「eスポーツ」は、将来性が無限大! 高校生の未来を変える可能性も無限大?!
最近、よく聞く「eスポーツ」。高校生を対象にした大会「全国高校eスポーツ選手権」が開催されていたり、eスポーツを学べる専門高校ができたり…。将来はオリンピックの正式種目に採用される可能性もあるんだとか。
でも、そもそも、eスポーツって何? 普通のゲームと何が違うの? 知らないことばかりのeスポーツについて、専門家に直撃! ゲームを楽しむだけではない、無限の可能性について教えてもらいました!
「eスポーツ」って、いったい何?
☆ネットの発展と共に普及してきたeスポーツ
記者:最近「eスポーツ」が話題になっていますが、ゲームがスポーツになるって、いったいどういうことなのでしょう?
後藤:eスポーツは、エレクトロニック・スポーツの略です。電子機器を用いて楽しむゲームを一般的なスポーツと同じように“競技”として捉え、一定のルールやスポーツマンシップにのっとって成績を競い合うものです。2000年ごろから各家庭にインターネット回線が普及し、PCユーザーを中心にネットを使ってゲームをするという文化が広がっていきました。その内にお互い離れた場所にいるユーザー同士でゲームを批評したり、一緒に作ったり、実況したり…ということが始まり、次第にeスポーツが発展していったといわれています。
記者:なるほど。ネットを使ったゲームの発展が、eスポーツの発展に直結しているんですね。
後藤:例えば野球もサッカーも、プレーするためにグラウンドに行く必要がありますし、相手チームがいないと成立しません。でも、eスポーツは、PCやゲーム機器とネット環境さえあれば、家から出ることなく世界中のプレーヤーと対戦することが可能です。これは、他の競技とは大きな違いですね。
常識をひっくり返す? eスポーツの現状とは
☆「ゲームばっかりやって…」とはもう言えない時代
記者:子どものころ、宿題そっちのけでゲームばかりしていて、よく怒られました…。ゲームと聞くと、ネガティブなイメージを持っている人も多そうです。
後藤:eスポーツは、プロスポーツの一つとして大きな可能性を持っています。海外ではeスポーツの大会に多くのスポンサーが集まって、多額の賞金が用意されることも増えました。中には賞金で1億円以上稼いでしまう人もいるんです。「プロのプレーヤーとして世界で活躍できる道がある」という点が注目されるようになって競技人口が増えました。
このような視点から見ると今の時代、プロ野球選手を目指して野球の練習をすることと、ゲームをすることは同じ、という見方もできるかもしれませんね。
記者:1億円以上…!確かに、それほどお金を稼げる可能性があるなら、目指したい人は増えそうですね。でも、プロになるのはやっぱり難しいんですよね?
後藤:確かにプロになれる人は一握りです。でも、プロにならなくてもeスポーツと関わったり、楽しんだりすることはできますよ。
☆デジタルの世界に、体格や性別・年齢は関係ない!
