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「クスリ」と「リスク」は背中合わせ!?

116限目 体内と体外
『胃や腸は「体内」じゃない!?』
薬学部 薬学科

2018年11月掲載「車内の金城学院大学」

薬物相互作用とは?

病気やケガの治療になくてはならない薬。

それぞれ単独で摂取すれば問題ない薬でも、複数の薬を飲んでいる場合は、薬の組み合わせによってよくない影響が出ることがあります。

これを「薬物相互作用」といい、薬の効き目が必要以上に強くなりすぎたり、逆に薬の持つ効果が打ち消されてしまったり、場合によっては生命に危険が及ぶこともあります。

たとえば血圧を下げる薬は、それ一つだけを飲んでいる場合は血圧を下げてくれますが、糖尿病や高脂血症など複数の病気を抱え、多種類の薬を同時に服用する場合は相互作用が生じるリスクが高まります。

薬物相互作用はまた、薬同士だけでなく、薬と飲食物の飲み合わせで引き起こされることもあります。

たとえば、高血圧の治療に使われる降圧剤をグレープフルーツジュースと一緒に飲むと血圧が下がりすぎてしまうことが報告されています。

また、血液を固まりにくくする薬(ワルファリン)は、ビタミンKを多く含む食品(納豆やブロッコリーなど)と一緒に摂取すると、効果が弱まってしまうことが知られています。

相互作用が起こるメカニズム。

薬物相互作用が生じるメカニズムはいくつかあり、そのひとつに「トランスポーター」と呼ばれるタンパク質が関与するものがあります。

口から飲みこんだ薬は、食べ物と同じように食道を通って胃に入り、主に小腸で吸収されます。

小腸で吸収された薬は血流に乗って全身に運ばれ、効果を発揮します。

この過程で大きな役割を担っているのが、さまざまな臓器や組織の細胞膜に存在するトランスポーターで、薬の有効成分を体の中に効率よく取り込んだり、不要なものを体外に排出する働きをしています。

薬と飲食物の組み合わせによっては、このトランスポーターの働きが阻害され、相互作用を引き起こすことがあります。

たとえばアレルギー治療薬のフェキソフェナジンは、果物のジュースと一緒に摂るとトランスポーターの働きが弱まってしまい、その結果、血液中に入る薬の量が少なくなって、薬の効果が低下してしまうことが知られています。

薬を安全に、効果的に使うために。

今回ご紹介した例のほかにも、気をつけたい薬の飲み合わせはたくさんあります。

特にいくつかの病気を抱え、複数の医療機関から複数の薬が処方される場合は注意が必要です。

医療機関を受診するときは必ず「お薬手帳」を持参し、医師や薬剤師に見せるようにしましょう。

また、市販薬も相互作用を起こすリスクはゼロではないので、必ず薬剤師の説明を受けてから購入してください。

おすすめは「かかりつけ薬局」を一つ決めておくこと。

複数の医療機関から処方箋をもらっても、豊富な知識をもつ薬剤師が、同じような薬が重複していないか、飲み合わせの悪い薬が出されていないかなどをチェックしてくれるので、薬の重複や相互作用を未然に防ぐことができます。

かかりつけ薬局の薬剤師は、患者さんの薬の服用歴や現在服用中の薬をすべて把握し、継続的に管理しているので、薬のことや健康のことで心配ごとがあるときも、安心して相談できるというメリットもあります。

薬は正しく、安全に使うことで初めて十分な効果が得られます。

もし、薬の使用中に気になる症状が現れたら、自己判断せず、すぐに医師や薬剤師に伝えること。

薬の効果や用法、飲み合わせになどについて知りたいことや不安があるときは、医師や薬剤師に相談しましょう。

身体の仕組みを学び、人々の健康を支える。
それが薬学部 薬学科


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