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イスラーム社会の多様性にふれて映画で世界が広がる体験を

海外旅行を楽しめない時期が続いたことで、世界の文化や暮らしへの興味や関心が高まっている人も多いかもしれません。
アジアや欧米などに比べると少し距離を感じてしまいがちなイスラーム社会の文化的な一端を知ることができて、身近に感じることにもつながる貴重な映画祭の情報をご紹介します。


■『イスラーム映画祭8』

イスラーム社会のリアルな姿を伝えたい

『イスラーム映画祭8』は、主に中東や北アフリカ、アジアに広がるイスラーム文化圏を舞台にした映画、またはムスリムを中心にそこに暮らす人々を描いた映画を集めた特集企画。

2015年から日本各地で開催されていて、今回で8回目を迎えます。
映画祭を開催するシネマテークの永吉さんに、楽しみ方や見どころを伺いました。
  

― この映画祭は個人で手掛けている企画だそうですね。

永吉:主宰者の藤本高之さんが立ち上げて、企画や上映権の交渉、資金の調達など一人で担当されています。バッグパッカーとして世界各地を旅した際にイスラーム文化圏にも多く訪れたそうで、9.11 をきっかけとして世界で始まったイスラームバッシングに疑問を感じたことが映画祭の立ち上げにつながったと聞いています。藤本さんが直に接したイスラーム社会を伝えたい、知ってほしいという思いがあったようです。
 
― 映画祭のラインナップの特徴について聞かせてください。

永吉:イスラーム社会の多様性を伝える作品が多く、私たちとはまったく異なる常識にびっくりさせられることも多いです。女性の権利が非常に低くてほとんど認められていない国があったり、個人より家族が優先されてそのために虐げられることがあったりします。
 

『キャラメル』

― 今回のラインナップについてはどうでしょうか?

永吉:イスラーム社会の中での分断や差別のようなものも見受けられると感じています。例えば、『キャラメル』というレバノンの映画では、ヘアサロンに集まる人のさまざまな人間模様が描かれています。不倫をしていたり、同性に恋していたりという人もいますが、彼女たちはイスラーム社会では受け入れられないマイノリティーです。そういった人たちが社会の中でどう振舞って暮らしているかを、あまり深刻にならずに描いているのが興味深いと感じました。
 
― イスラーム映画といっても中東だけではないんですよね?

永吉:そうなんです。中東のイメージが強いかもしれませんが、イスラーム文化圏は世界中に広がっていて、たとえばアジアでいうとインドネシアはムスリムの人口が非常に多いですよね。今回のラインナップにも、フランスや韓国を舞台にした作品が含まれています。日本から遠く離れた国のことというイメージがあるかもしれませんが、日本にもムスリムはいますし、作品からそれを感じて頂けるといいですね。

共感したりほっとしたりできる作品も

『キャプテン アブ・ラエド』

― 女性差別や紛争などイスラーム社会が抱える問題を取り上げた作品もありますが、少し気軽に見られるような作品を紹介してもらえますか?

永吉:『ガザをとぶ豚』はパレスチナ問題を風刺したコメディです。パレスチナを舞台にコメディ?と思われそうですが、しんどい場所だからこそむしろ笑いが重要な要素になるのかもしれません。
『午後の五時』は、第一次タリバン政権の崩壊後に20代のイランの女性監督が制作した作品。教育を受けて世の中を変えたい!と思っている女性が主人公で、とてもリアリティがあります。
『キャプテン アブ・ラエド』も掃除夫のおじさんがパイロットに間違えられるという、しみじみしたコメディ。少し物悲しい部分もありますが、やさしくて楽しいお話ですよ。

 ― 韓国を舞台にした『わたしはバンドゥビ』も若々しい印象です。

永吉:バングラデシュからの移民労働者である青年が差別的な扱いを受けていて、韓国の女子高生がそれに巻き込まれる展開です。韓国社会での若い世代の孤立も同時に描いているのですが、主人公が高校生ということもあってはじけた青春ドラマになっていますね。
 
― 重くて難しい作品ばかりではないんですね。

永吉:イスラーム社会の難しい部分を描いた作品もありますが、ちょっとほっとするよう作品も含まれています。世界のどこにでも同じような暮らしがあることを感じとってもらえたらいいですね。
  

作品をより深く楽しめる解説付き

『わたしはバンドゥビ』

― 各作品に解説が付くそうですね。

永吉:前説が付く作品と、上映後ミニ解説が付く作品があります。前説は「これを知っておくとわかりやすい」「こんな風に見てもらうといい」という10分程度のアドバイスです。上映後ミニ解説はもう少し長くて「あれは実はこういうことだったんですよ」とお伝えして理解を深めてもらえる内容ですね。映画祭の期間中ずっと主宰者の藤本さんが来場されていて、劇場で解説をしてくださいます。
 
― 多様な作品や解説を通して、イスラーム社会への理解を深められる機会になりそうですね。

永吉:入手しづらく、映画祭でしか見られない作品も多いと思います。映画祭は1週間で、各作品1回ずつしか上映がありませんので、公式サイトから気になる作品の上映日時を確かめておいてもらうとよいですね。見ることでぐっと世界が広がる実感が強い作品ばかりですので、どうぞお見逃しなく。
 

『イスラーム映画祭8』名古屋シネマテークにて、3月25日から31日まで開催。

映画祭の情報はこちらから。

 

名古屋シネマテーク劇場情報

名古屋シネマテーク
1982年に設立された、名古屋・今池のミニシアター。邦・洋画を問わず、ロードショー公開から監督特集などの企画ものまでバラエティーに富んだラインナップで、シネコンでは出会えない良質の作品を多く上映する。

 


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