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トロピカルジュース

「トロピカルジュースいかがですかー?」
「フルーツたっぷりで甘くておいしいですよ!」
久しぶりの大学のキャンパスは、学園祭の活気に満ちている。
「ねえ、トロピカルジュースだって。おいしそうじゃん。行ってみようよ」
友人にそう誘われ、元気な声のする白いテントに向かって一緒に歩いていく。

「ありがとうございましたー!」
後輩たちに手渡された透明なプラスチックのカップから、甘い香りがふわっと届く。私のカップにはオレンジ色のマンゴージュース、友人の手元には黄色いパイナップルジュースが収まっている。
広場の隅のベンチに二人並んで腰掛けて、ストローを吸う。甘酸っぱい味が口の中いっぱいに広がった。
「ああ、青春の味がするね」
友人の言葉に思わず吹き出しそうになる。
「何言ってるの、私たちも、つい何年か前にはああやってタピオカドリンクを一緒に売ってたじゃない」
「そうそう、懐かしいね。恥ずかしがり屋で全然人に声をかけられなかったのに、今ではこんなに立派な社会人になって。人は成長するものだよね」
「やめてよ。反対にそっちは昔から誰とでも仲良くなれる性格だったよね」

テントの前で大きな声を出してがんばっている学生たちに、学生時代の自分たちの姿を重ねる。引っ込み思案でなかなか友達のできない私は、学園祭に参加するのも憂鬱だった。そんな時に、一緒にやろうと声をかけてくれたのが、英語のクラスで隣の席に座っていた彼女だった。活発で社交的な彼女が、私に声をかけてくれたのが不思議だった。学園祭の当日は、彼女のがんばりもあって、私たちのタピオカドリンクは記録的な売り上げを達成した。あの学園祭をきっかけに、私にはかけがえのない親友ができた。

「何ニヤニヤしてるの?そんなにマンゴーおいしい?ねえ、ちょっとちょうだい」
「あげないよー!ほら、あっちにもおいしそうなものたくさんあるよ」
私は照れ隠しに立ち上がると、学生たちのエネルギーがあふれるキャンパスの中心に駆け出した。その少し後ろを、親友の足音が追いかけてきた。

作:加藤大樹


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