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暑すぎる夏、地球に何が起きているの?環境問題をわかりやすく伝える絵本

最高気温が40℃にも達するところがあったり、「外出はなるべく控えて」などと危険な暑さへの対策が連日呼びかけられている今年の夏。真夏の暑さは年々厳しくなっているように感じます。世界的に見ても、山火事や局地的な豪雨が各地で起きるなど、地球環境に異変が起きているのでは?と思わずにいられません。
 
今、地球環境はどんな状態にあるのか。
そして、私たちにできることは?

環境問題について考えるきっかけになりそうな2冊の絵本を、三重県伊勢市の書店「散策舎」代表の加藤優さんに紹介して頂きました。


■『たった2℃で…
地球の気温上昇がもたらす環境災害』

地球の気温が2℃上昇すると何が起きるか

2021年にノーベル物理学賞を受賞した真鍋淑郎さんの「気候モデル」により、CO2濃度が2倍になると地球の温度が約2℃上がることが、世界で初めて計算により明らかにされました。気候変動による地球の温暖化は、まったなしの取り組みを迫られている大問題です。
 
『たった2℃で…地球の気温上昇がもたらす環境災害』は、もし地球の気温が2℃あがったら、私たち人間もふくめて地球上のすべての生きものに大きな影響があることを、直感的に伝わる構成と絵で表現した絵本です。

― 環境問題を、絵本を通して考えることの効果や特徴は?

加藤:環境問題は地球全体に関わるテーマでありながら、自分にも身近なことですし、わかりにくい部分もありますよね。世界の広さをつかむように壮大なテーマを扱うのに、絵本は向いていると思います。専門的な内容を誰にでもわかりやすく描いているのはもちろんですし、実際に起きていることにも入り込みやすいので、環境問題を考えるきっかけになると思います。
  

世界各地で生きる動物からのメッセージ

― 現状からページをめくると、2℃上がった状態に。例えば、きれいなサンゴ礁の海が真っ白に変わってしまったりする展開です。

加藤:実際にはゆっくりと進んでいく変化ですが、ページをめくることで、どんな変化が起きてしまうのか直感的に伝わる構成ですよね。
  

― 魚やカメ、パンダなど親しみのある動物たちの環境を、ネコと女性が訪ねていく設定になっています。

加藤:誰もが知っている動物が出てくることで身近に感じられますし、海や山、北も南も、全世界に影響があることも知ってもらえますよね。ネコと女性は、子ども向けの絵本や小説によく出てくるナビゲーターのような役割をしています。読み手が登場人物の気持ちになって、物語に入っていくのを助ける効果があると思います。
  

― 色とりどりの海や豊かな森、美しい絵からも自然を守る大切さを感じます。

加藤:そうですね。表紙に描かれている白くまの表情もとても印象的で、事態の深刻さを訴えているようです。絵にも強いメッセージが込められていると感じます。
  

書籍データ:『たった2℃で…地球の気温上昇がもたらす環境災害』

『たった2℃で…地球の気温上昇がもたらす環境災害』
文:キム・ファン
絵:チョン・ジンギョン
発行:童心社

■『空気を変える』

空気を変えるメカニズムをわかりやすく

地球が直面する環境問題の一つに、空気中の二酸化炭素の増加があります。増えすぎた二酸化炭素は地球を覆って大気中に熱を閉じこめるため、必要以上に気温が上昇。気候変動が生じて、生き物に悪影響を与えてしまいます。

『空気を変える』では、自然による二酸化炭素削減のメカニズムを紹介するとともに、人間の創意工夫で地球環境を守る方法があることも解説。私たちにできることを考えさせてくれます。
 
― 絵本というより、図鑑のようでもありますね。

加藤:科学絵本のようなジャンルかと思います。空気の循環など複雑な地球のメカニズム、二酸化炭素や酸素の流れなどがシンプルな言葉と絵で描かれているので、たしかに図鑑っぽくもありますね。
 

― ページによって絵の構成も変わります。

加藤:見開きの一枚絵だったり、二酸化炭素を排出するものとして、車やバイクなど複数の要素が配置されていたり、変化がありますね。あとがきなど、詳しい解説もありますが、すっきりして読みやすい絶妙な構成だと思います。
 

環境問題へのアプローチはさまざま

― 今回ご紹介頂いた2冊は、同じ環境問題を扱いながらも、アプローチが違うと感じます。『たった2℃で…』は気持ちに訴えかけるタイプで、『空気を変える』は理論的に考えていくようでした。

加藤:たしかに、そうかもしれません。『たった2℃で…』からは”何とかしてくれ”、”何とかしなくては”という想いが伝わりますし、『空気を変える』には、具体的にどんな解決策があるかが描かれています。
人間は切迫しないと動かないところがありますし、頭ではわかっていても実際どうすれば、という時もある。環境問題に取り組もうという想いも、理論的な方法もどちらも必要ですよね。
 
― 読者によって、どちらの絵本がより伝わりやすいかもありそうです。

加藤:受け取り方は人によって異なりますしね。自分にとって身近に感じる方を選んでもよさそうです。どちらも入門的でありながら、しっかりと説明もされているので、ここで興味を持って次に進むきっかけにしてもらってもいいと思います。
 
環境問題には温暖化などいくつもの複雑な要因が関わっていますので、これだけ解決すれば大丈夫というものではありませんよね。長い時間をかけて起きたことですから、すぐには変わらないでしょうし…。少しずつできることから取り組んで、温暖化を食い止めたり、よりよい空気に替えていったりしたいですね。
  

書籍データ:『空気を変える』

『空気を変える』
作:デビー・リヴィ
絵:アレックス・ボーズマ
訳:宮坂宏美
発行:あすなろ書房

三重県伊勢市の書店「散策舎」の情報はこちら

散策舎
伊勢神宮 外宮前のレトロなビルにある、小さな新刊書店。深い蒼緑で彩られた空間に「心・食・旅」のテーマに沿って選んだ3000冊の本が揃う。散策するように、日々を確かに歩むための心と身体の糧となる本との出会いを楽しむことができる。

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