日本を代表する美術館に密着!施設の裏側や、働く人の思いを伝える
工場見学やバックヤードツアーなどは、普段見られない場所を垣間見られるとして人気の企画。身近な施設や商品の背景を知ることができる、違った側面から理解を深められると、興味をそそられることでしょう。
古今東西の多様な美にふれられる文化施設、美術館の裏側はどうなっているのか、気になったことはありますか?
その疑問に一つの例として答えをくれる、日本を代表する美術館に密着したドキュメンタリー映画が公開されます。
『わたしたちの国立西洋美術館 奇跡のコレクションの舞台裏』
美術に疎い人も引き付けられる、驚きのコレクション
東京・上野公園内にあり、モネ、ルノワール、ゴッホといった世界的に著名な画家の名作を所有する国立西洋美術館。絵画、彫刻、版画、素描などおよそ6,000点の作品を所蔵し、東アジア最大級の西洋美術コレクションと言われています。
本館は世界的建築家ル・コルビュジエによる設計で、2016年には彼の作品の一つとして世界遺産に登録されました。所蔵する作品はもちろん建築作品としても貴重な美術館で、国内外から多くの来場者を集めています。
『わたしたちの国立西洋美術館 奇跡のコレクションの舞台裏』は、2020年10月から整備のために休館した際に撮影された、国立西洋美術館の本当の姿を伝えるドキュメンタリー映画です。
作品を上映するシネマスコーレの支配人・坪井さんに、映画の見どころや、映画という文化を届ける人の観点でお話を伺いました。
ー 海外の美術館を撮影したドキュメンタリー映画は過去にもありましたが、こちらの作品は、日本の国立西洋美術館に密着していますね。
坪井:そうですね、日本の美術館のドキュメンタリー映画はこれまであまりなかったと記憶しています。しかも、舞台は国立西洋美術館です。僕は美術にあまり詳しくないので、これほどすごいコレクションを所有する美術館が日本にあることも、この映画で初めて知りました。
ー 美術や美術館に詳しくない人でも楽しめそうですか?
坪井:もちろんです。そこがこの映画の素晴らしいところでもあります。それほど興味がなかったという人も思わず関心を抱くような内容になっていて、間違いなく美術館に行きたくなりますね。元々、美術に詳しいという人でもバックヤードまではなかなか見たことがないでしょうから、そういった人も満足できるはずです。
休館中の珍しい場面やスタッフの熱意も見どころ
ー 休館中の美術館ですから、普段とはずいぶん違う様子が見られそうです。
坪井:ロダンの非常に有名な彫刻「考える人」を移動させるシーンも見られます。これはなかなか見ることができない瞬間だと思いますよ。作品を運ぶ人たちの仕事ぶりとともに、そこにかける情熱まで伝わってきます。
一時的に作品を保管するような仕組みもよくできていて、こんな風になっているんだ!?と、僕にとっては驚きの連続でした。今後、美術館で作品を見たら、これはどうやって動かしたのかな、なんてことも考えてしまいそうです。まさに、美術館の見方が変わる映画ですね。
ー 美術館で働く人たちの姿もとらえているんですよね。
坪井:美術品のジャンル別や、企画、財政、修復など。さまざまな役割で美術館を支える人たちが登場します。前館長と現在の館長のインタビューがあって、二人の考えは少し異なるようにも見えますが、美術館に対する愛情や熱意は変わらないんですよね。これは他のスタッフにも言えることで、世界に誇る美術館を作ろう!という情熱を持って仕事に取り組んでいるのが感じられます。
ー 裏側を見せる映画ということで、撮影されるのも大変そうですが。
坪井:国立西洋美術館のみなさんは、撮影に非常に協力的に見えましたね。どうぞ撮ってくださいという姿勢で、映画というツールを使って自分たちの思いを伝えようとしているようにも感じました。
物理的なバックヤード以外の〝舞台裏〟にもふれる
ー 美術館が抱える問題についてもふれているそうですね。
坪井:そうですね。美術館の維持費が足りないことなども、わかりやすく伝えているのが、この映画の興味深いところです。国が文化施設をどう見ているのかといった点についてもふれていますよ。
物理的なバックヤードだけではなくて、そこで働く人の思いだったり、うまくいっていない問題点だったり、そこまで含めた〝舞台裏〟を見せているのは珍しい。このドキュメンタリー映画のよくできているところかと思います。
ー 美術館と映画館でジャンルは違いますが、文化を届ける仕事に携わる者として、坪井さんはこの映画をどうご覧になりましたか?
坪井:美術館や映画館など文化にふれられる施設は、いつも、いつまでも当たり前に存在するものではない。そう気づいてもらえたら…と思いました。国を代表する美術館とミニシアターではずいぶん違いますけれど、どこも維持していくのは楽ではなく、その中でなんとかしようとみんな努力しているし工夫もしている。それを知ってもらえたらうれしいです。
美術館も映画館も常連さんだけでは成り立ちません。多くの方に広く関心を持って、支えてもらえたらと思いますね。そういう気持ちになるドキュメンタリー映画です。
『わたしたちの国立西洋美術館 奇跡のコレクションの舞台裏』の予告編はこちら
シネマスコーレ劇場情報
シネマスコーレ
映画監督の若松孝二氏が1983年に立ち上げた、名古屋駅西口にあるミニシアター。2023年に開館40周年を迎えた。アジア映画、日本映画、インディーズ作品などを中心とした多彩なプログラムに加えて、作品を盛り上げるイベントにも力を入れている。
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