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てぶくろ

まだ薄暗い早朝、郵便受けに新聞を取りに行く。吐く息が真っ白で、プランターの植物も白い霜に覆われている。新聞を小脇に抱えて両手を擦って温めながら、急いで部屋の中に戻った。

妻と一緒に手分けして、子どもたちに暖かい上着やニット帽を着せていく。手袋も忘れずに小さな手にはめる。
慌ただしく子どもたちを送り出した後、自分が仕事に出かける準備を始める。今日は駅までの道も寒さが厳しそうなので、子どもたちのように手袋をはめていこうと思う。
「あれ、手袋ってどこにしまったっけ」
そういえば今年はまだ一度も使っていなかったことを思い出し、独り言をつぶやく。
「上着のポケットとかに入れっぱなしじゃないの?」
キッチンから妻の声が返ってくる。
なるほど、と頷き、クローゼットの中の冬用の上着のポケットを順に探っていく。
「あった!」
ダウンジャケットのポケットの中にくるっと丸まった手袋を見つけた。
「あれ?」
ポケットの中には、まだ何か小さなものが入っているようだ。奥まで手を入れると、小さな丸いどんぐりが二つコロコロと出てきた。
去年の冬の記憶が蘇る。その年初めて雪が降った冬の寒い日曜日。子どもたちと一緒に近くの公園に行って雪だるまを作った。立派なクヌギの木の下で、子どもたちが大きなどんぐりを拾って、雪だるまに目玉をつけた。愛嬌のある顔で、思い出すと自然に笑みがこぼれる。僕はどんぐりをそっとダウンジャケットのポケットに戻し、クローゼットの扉を閉めた。

今年もまた雪が降ったら、このジャケットを来て家族で公園に出かけよう。

作:加藤大樹