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参考にできて、モヤモヤも晴れる!「はじめる時に読みたい本」

新しい年を迎えて何か新しいことに取り組んでみようと考えている人、新年度から新しい生活を始める予定の人もいますよね。

新たな出会いに期待がふくらむ一方、未知の世界に不安を感じることもあるはず。そんなとき、一冊の本が参考になったり、気持ちを支えてくれたりすることがあるかもしれませんよ。

「はじめる時に読みたい本」としておすすめの2冊を、三重県伊勢市にある書店「散策舎」代表の加藤優さんにセレクトして頂きました。

■ 『増補 本屋になりたい この島の本を売る』

 沖縄の市場で古本屋をはじめた女性の奮闘

東京の大手新刊書店勤務を経て、沖縄の市場で古本屋を開いた女性が、店主として奮闘する日々を綴ったエッセイ。

若い人や初心者向けのちくまプリマー新書で発行された元本から7年を経て、大幅に加筆して発行された文庫版です。

開業の経緯から本の仕入れや販売といった運営、沖縄ならではの流通事情、本と人、書店のあり方を見つめ直す店主の思いにもふれることができます。
 

― まさに〝はじめた〟女性の経緯や思いが綴られていますね。

加藤:著者の宇田さんは転勤先の沖縄で開業していて、その土地に根差した生活をはじめることと、そこで働き続けることのある種の美しさが詰まった一冊だと感じています。私も書店を始める前に新書を読んで参考にさせてもらいました。

― 書店の立地が沖縄の市場というのも特徴がありますね。

加藤:沖縄の出版社が発行する県産本が多く、県内でしか流通しない本も結構あるようです。地元の人だけでなく観光客も訪れる市場なので、自分たちのことを知っておきたいという地元の人と、沖縄のことをもっと知りたいという観光客のニーズに応えつつ、沖縄のことを伝えたいという思いも込められているのではないでしょうか。

― 加藤さんの書店「散策舎」も伊勢神宮外宮の近くにありますよね?

加藤:お客様は地元の人と観光の方が半々くらい。意外と知らなかった地元のことを知りたいという声もありますし、伊勢神宮や日本の文化に興味があって来店する観光の方が多いので、神宮や三重に関する書籍の棚を設けています。

 コロナ禍を超えて、本を届ける意味を見つめ直す

― 書店に限らず、〝はじめる〟という観点から参考になる部分はありますか?

加藤:本書を読む限りでは、宇田さんには商売をするぞ!という気負いのようなものはあまりなく、〝ここならできそう〟〝このやり方なら自分もできるのでは〟と、少しずつ積み重ねて自信を深めていったような印象がありますね。

― 追記された部分も読みごたえがありますね。

加藤:コロナ禍にそれを乗り越えていく話なので、〝はじめる〟から〝続ける〟へと移っていき、お店を整えたり、新しいことに取り組んでみたりというエピソードが含まれています。お客さんに本を届けていくことの意味をあらためて見つめ直し、知ることができたという感じもありますね。

書籍データ:『増補 本屋になりたい この島の本を売る』

『増補 本屋になりたい この島の本を売る』
著:宇田 智子、絵:高野 文子
発行:筑摩書房

■『コジコジにきいてみた。モヤモヤ問答集』

 想像の上をゆく奇想天外なコジコジの言葉

さくらももこさんの代表作『コジコジ』

メルヘンの国を舞台に主人公のコジコジが繰り広げる日常生活を描いています。
本書は、「勉強しないとダメですか?」「カッコよくなりたい」など100の問いにコジコジが答える形をとったメッセージブック。

コミックの中から抜き出された言葉に思わず脱力したり、笑顔になったりする一冊です。

― ちびまる子ちゃんと並ぶ、さくらさんの代表作。コジコジの魅力とは何でしょうか?

加藤:小説やマンガの作者は〝キャラクターが勝手に動き出して…〟とよく言いますが、コジコジはまさにそんな印象です。勝手に動き出して、このとんでもなさが生まれたんじゃないかと感じさせる個性がありますね。

― 〝はじめる時〟にこの本を読むと?

加藤:私もそうですが、はじめる時っていろいろと悩みますよね。それで、何か理由をつけて先延ばししてみたり、モヤモヤしてしまったり。悩むのも大事なことですが、あまり煮詰まってしまっても先に進まない。そういう気分をリセットするのに効くんじゃないかと思います。
 

 気軽に開いてどこからでも読める

― 一問一答ですっきりした構成ですね。

加藤:問いの下にすぐコジコジの言葉が来る形になっている、この編集もすごいです。質問とコミックの言葉の掛け合わせがうまくできていますね。

― 悩み別にジャンル分けなどもされていないのですね。

加藤:ですので、どこからでも読めます。モヤモヤしたなぁと感じたら気軽に手に取って、ぱっと開いたところを読むのがいいんじゃないでしょうか。
 

書籍データ:『コジコジにきいてみた。モヤモヤ問答集』

『コジコジにきいてみた。モヤモヤ問答集』
文・絵:さくらももこ
発行:ブルーシープ

三重県伊勢市の書店「散策舎」の情報はこちら

散策舎
伊勢神宮 外宮前の古いビルにある、小さな新刊書店。深い蒼緑で彩られた空間に「心・食・旅」のテーマに沿って選んだ3000冊の本が揃う。散策するように、日々を確かに歩むための心と身体の糧となる本との出会いを楽しむことができる。



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