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住まいや暮らしにまつわる、自分にとっての心地よさを考えたくなる本

進学や就職、転勤などで4月から新生活がスタートしたという人も多いでしょう。
生活の拠点は変わらなくても、心地よい陽気に誘われて、模様替えをしてみようかなという気分にもなりますよね。毎日使うものや身に着けるものを見直したり、一日の長い時間を過ごす家を快適な場所にしたりすることは、私たちの心や身体を整えることにもつながりそうです。

名古屋市金山の書店「TOUTEN BOOKSTORE」の店主、古賀詩穂子さんが、新しい暮らしが身近に感じられる2冊の本をおすすめしてくれました。
  


■『私の生活改善運動 THIS IS MY LIFE』

「これでいいや」で選ばない。「実は好きじゃない」を放置しない。

日常における、些細だけど気にかかっていること。これでいいやで選んできたもの、でも本当は好きじゃないもの。それらが実は、「私」をないがしろにしてきた。
よどんだ水路の小石を拾うように、幸せに生活していくための具体的な行動をとっていくー。

文筆家の安達茉莉子さんが自らの生活を改善していく様子を記録した、『私の生活改善運動 THIS IS MY LIFE』

手づくりのZINEジンとしては異例のシリーズ累計五千部を記録した大人気エッセイを、5万字の書下ろしとともに再構成し、単行本化したものです。
 
― 「生活改善運動」というのは、元々、大正時代に始まって戦後まで続いた国民運動なのですね。

古賀:そうですね、日本の歴史のなかで実際にあった運動らしいです。本誌から引用すると、「自分にとっての心地よさ、快・不快を判別し、より幸福なほうに向けて生活の諸側面を改善していく自主的で内発的な運動」というのが安達さんの解釈で、それを実践した記録がこのエッセイです。
 
本棚や器を選ぶ、洋服を買うなどのテーマがありますが、ノウハウというよりは、どういう考えでこの運動を始めたのか、どういう気持ちでやっているのかが綴られています。生活改善運動は人それぞれだと思うので、〝自分だったらどんなふうにできるかな〟という気づきが得られると思います。
  

人を巻き込んだり、手作りもしながら続く運動

― 食や衣服など、それぞれの改善をサポートしてくれるような人物が登場します。周りにこういう人がいて、客観的なアドバイスをもらえるのはありがたいですよね。

古賀:安達さんはいろんな方を巻き込んで運動を進めていますし、そういった方たちのアイデアやアドバイスを柔軟に取り入れているとも感じます。自分の心に水を与え続けていくと水が足りなくなりますが、周りの人と関わっていくなかで、また水が溜まっていく。それを繰り返していくのが生活なのかもしれませんね。
 
― 安達さんはぎりぎりまで追い込まれたところから改善運動を始めるという印象です。

古賀:ストイックな方なんでしょうね。そのあたりの心の動きも文章を通して伝わってくるので、エッセイとしてもすごく面白いです。
安達さんはすごく真面目な方なんだろうという印象も受けますね。生活改善運動を続けていくこと自体がいっぱいいっぱいになって、ストレスを感じたり。そこからまた、どう展開していくかは実際に読んでみてほしいです。
 
― 欲しい商品が見つからず、ついに〝なければ自分で作ろう〟という選択に至りますよね。

古賀:それに気づいたところは私も好きです。自分で作ることを通して、どんなふうに作られているかという手間を知るのは大事なことですし、そこから疑問や納得も生まれてくるのかと。知人から投げかけられた「みんな、なんでも買って済ませすぎ」という言葉に対して安達さんが得た気づきは、たくさんのみなさんに刺さると思うので、ぜひ確かめてみてほしいです。
 
今回ご紹介するにあたって読み直したのですが、何度読んでも新しく感じて気づきも多い、長く読み継がれていく本だと思います。読めば読むほど味が出る〝するめ本〟ですよ。
 

書籍データ:『私の生活改善運動 THIS IS MY LIFE』

『私の生活改善運動 THIS IS MY LIFE』
著:安達茉莉子
発行:三輪舎

■『家が好きな人』

架空の暮らしを垣間見ながら想像がふくらむ

楽しかった日も、そうじゃない日も、いつでも家はあたたかく包み込んでくれる。家が好きな5人の女性の住まいとそこに散らばるたくさんの小さな幸せ。

『家が好きな人』は、イラストレーターの井田千秋さんが温かい日常を家と共に描いた、オールカラーのコミック&イラスト集です。
 
― 5人の女性の家とそこでの暮らしが描かれています。

古賀:家をベースにした5人の暮らしを、まるでカメラでとらえたみたいに描かれていますね。それぞれの部屋の間取りも入っているので、間取りを見るのが好きという人も楽しめそうです。一人ひとりの暮らしを想像しながら読むことで、〝自分だったらこういうのがいいかな〟と思い描けたりもしそうです。
 
― それぞれのキャラクター設定がしっかりして、ストーリーが作られていますよね。

古賀:本当に実在する人のようなリアルさがありますよね。知らない人の生活を垣間見るって、実際にはできませんから、その設定も凝っていて面白いです。一軒目、二軒目…と続くのですが、少しオムニバスっぽい展開もあったりします。
  

あたたかく、生活感もあってリアルなイラスト

― イラストのタッチがあたたかくて、あらためて〝家っていいな〟と感じます。

古賀:『家が好きな人』というシンプルなタイトルが内容をそのまま表していますよね。家で自分の時間を大切に過ごすことが押しつけがましくなく、さらっと、でも愛がある感じで描かれています。
描かれている部屋が変に片付いていなくて、生活感があるところもリアルで、そこがまたかわいいいです。絵の描写も細かくて、雑貨やちっちゃなコメントも書き込まれているので、丁寧に読んでいくと楽しいですよ。1冊目に紹介した『私の生活改善運動 THIS IS MY LIFE』を実践している人たちと想像しながら読んでみるのもおすすめです。
  

書籍データ:『家が好きな人』

『家が好きな人』
著:井田千秋
発行:実業之日本社

名古屋市金山の書店「TOUTEN BOOKSTORE」の情報はこちら

TOUTEN BOOKSTORE
文中の読点のように生活のなかのアクセントとなり、知的好奇心をくすぐる存在を目指す新刊書店。雑誌やコミック、歴史や文学、社会問題などジャンルを問わず多様な本がそろい、コーヒーやビールなどを飲みながらくつろぐこともできる。2階にギャラリーを備え、トークイベントや読書会、写真展などの催しも多い。

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