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夢と声を奪われた少女が、仲間と踊るダンスを通じて生きる力を取り戻す

身体を使ってさまざまな思いを表現するダンス。
神への祈りや願いとして用いられ、世界各地で多様な民族舞踊や芸術に発展、現代では音楽にあわせて楽しむエンターテインメントとしても、多くの人に親しまれています。

言葉の壁を超える自己表現であるダンスは、言葉が通じない外国の人や、聴覚や言語に障がいのある人とも心を通わせることができるツールとして、力を発揮してくれそうです。
  


■『裸足になって』

アルジェリア出身の監督が描く女性の姿

©THE INK CONNECTION - HIGH SEA - CIRTA FILMS - SCOPE PICTURES FRANCE 2 CINÉMA - LES PRODUCTIONS DU CH'TIHI - SAME PLAYER, SOLAR ENTERTAINMENT

北アフリカのイスラム国家、アルジェリアで、バレエダンサーになることを夢見る少女、フーリア。ある時、階段から突き落とされて大けがを負い、踊ることも声を出すこともできなくなってしまいます。夢を奪われて悲しみに心を閉ざすフーリアが出会ったのは、リハビリ施設に通うろう者の女性たち。彼女たちにダンスを教えることで、フーリアは生きる情熱を取り戻していきます。

ミッドランドシネマ 名古屋空港の支配人、森さんに見どころを伺いました。

©THE INK CONNECTION - HIGH SEA - CIRTA FILMS - SCOPE PICTURES FRANCE 2 CINÉMA - LES PRODUCTIONS DU CH'TIHI - SAME PLAYER, SOLAR ENTERTAINMENT

― アルジェリアが舞台の作品ですね。

森:監督のムニア・メドゥールはアルジェリア出身の女性で、前作の『パピチャ 未来へのランウェイ』は90年代、内戦状態のアルジェリアで生きる女性たちを描いた作品でした。今回の作品は現代が舞台ですが、やはり女性や弱者の解放、成長などを描こうとする姿勢が感じられます。
 
― イスラム国家ということで、女性が生きづらい環境なのでしょうか。

森:主人公のフーリア自身にはさほど見受けられませんが、亡命したいと話すダンサー仲間もいて、女性の活動が制限されるような環境なのかもしれません。また、フーリアのお母さんが夜中に車を運転していて検挙された、という過去のエピソードにも驚きました。アルジェリアの慣習や法律はわかりませんが、女性の自由が制限されている時代があったのかと思わされます。
 
― 90年代のアルジェリアでは内戦が激しかったそうですが、その傷は作品の中でも感じられましたか。

森:リハビリ施設で出会うろう者の女性の中には、家族を内戦で失った人も出てきますし、やはり内戦の影響は垣間見えますね。
  

彼女の内面の変化がダンスにも表れる

©THE INK CONNECTION - HIGH SEA - CIRTA FILMS - SCOPE PICTURES FRANCE 2 CINÉMA - LES PRODUCTIONS DU CH'TIHI - SAME PLAYER, SOLAR ENTERTAINMENT

― バレエダンサーの夢を奪われた主人公はダンス教室で再び踊り始めますが、どんな変化がありましたか。

森:最初に彼女が習っていたのはクラシックバレエですが、ろう者の女性たちと踊るのはもっと自由な身体表現、手話を取り入れた動きもある創作ダンスのようでした。彼女の内面の変化がダンスにも表れていると感じましたね。
映画のタイトル『裸足になって』でも、そういった内容が表現されているのかと思います。窮屈なトゥシューズを脱ぎ裸足になって、自由なダンスを踊る。この物語を象徴するような、いい邦題が付けられていますね。
 
― 失望した彼女が立ち直ることができたきっかけは、何だったのでしょうか。

森:やはり、ろう者の女性たちとの出会いだと思います。自分よりつらい思いをした人たちの存在や彼女たちの経験を知ることで、自分はここで立ち止まっていてはいけないと感じたのではないでしょうか。
 
― 〝もうダンスはできない〟とあきらめていた彼女が、「ダンスを教えて」と言われ、自分にもできることがあると気づいたのかもしれませんね。

森:それもあると思います。自分の役割を見出し、新たな夢や目標が見つかったということでしょうね。

話題作への出演が続く主演女優にも注目

©THE INK CONNECTION - HIGH SEA - CIRTA FILMS - SCOPE PICTURES FRANCE 2 CINÉMA - LES PRODUCTIONS DU CH'TIHI - SAME PLAYER, SOLAR ENTERTAINMENT

― ほかに注目したい点はありますか?

森:主演のリナ・クードリもアルジェリア出身で、『パピチャ~』でも主演を務めました。ウェス・アンダーソン監督の『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』などの話題作にも出演していて、これからさらに活躍が期待される俳優です。
 
― 2022年・第94回アカデミー賞で作品賞など3部門を受賞した『コーダ あいのうた』の出演者も関わっているそうですね。

森:そうですね。主人公の父親役を演じてアカデミー賞助演男優賞を受賞した、トロイ・コッツァーが製作総指揮を務めています。出演者の中にはろう者の方も含まれているそうですよ。
 
日本で暮らしている私たちにとっても、事件や事故などはいつ自分の身に起こるかわかりませんよね。理不尽な出来事で人生が大きく変わってしまったとき、自分の生き方や考え方を変化させて成長していけるかどうかは普遍的なテーマだと思います。
 

『裸足になって』ミッドランドスクエアシネマほかにて、7月21日から上映予定。

『裸足になって』の予告編はこちら

 

ミッドランドスクエアシネマ 劇場情報

名古屋駅前に14スクリーン、全席ソフトレザー張りの2,205席を備える都市型シネマコンプレックス。メジャー作品はもちろん、アートレーベルやアニメレーベルも設けて、コアなファン向けの作品もカバーする。

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