【Kinjo Spirit】 看護学部看護学科 上杉 裕子 教授
この記事は、2022年度金城学院報with Dignity vol.40に掲載された記事です。
日本の保健医療を取り巻く環境が大きく変わろうとしているなか、
教育者として、また一人の研究者として、さまざまな課題に向き合い、
多分野の専門家と協働しながら解決策を探っている上杉裕子先生。
教育・研究活動の場も、地域から日本全国へ、そして世界へと広がっています。
しなやかに、力強く、自身の可能性の扉を開けていくその姿は
次代の看護を拓いていく学生たちの、よきロールモデルでもあります。
臨床の看護師から教育者の道へ。
仕事を持ち、自立した女性になる。
それが私の小さい頃からの目標でした。そのためには資格を持つこと。
そして、医学への興味があったことから看護師になろうと決意し、看護専門学校に入学しました。
卒業後は看護師として7年間病院に勤務し、内科、整形外科、オペ室を経験。病院では看護学校から来た実習生の指導をする機会もあり、「あれも教えたい、これも教えたい」という思いがあふれ、いつしか看護教育に興味を持つようになりました。
その後、信頼している先生から声をかけていただき、広島国際大学で実習指導者となり、教員への一歩を踏み出しました。
当時は看護系大学・大学院の増加に伴って教員数が不足していたこと、私自身、看護学の研究を深めたいという思いもあって大学院進学を決め、大阪大学に入学。6年間学業に専念して、修士号と博士号を取得しました。
大阪大学修了後は、神戸大学大学院保健学研究科で教員として16年間勤務。そして2022年4月、看護学部の新設に伴って本学に赴任。名古屋という新たな地で、新しいスタートを切りました。
看護の視点で整形外科患者さんのQOLを高める。
取り組んでいる研究は、「整形外科看護」と「国際看護」。
整形外科看護の研究を始めたきっかけは、整形外科病棟で人工股関節置換術を受けた患者さんと出会い、さまざまな課題に気づかされたこと。
例えば患者さんは手術をすれば症状が改善する一方で、脱臼の恐れがあるので正座が難しく、畳の生活が多い日本では不便な思いを強いられること。
リハビリテーションに取り組めず後ろ向きな患者さんもいました。
そんなことから整形外科患者さんの生活の質(QOL)に着目し、探求を続けています。
最近では、厚生労働省の「難病患者の支援体制に関する研究班」に看護師として参加し、「特発性大腿骨頭壊死症の医療水準及び患者QOL向上に資する大規模多施設研究」にも取り組んでいます。
一方、国際看護は前任の神戸大学がグローバル教育に力を入れており、所属していた医学部保健学科でもタイやインドネシア、ネパール、フィリピンなどの大学や研究所との共同研究を通じて国際保健研究活動を積極的に行っていました。
また、スペイン(バルセロナ)での国際会議、イギリス(リバプール)での病院見学、ニューヨークの国連訪問なども、研究者としての視野を広げる良い機会となりました。
国や地域によって医療格差や制度の違いはありますが、看護の本質は世界共通。世界のどの国に行っても、同じ看護師同士だからこそ分かり合えることがあり、すぐに仲良くなれる。
それが看護師という仕事の魅力です。
金城学院大学の国際交流を発展させたい。
来年度から私の担当する「グローバルヘルス看護学」が始まります。
グローバル化が進み、日本の在留外国人が増加する中で求められるのは、文化や宗教、生活習慣、ジェンダーなど、人々の健康と生活に深く関わる多様な文化をきちんと理解し、患者さん一人ひとりの気持ちや意思を尊重した支援ができるスキルを身につけること。
授業の中では、タイのチェンマイ大学とオンラインでつなぎ、タイの地域医療についての講義もしてもらう予定です。
コロナ後にはタイと日本の学生間交流も行い、グローバルな視野と、生きた語学力を養ってほしいと思っています。
4年間の学びで、国内はもとより、開発途上国や医療先進国でも活躍できる人材を育てたいと願っています。
上杉裕子先生の活動アルバム
私と堀口久子先生、二人がアドバイザーとして担当する学生たちと。彼女たちとは4年生まで継続して関わり、学修支援や困りごとの相談に乗ります。
タイ国チェンマイ大学の教員と食堂前のお庭で。前任の神戸大学医学部保健学科看護学専攻では4年生の学生と共に2週間の看護学実習を実施するなど、チェンマイ大学は最も頻繁に訪れた交流大学です。
大学院生と共にチェンマイで行われた「東アジア看護学研究者フォーラム」に参加。お揃いのシャツは交流しているチェンマイ大学教員からのサプライズプレゼント!
インドネシアのガジャ マダ大学でのセミナーではゲストスピーカーを務めました。
【教えて先生!My Favorite】
コーヒーが大好きで、その時間を楽しんでいます。特に美しいコーヒーカップを眺めるのが好きで、デパートの食器特選売場でカップをうっとり見ている女性がいたら、それは私です(笑)。
愛用のコーヒーカップたち(左からウェッジウッド、大倉陶園、ヘレンド)
■ 金城学院報 with Dignity vol.40 はこちら
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