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高校生から知っておきたい、プロから楽しく学ぶ「お金」の話

高校生になり、自分でお金を使う機会が多くなったのではないでしょうか。さらに大学生になると、アルバイト代など使えるお金が増えるはず。ここで重要になるのが、成人年齢が18歳になったこと。「貯める」ことだけでなく、「借りる」や「増やす」といったお金との関わり方も出てきます。
また、2022年4月から、高校の家庭科の授業で「ライフプラン」「資産形成」「投資、運用」など金融について学びがスタート。これは、日本でのお金に対する教育が外国と比較して遅れていること、高校生のうちからお金について知識を得ておくと人生設計や夢の実現に役立つなどの理由から始まったものです。
そこで今回は、家庭科の内容から一歩踏み込んで、高校でも高大接続授業をしているお金のプロから、楽しく!詳しく! 18歳になる前に知っておくといい「お金のこと」について聞いていきます!


生活環境学部 生活マネジメント学科 古寺浩教授

目次


18歳になると、何ができるようになる?

☆できることは増えるが、責任も伴うので注意を

記者:先生はお金のプロとして、大学生や高校生向けにお金に関わる授業をされていますが、今日は楽しく、18歳になる前に高校生が知っておくべき「お金」のことについて教えてください。

古寺:18歳で成人になると、これまで未成年ではできなかった様々なことができるようになります。例えば、審査や特定の条件をクリアする必要がある場合もありますが、クレジットカードを作るローンを組む携帯電話の契約をする、といったことが挙げられます。お金との関わり方が一気に変わるんですよね。これは権利でもありますが、同時に責任が伴うこともあるので、ぜひ高校生の内に、お金について、もっと知っておいてほしいと思っています。

記者:大学生になったら、アルバイトをして稼げるようになるし、サークル活動や友達との旅行、留学など、お金を貯めて使う、ということも増えます。自由が広がる分、気をつけることもありそうですね。

古寺:お金についての知識があると、普段の生活にもプラスになりますし、将来のためにも役立ちます。だからこそ、高校生のときに、知っておいてほしいことを、「借りる」や「増やす」といった成人だからこそできる新しい内容を含め、プロとしてお伝えしたいと思います。


18歳から始められる、お金との新しい関わり方

☆「貯める」のではなく「増やす」という選択肢

古寺:これまでは、使わないお金は銀行への預金など“貯める”ことが中心でした。しかし18歳になると、「増やす」という選択肢が出てきます。使わないお金に“働いてもらう”という考え方で、これはとても大きな違いです。
 
記者:お金に“働いてもらう”ですか。稼ぐという意味では、アルバイト代をもらうことが普通だと思いますが、使わないお金を「増やす」ことができるなら、それはとてもいいですね。
 
古寺:少し話は大きいですが、あなたがある銀行に預金して、金利が0.002%だとします。1年間、1億円を預けても、1年でわずか2,000円しか金利でプラスになりません!
 
記者:えぇっーー! 1億円預けて、たったの2,000円ですか!? 銀行にお金を預ける意味っていったい…。

古寺:だからこそ知ってほしいのが、「増やす」ことです。一つの選択肢としてあるのが、企業が発行している株の購入です。例えば1年後に得られる金額(配当利回り)が4%の株を1億円分購入すると、1年後には400万円分の配当金がもらえるんです。
 
記者:それはすごい!そんなに違うんですね。でも、株は上がることもあれば下がることもあると思うので、どの企業の株がいいのか、選ぶのは難しそうです。
 
古寺:その通りです。株はリスクが大きいものです。そこで、投資のプロが分散して株や債券を組み合わせて買ってくれる投資信託という金融商品があります。いくつかの会社の株や債券などを組み合わせて買うためリスクが分散されて下がりますし、プロに任せられるから安心感がありますよね。さらに2024年からは新しいNISAも始まります。NISAとは簡単に説明すると、少額から投資を行える税金がかからない制度です。これは、通常であれば利益から一定の税金が引かれるところ、引かれない枠があるので、国も推奨しています。お金は「預ける」だけではなく「増やす」という選択肢があることを、ぜひ覚えておいてください。


クレジットカードは、お金がなくても「使える」魔法!?

