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人生を豊かにし、生きる力を与えてくれる“読書のススメ”

2023年度の愛知県私学読書感想文コンクールで、金城学院中学3年生(受賞時は中2)の志垣ちいさんが最優秀賞(中学校第II類)を受賞。
高校1年生の麓茉由子さん(受賞時は中3)が、第35回読書感想画名古屋市コンクール(毎日新聞社・各学校図書館研究会主催)で特別優良賞を受賞しました。

そこで、見事入賞を果たした2人に、読書への思い、感想文・感想画を通じて伝えたかったことなどを聞きました。


✽ 2023年度愛知県私学読書感想文コンクール ✽
最優秀賞 志垣 ちい 「異常という普通」

✽ 第35回読書感想画名古屋市コンクール ✽ 
特別優良賞 麓 茉由子 「本当に大切なもの」


2人の読書感想文・感想画については、『金城学院報 with Dignity Vol.43 金城学院ニュース&トピックス』でも紹介しています。こちらもぜひ読んでみてください。


本を読んで感動したことを文章で、絵画で表現する。

― 読書感想文と読書感想画のコンクールに応募しようと思ったきっかけは
なんですか。

 
志垣:私はもともと本が好きで、 読み始めると夢中になって止まらない子でした。本屋さんの空気も大好きで、いつも何時間も居座っています。文章を書くことも好きなので、先生からこういうコンクールがあるよというのを聞いてチャレンジしました。選んだ本は、『普通という異常(兼本浩祐)』。いつものように本屋さんで本の背表紙を眺めていたらこのタイトルに出会い、目が離せなくなりました。
 
麓:私も子どもの頃から本を読んだり、絵を描いたりすることが好きでした。感想画のコンクールに応募しようと思ったのは、中学になってから絵の具をさわってなかったので、絵の具で絵を描きたいなと思ったのがきっかけ。題材に選んだ『はてしない物語(ミヒャエル・エンデ)』は、私が今まで読んだ中で一番好きな本だったので、せっかく絵を描くならこの物語にしようと思いました。
  

― 作品のどんなところに感銘したのですか。
 
志垣:まず、『普通という異常』というタイトルに惹かれたのは、私がいつも思っていることだったから。というのも、私は小学校のときADHD・ASDと診断され、世間では、「障害者は普通という大多数ではない」と分けられています。そこから私はずっと「普通も病」と考えながら生きてきました。そんなときに出会ったのがこの本です。
本の中で私が特に共感したのは、「ADHD・ASDを病なのだと考えるならば、いわゆる普通の人、あるいは健常発達的特性を持つ人も、見方を変えれば、じゅうぶん、病として捉えることが可能ではないか」というくだり。たとえば相手が自分をどう見ているのか気になってしかたがないという不安から、矢も盾もたまらなくなってしまう場合も病と言っていいのではないか、と作者は言います。
今まで自分がおかしいと思っていた私は、「そうか、健常発達にかかわらず、すべての人が私が気にしないことをこだわるのか!」と、驚きと安心に満ちあふれたことを覚えています。
 

麓:『はてしない物語』は、少年バスチアンが古本屋で見つけた一冊の本「はてしない物語」の中の世界に入り込み、冒険の旅を続けながら成長していくという物語。舞台はファンタージエンという世界で、人間以外にも妖精やドラゴンなど不思議な生き物たちが住んでいます。今回、感想画を描くために物語を読み返したのですが、何度読んでもワクワクするし、言葉では言い表せない感動がありました。

― 絵を描く上で苦心したことはなんですか。
 
麓:このお話の上巻と下巻ではそれぞれ主人公が違うので、2人を主人公にして描いたのですが、苦心したのは、小学生の頃にこの物語を映画化した『ネバーエンディング・ストーリー』を何度も観ていたので、どうしても映画のイメージにとらわれてしまうこと。なんとか映画のイメージを払拭し、自分なりのイメージができてからは一気に描き上げました。描く作業はとても楽しく、私もバスチアンと一緒に物語の世界に入って、一緒に冒険を楽しんでいるような気持ちになりました。ちなみに、中央の少年は弟をモデルにして描いています。
  

