、病院実習で「あなたに受け持ってもらってよかった、あなたに会えてよかった」と言われると、看護師もいいなと思う私もいます。
永田:これからは病院での臨床実習がますます多くなります。みんなで励ましあい、高めあいながら、それぞれの目標に向かって一歩一歩前進していきたいと思います。
■ 金城学院報 with Dignity vol.43 はこちら
■ 過去の金城学院報 with Dignity はこちら
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