☆電子マネーとは、まったく違うシステム

記者:次は、お金を“使う”ことについてお聞きします。交通系ICや、電子マネーなど、キャッシュレス決済が一般的になってきました。
 
古寺:「電子マネー」は「現金をデータ化して、決済をすること」で、Suicaやmanacaといった交通機関が発行しているものや、WAONやnanacoなどいった、お店が発行しているものが代表的でしょうか。通学定期と電子マネーのカードが一つになるなど、高校生でも身近になっていますよね。ただ、これらとクレジットカードとは、決定的な違いがあります。
 
記者: 18歳になるとクレジットカードが作れますが、高校生が気をつけることはありますか?
 
古寺:先ほど紹介した電子マネーは「先払い」ですが、クレジットカードは「後払い」。これが大きな違いです。預けた(チャージした)お金から使う電子マネーに対して、クレジットカードは、預けてもいないお金なのに、使うことができます。とても便利ですが、これは「借金」である、ということを意識してほしいですね。
 
記者:「借金」ですか!手持ちのお金がないときに便利だからといって、気軽に使っていると、返済できない、ということが起こりますね…。
 
古寺:クレジットカードは、審査や特定の条件をクリアする必要がありますが、高校を卒業すると持つことができるようになりました。いま欲しいものを、その場で購入できますし、ネット決済などの際はとても便利ですよね。怖いからといって敬遠するのではなく、きちんと知ることで自分に合った使い方をする、という付き合い方をしてほしいと思います。もちろん、魔法とか、打ち出の小づちではありませんので、注意はしてくださいね!


「借りる」のが簡単な時代。注目は、返す金額!

☆借りた額よりも多く返す。金利を忘れていませんか?

古寺:クレジットカードは借金であると話しましたが、高校生にとって身近なものだと、奨学金がありますね。月に10万円ずつ4年間で合計480万円借りたとして、実際に返すお金が530万円になったとする。その差の50万円が金利です。もちろん、奨学金を利用することによって大学などで学ぶことができるので、メリットはあります。奨学金は例えとして、お金を借りる際には「金利で生まれる差額分を払ってまで、このタイミングで契約や購入をする価値があるか?」ということを考えてほしいと思います。

記者:借りた金額と、返す金額の差を払うだけのメリットがあるか、ということですか。たしかに借りる金額の方に目が行きがちですね。
 
古寺:それともう一つ、月々の返済額に目が奪われることもあるんです。月々の返済金額が低い一方で、返済期間が長いものがあります。大学生からよく聞くのは、エステや美容整形などで、そのような契約が多いようです。ただ、返済期間が長ければ、それだけ金利がかかる期間も増えるので、返済する総額は増えてしまいます。ここでも、最終的にトータルで返済する金額に、きちんと注意してほしいと思います。
 
記者:18歳になると選択肢が増えて、同時に考えるべきことも増えますね。高校生の内に、お金のことについて知っておくことの意味が分かったように思います。
 
古寺:20歳が成人年齢の時代は、大学生になってお金にふれる機会が多くなってから、いろいろな選択肢が生まれていました。しかし今は高校卒業前から、お金を使ってできることが増えます。だからこそ、お金について早めに学ぶことが大切だと、少しでも高校生に知ってもらえたら嬉しく思います。私は大学の教員ですが、ファイナンシャルプランナーというお金の専門家でもあります。これはお金についてのアドバイスを行える資格で、自分のためにも、周囲のためにも役立つ知識が得られますよ。資格取得以外にも、例えば私が教えている生活マネジメント学科では、お金について、もっと深く学ぶことができます。興味があれば、専門的に学んでみてはいかがでしょうか。

取材日:2023年10月4日
編集者:鈴木
記者:武富
カメラマン:高木


☆生活環境学部 生活マネジメント学科

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