後藤:他のプロスポーツと同じように「お金を払ってプロの技術を観戦したい」という人も出てきました。また、eスポーツを医療や福祉、地域の課題解決に役立てようという動きも出始めています。例えば、秋田県では「マタギスナイパーズ」という、満60歳以上のメンバーだけで結成されたeスポーツチームが活動しています。「孫にも一目置かれる存在」をスローガンに、プロプレーヤーを目指して日夜ゲームに打ち込んでいるそうです。ゲームをプレーする際には手だけではなく頭も使います。ゲームをすることで思考力を鍛えたり、維持したりすることができるといわれています。地域の高齢者が独りきりになってしまうという問題も、ゲーム空間なら解消できます。夜、決められた時間にゲーム内で集合して、みんなで戦いにいくこともあるんだとか…。
記者:なんだか、楽しそうですね。オンラインで対戦するゲームだと、相手の顔が見えないから、まさか自分がおじいちゃんやおばあちゃんと同じフィールドで戦っているなんて想像もしないかもしれませんね。
後藤:体格差や性別、年齢が能力に大きな影響を受けることなく、上達したり活躍することができることは、eスポーツならではの特長ですね。他にも、身体を動かすゲームはリハビリなどの医療の現場で活用され始めています。eスポーツを運動やリハビリに取り入れることで、楽しみながら体を動かし、より積極的に向き合うことができるようになります。ゲーム内で目標をクリアするなど、成功体験を重ねることも、自信につながる要因ですね。eスポーツにはただ「ゲームを極める」だけではない、人々の暮らしを豊かにする側面もあるんです。
画面の向こうにいるプレーヤーとつながり、学ぶ
☆eスポーツを通して、社会の一員としての経験ができる
記者:eスポーツはゲームが好きな人達だけのものだと思っていましたが、そうではないんですね。
後藤:世界で5億人以上がプレーしているという人気オンラインゲーム「FORTNITE(フォートナイト)」など、世界中の人達、しかも老若男女と一緒にプレーできるゲームがたくさんあります。以前のゲームは相手がコンピュータ(CPU)で、プレーヤーが単独で進めていくタイトルがメインでした。しかし、他のプレーヤーと協力することが必要なゲームが増え、協調性を持って一定のルールを守りながらプレーすることが求められるようになってきました。
変な発言をしたり、マナーやルールに反したりすると、仲間から白い目で見られてしまう。「自分とコンピュータ」だけで成立しているのではなく、画面の向こうにいろんな人がいる、つまり世界中の人達と一つの社会を形成しているんです。今やゲームは、モラルやコミュニケーションなどの社会性を身につけるための場にもなったと言えるでしょう。それに、海外のプレーヤーとの会話をきっかけに「外国語を覚えた」という人もいるんですよ!
記者:ゲームを通じて普段は出会えないような人達と競い合ったり、協力したりするのは、いい経験になりそうです。
広がり続けるeスポーツの世界に挑戦しよう!
☆eスポーツの市場規模は世界で1,000億円!
記者:eスポーツは、自分がゲームをプレーするだけではなくて大会を観戦する楽しみ方があったり、医療、福祉などとかけあわせることができたりするなど、多様な可能性を持っていることが分かりました。
後藤:「グローバル eスポーツ&ライブストリーミング マーケットレポート2021(角川アスキー総合研究所)」では、2021年にはすでにeスポーツの世界市場規模が1,000億円を突破したとされています。しかも今後もビジネスとして大きな成長が期待されているんですよ。
記者:い、1,000億円ですか?高校生が社会に出るころには、もっとメジャーな産業になっているかもしれないですね。
後藤:eスポーツ市場は年々急スピードで拡大していますからね。一方で、成長が急すぎるせいか「人材がいない!」という声も聞こえてくるんです。特に、イベントや大会をまとめ上げる能力を持つ人材が求められています。プロのプレーヤーだけではなく、eスポーツ全体を盛りあげるためには様々な分野のプロフェッショナルな人材が必要です。
プロプレーヤーになれる人は他のプロスポーツ選手と同じでごく限られた人達のみですが、それ以外にもeスポーツに関わることはできます。例えば、大会を作り上げるプロデューサー、演出を考えるディレクター、プレーヤーを支えるマネージャーなど、様々な仕事があります。
さらに医療・福祉といった多様な分野での活用の広がりも期待されており、色々な分野と密接に関わりあうようになってきました。興味がある人にとっては、eスポーツが切り開いた新たなマーケットがどうやってお金を稼いでいるのか、そして自分がどうやって関わっていくのかを勉強することが、将来の選択肢を広げてくれますよ!
記者:5年後、10年後はどんな規模になっているか、想像したらワクワクしてきました!
後藤:ここまで様々なeスポーツの可能性を紹介しましたが、その他にも教育に取り入れることで学習効果を高めたり、地域のお祭りのように地域大会を開催したりといった活用事例も出てきています。
私が教えている国際情報学科では、アイデアを形にし、世界や地域社会の課題を創造的に解決する力を身につける授業を展開しています。eスポーツを課題解決の手段として捉え、その活用方法を考えることによって、市場拡大していくeスポーツの世界での活躍につなげることもできます。皆さんの自由な発想で新しいニーズや可能性を生み出してほしいですね。
取材日:2024年1月11日
編集者:鈴木
記者:広瀬
カメラマン:高木
☆国際情報学部 国際情報学科
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