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星に願いを

梅雨明けまでまだもう少しかかりそうだが、今日は久しぶりに気持ちのいい天気だった。大学からの帰路、夕暮れの空を見上げながら、自宅への最寄り駅で電車を降りる。そのまま、駅から直結のショッピングモールに入る。

エントランスの大きな笹には、訪れた人が思い思いに願い事を書いて飾れるようになっている。

色とりどりの短冊を何気なく見ていると、
「第一志望の大学に合格できますように」
と控えめな文字で書かれた短冊が目に入った。

数年前の今ごろ、私も高校の帰りに制服姿でこの場所を訪れ、短冊に願い事を書いたことを思い出す。少し恥ずかしかったけれど、勇気を出して、自分の願いを精一杯書いた。この小さな文字にも、きっとこれを書いた人の気持ちが込められているだろう。私は、心の中で、その願いが叶うようにお祈りをした。

バッグから、スマートフォンを取り出し、今日、大学のゼミでみんなと一緒に撮った写真を開く。先生が用意してくれた笹は、ゼミのみんなの思いをのせた短冊でいっぱいになって、枝がたわんでいる。その前で、みんな本当にいい笑顔で写真に収まっている。

かつての私は、心細い気持ちを抱えながら、ここで一人願い事を書いた。でも、その願いが叶って、今はこんなに素晴らしい仲間と一緒に新しい願い事を書けるようになった。

ショッピングモールから出て、私はまた空を見上げる。
今日は七月七日。
このままいい天気が続いて、織姫と彦星が無事に出会えますように。
みんなの願いが叶いますように。

作:加藤大樹

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