私の思いに共感してくれる人を、一人ずつ増やしたい(志垣さん)
読書の魅力、楽しさを伝えたい(麓さん)

― 感想文、感想画を通じて伝えたかったことはなんですか。
 
麓:『はてしない物語』はすごく面白い物語なのでみんなにも読んでほしいし、物語の世界に入り込んで想像を巡らせる楽しさを味わってほしいなという思いがありました。私の絵を見て、その物語の世界に興味を持ってくれ、本のページを開いてくれたらすごく嬉しいです。
 
志垣:私は、麓さんの絵を見た瞬間に絵の世界に引き込まれ、物語も読んでみたいなと思いました。私は絵を描くのがすごく苦手なので、素晴らしいなと思いました
 
麓:ありがとう。そう言ってもらえると嬉しいです。志垣さんも、中学2年生の時に最優秀賞を受賞したんですよね。私の父も志垣さんの感想文を読んで、すごいな、本も読んでみたいな、と言ってました。
 

志垣:ありがとうございます。私自身は小さいときから「普通とは違う」と言われ、ずっと分けられて生きてきました。他人にはわからないかもしれませんが、いろんな困難も抱えています。でも、それは私だけではく、人は誰もがなんらかの困難や生きづらさを抱えながら生きているのだと思います。
この世の中には、私のような人もいれば、いわゆる健常者といわれる人もいます。でも、みんな同じ人間。だから私は、健常者、障がい者という括りではなく、人それぞれの特性であり、個性だと考えればいいのでは、思っています。

― 障がいの有無に関わらず、誰もが生きやすい社会でありたい、ということですね。
 
志垣:そうです。この世の中に、普通も異常もありません。誰もが自分らしくあるために、懸命に生きているだけです。だからこそお互いに尊重しあい、理解しあって生きていけたらいいなと思っています。また、それを伝えていくのも私の使命かな、と思っています。私の思いに共感してくれる人を一人ずつ増やしていけたらいいな、と。
 

本との出会いが世界を広げ、生き方を変えてくれる。

― 二人にとって、読書とはなんですか
 
志垣:新しい知識を得るもの。世界を広げてくれるもの。私は以前はもっと悲観的で、自分だけの考えにとらわれたり、悩んだりしていました。でも、いろんな本を読むことで、いろんな人の考えや意見を知り、それを取り入れることによって、自分のことを客観的にみたり、自分の障がいのことも周囲に語れるようになりました。本を読むことで世界がひらかれ、自分がすごく変わることができたと思います。
 
麓:わが家は父と弟が読書家で、家にも本がたくさんあるし、家族と一緒に図書館や本屋さんに出かけることも多いです。そんな環境だったので、私も自然に本が好きになりました。読書にもいろんな楽しみ方があって、ひとりで本の世界に入り込んで、想像を膨らませていくのも好きだし、家族で読んだ本の感想を語り合ったりするのも楽しいです。同じ本を読んでも人によって解釈の仕方や感じ方が違うので、新たな気づきがあったり、視野が広がったり。それも読書の楽しみのひとつです。

― これからも、読書感想文、読書感想画にチャレンジしますか。
 
志垣:今回の受賞を、家族はもちろん、先生たちも、友だちも喜んでくれたことがすごく嬉しかったし、もっともっと文章を書きたいなという意欲が湧いてきました。これからもどんどん書いて文章力をつけ、コンクールにもチャレンジしていきたいと思っています。
 
麓:私も絵の力をもっとつけて、感想画のコンクールにまた挑戦したいと思っています。何より「心に残った作品を絵にする」という作業はとても楽しいので。高校生になったので、勉強もがんばらねば、と思っています。



■ 金城学院報 with Dignity vol.43 はこちら

■ 過去の金城学院報 with Dignity はこちら

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