#7 ‶思春期の月経トラブルを知ろう-月経痛を我慢しないで”
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今回のコラムは、女性の身体にとって大切な月経や月経関連症状のことをお話しします。
月経と上手に付き合うことは、毎日を生き生きと過ごすためにとても大切なことだと思います。
日本人の多くの女性は10~14歳に初経を迎えます。
思春期の成長スパートの1年~1年半後に初経が始まると言われています。
人間は身体が妊娠に耐えられる状態になってから妊孕性が獲得されるのです。
人間の身体機能というのは、大変理にかなっているものです。
思春期の女子の場合は、ホルモンバランスが不安定なことが多いため、月経周期は不順なことも多いです。
中高生を対象とした調査(※1)では、
「月経に関して、勉強や運動に影響するほどの体の不調がある」
と回答した生徒が約80%いました。
そして、半数以上が月経痛を「我慢している」また「薬で我慢している」に回答しています。
これらの症状には、
月経痛71%、月経前症候群34%、月経過多25%、貧血19%、月経不順11%
などを挙げていました。
多くの生徒が月経時に不調を感じながらも我慢している状況が見られます。特に月経痛による下腹部痛や腰痛が勉強や運動など学校生活に影響を与えています。
月経困難症
月経時の日常生活に支障をきたすほどの病的症状は、「月経困難症」と呼ばれています。
月経困難症は2つに分類されており、
特に原因を認めない「機能性月経困難症」と
子宮に何らかの異常がある「器質性月経困難症」があります。
月経痛の多くは機能性月経困難症ですが、中には「子宮内膜症」という病気が隠れていることがあります(※2)。
子宮内膜症は子宮内膜やそれに類似した組織が子宮以外の場所で発育し増殖する慢性の炎症性疾患です。
この子宮内膜症は不妊症の原因になります。
また、それ以外にも産科合併症(切迫早産や前置胎盤、胎盤早期剥離など)や卵巣がんなどの発症リスクも高いと言われています。
しかし、機能性月経困難症なのか器質性月経困難症なのか…自分でどちらかを見分けるのはとても難しいです。
そのため、月経痛が重い人は産婦人科に相談してほしいと思います。
現在は非ステロイド性抗炎症薬の鎮痛薬だけでなく、ホルモン療法(LEP)も開発され有効性が高いので、つらい症状を和らげてくれるでしょう。
また、薬物療法以外にも、十分な睡眠やウォーキングなどの有酸素運動、ストレッチ体操、温罨法(温めること)、マッサージなども効果があります。
思春期の月経トラブルは将来の妊娠に重大な影響を与える可能性があるため、疾患の早期発見と治療が重要です。
月経による不調がある場合は、一人で抱え込まないで、保護者や保健室の先生、産婦人科にぜひ相談してください。
文献
※1 日本子宮内膜症啓発会議, 平成29年度スポーツ庁委託事業「学校における子供の体力向上課題対策プロジェクト」 中学生, 高等学校教員向け等の女性特有の健康課題に関する普及・啓発 成果報告書, 2018, 27-50.
※2 Janssen E.B., Rijkers A.C.M., Hoppenbrouwers K., et al. Prevalence of endometriosis diagnosed by laparoscopy in adolescents with dysmenorrhea or chronic pelvic pain: a systematic review, Human Reproduction Update, 2013, 19(5), 570–582.
※3 日本女性医学学会編, 女性医学ガイドブック 思春期・性成熟期編 2016年度版, 金原出版株式会社, 2016, 105-119, 137-142.
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