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生きづらさを感じている女性を救うものとは

家族や友人などたくさんの人と関わっていても、孤独を感じてしまう時があるかもしれません。
そんな思いを乗り越えて前に進むことができるのか、悩みを抱えて心を閉ざしてしまうのか。生きづらさを感じたさまざまな女性の姿を知ることで、その違いを探る手がかりが見つかりそうです。

今月、名古屋市内のミニシアターで公開される作品の中から、女性を主人公にした2本の作品をご紹介します。
  


■『私、オルガ・ヘプナロヴァー』

追い詰められていく女性を客観的に見つめる

1975年、22歳の若さで殺人犯として処刑された、オルガ・ヘプナロヴァーの人生を元に描かれた『私、オルガ・ヘプナロヴァー』

彼女はなぜ犯罪を起こし、チェコスロバキアで最後の女性死刑囚となったのか。その生い立ちをたどりながら、彼女が抱えていた孤独や社会への怒り、生きづらさを見つめます。作品を上映する名古屋シネマテークの支配人、永吉さんに見どころを伺いました。
 

― 犯罪者である彼女の人生を淡々と振り返るような展開ですか?

永吉:フラットな描写で、どこにも行き場のない彼女の様子がずっと描かれていると感じました。全編モノクロの映像はどこか現実味が抑えられたような印象で、そのせいか客観的に見ることができるかもしれません。
 
― 彼女が生きた70年代のチェコが舞台ですね。

永吉:そうですが、あまり時代背景を感じないまま見られるんですよね。そういう意味では、先入観を持たず見られるので新鮮かもしれません。
 
- オルガを演じる女優さんの強いまなざしも印象的です。

永吉:全編を通じて彼女ににらまれているようにも感じられます。強い意志を感じさせるまなざしですね。
  

もし彼女を認めてあげる人がいたら

― どこにも救いがなく追い詰められたと感じて犯罪を起こす彼女ですが、その原因となる要素はいくつもあるようですね。

永吉:映画の中では主に彼女が育った家庭環境について描かれていて、そこでの孤立感が主な原因であるように見えました。精神科の病院に入院しますが、病気だったから生きづらさを感じるようになったのか、その逆なのかはわかりません。どちらかというと、追い詰められて精神的にも病んで…という印象を受けましたね。入院先でも異質な存在として扱われ、さらに孤立感を深めるのですが、学校生活がうまくいかなくなってしまう子どもたちと共通点があるようにも感じました。
 
― 彼女が感じる生きづらさには、LGBTであることも関係していたのでは?

永吉:映画の中には女性と恋愛関係になる場面も出てきます。当時は今よりずっとLGBTの人たちに対する理解がなかったでしょうから、生きづらさは感じていたのではないかと。彼女は自分を〝性的障害者〟と認識してしまっていたようです。
 
― 彼女に何があれば、こんな最期を迎えずに済んだと思いますか?

永吉:どこか一つのポイントで歯車が狂ったというケースとは違う気がしています。人の心を形作る要素はいろいろあるんだと感じますね。やはり、誰か一人でも彼女を認めてあげられる人がいれば結末は違ったんじゃないでしょうか。
  

『私、オルガ・ヘプナロヴァー』名古屋シネマテークにて、5月13日から上映予定。

『私、オルガ・ヘプナロヴァー』の予告編はこちら

配給:クレプスキュール フィルム

 

名古屋シネマテーク劇場情報

名古屋シネマテーク
1982年に設立された、名古屋・今池のミニシアター。邦・洋画を問わず、ロードショー公開から監督特集などの企画ものまでバラエティーに富んだラインナップで、シネコンでは出会えない良質の作品を多く上映する。

 

■『放課後アングラーライフ』

周りの大人もきちんと描かれる青春映画

© 2023 「放課後アングラーライフ」製作委員会

港町の女子高に転校してきた女子高生が、釣りを通して仲間と友情をはぐくむ様子を描いた『放課後アングラーライフ』。ライトノベルを対象とした新人文学賞、スニーカー大賞を受賞した原作が、多彩な作品を手掛ける監督によって年代を問わず感動できる青春映画として実写化されています。作品を上映するシネマスコーレの支配人、坪井さんに見どころを伺いました。
 
- 釣りと女子高生というちょっと珍しい組み合わせですね。

坪井:彼女たちがなんとなく集まる理由として釣りをしているわけではなく、かなり本気で釣りをする映画です。釣りの要素も伏線となって後々回収されますし、釣りと女子高生、友情や青春といったテーマが見事につながっていますよ。
 
- 高校生が主役のキラキラした作品でしょうか?

坪井:マンガ原作で恋愛が中心のいわゆる〝キラキラ映画〟とは違います。女子高生が主役ですが、同世代の男性との恋愛要素はありませんし、主人公たちの親や先生などの大人もちゃんと出てきます。周りの大人がいることで見えてくるものがありますし、主人公たちによって大人たちのドラマも動き出すという展開があって、それもこの映画の面白いところですね。
  

好きなものに出会い、仲間と共有する喜び

© 2023 「放課後アングラーライフ」製作委員会

- 主人公は転校する前の学校でいじめを受けていたという設定ですね。

坪井:転校した先でも「もう友だちは作らない」と心を閉ざしたり、またいじめられるのではと恐れたりする部分が描かれています。
 
- そんな主人公が再び心を開いて、仲間と通じ合えたのはなぜでしょう。釣りの同好会に誘うなど声をかけてくれる人がいたからでしょうか?

坪井:もちろんそれもあると思います。それに加えて、釣りに出会って面白いと感じた、好きなことを見つけたというのも大きいかもしれません。釣りを通して彼女が心を開く瞬間があるので。
 

© 2023 「放課後アングラーライフ」製作委員会

- そして、それを共有できる仲間がいたということですね。

坪井:そうですね。周りの大人の影響を受けて変わったところもあるかもしれません。
 
- 主演はアイドルの女性ですね。

坪井:あまり演技の経験がない方ですが、この作品を手掛けた城定秀夫監督はそういった女性の演出に慣れているので、映画の後半では彼女も演技が面白くなってきたような印象さえありますね。城定監督は幅広い作品を数多く手掛けていて、この作品も映画の中で起こる奇跡に驚くような一本に仕上げられています。ファンの方だけが楽しめるようなアイドル映画とは違う作品になっていますので、さまざまな方に見て頂けたらと思います。
 

『放課後アングラーライフ』はシネマスコーレにて、5月20日から6月2日まで上映予定。

『放課後アングラーライフ』の予告編はこちら

シネマスコーレ劇場情報

シネマスコーレ
映画監督の若松孝二氏が1983年に立ち上げた、名古屋駅西口にあるミニシアター。2023年に開館40周年を迎えた。アジア映画、日本映画、インディーズ作品などを中心とした多彩なプログラムに加えて、作品を盛り上げるイベントにも力を入れている。

 


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