教えて先生!なかなか人に聞けない「生理あるある」をぶっちゃけトーク
女性に月に1回おとずれる「生理」。生理痛や気分の浮き沈み、食欲の増加など、何度経験しても慣れない生理に悩んでいる人も多いのではないでしょうか。
今回はそんな「生理あるある」を、看護学部 看護学科 藏本直子准教授とぶっちゃけトーク!生理痛の原因をはじめ、気になるにおいやかぶれなどの体についての悩み、イライラやモヤモヤなどの心の悩み、生理との付き合い方など、生理に関するアレコレを本音で語り合いました。
本音トーク!生理中のカラダの悩み
☆生理痛三銃士(腹痛、腰痛、頭痛)に勝ちたい!
記者:まずはPMS(月経前症候群)について相談させていただきたいです。生理前になると、頭痛や腹痛、腰の痛さに悩まされることが多くて…。
藏本: PMSの原因の一つが女性ホルモンのバランスの変化です。女性ホルモンというのは、卵巣から分泌される「プロゲステロン」と「エストロゲン」のこと。体温を上昇させたり子宮内膜の状態を安定させたりと妊娠の準備をするホルモンで、排卵後に女性ホルモンの分泌量が徐々に減っていくことで子宮内膜がはがれ、生理がおとずれるのです。
記者:確かに、生理について調べると女性ホルモンという言葉をよく耳にするかも。生理痛にはこの仕組みが関係しているということでしょうか?
藏本:そうですね。身体の症状としては、女性ホルモンの変動によって胸に張りや痛みが生じたり、おなかが張ったり、腰痛になったりすることがあります。また、月経前のエストロゲンの低下によって、血管の収縮が生じて頭痛の原因にもなることもあります。
記者:女性ホルモンの分泌量が、生理前の身体の症状に関係していたとは驚きです。
藏本:分泌量は人によって違うため、便秘や手足のむくみ、肌荒れなど、症状がどこに表れるかは人それぞれといえるでしょう。また、ストレスの影響で女性ホルモンの分泌量が変化することもありますね。
記者:それでは、生理中の腹痛、いわゆる生理痛を緩和するためにおすすめの方法はありますか?
藏本:体や腰、足先を温めると良いでしょう。体が冷えると骨盤内の血流が悪くなり、子宮がギュッと収縮してしまうため、生理痛がひどくなってしまいます。腹巻きやレッグウォーマーを使ったり、入浴の習慣をつけて体を温めたりするように心がけましょう。また、マッサージやストレッチで血の巡りを良くするのもおすすめですよ。
記者:体を温めると生理痛が和らぐ感覚があるかもしれません。
藏本:体を内側から温めるためにホットドリンクや生姜ドリンクなどを飲むのも良いですね。アイスクリームや冷たいスイーツは体を冷やしてしまうため、生理の時は食べ過ぎないようにするといいでしょう。
☆デリケートゾーンのムズムズやにおい、なんとかして~!
記者:ぶっちゃけると、生理中にはデリケートゾーンのにおいやかゆみが気になることもあります…。
藏本:その気持ち、分かります。生理中は常にナプキンを当てているため、デリケートゾーンがナプキンと擦れてかぶれてしまったり、その影響でかゆみやにおいが発生してしまったりというのはありますよね。
記者:解消するのにいい方法はありますか?
藏本:ナプキンをこまめに換えるようにしたり、トイレの温水洗浄便座の洗浄機能を使うのも清潔に保つ方法といえますね。
記者:トイレって意識しないとあまり行かないので、こまめに行くよう気をつけます!他にもなにか方法はありますか?
藏本:ナプキンの素材に注目してみるのも良いですよ。ナプキンはポリエステル製のものが多いですが、コットン素材のものにすれば、通気性が良くなって蒸れにくくなります。また、かぶれやすい人は布ナプキンを使うのも一つ。デザインだけじゃなく、通気性を意識して、ショーツを綿素材にするのも良いですね。
記者:これまで、ナプキンは大きくて安いものを選んでいました。素材にも目を向けてみます!
藏本:デリケートな場所なので、刺激を少なくしてあげることが一番のケアになります。ナプキンの素材もそうですが、お風呂でデリケートゾーンを洗う時もあまりゴシゴシこすらず優しく洗うようにしましょう。
正直、イライラする…生理と心のバランス
☆そのモヤモヤ・イライラは生理のせいかも?
記者:生理前はなぜかイライラしてしまって…。普段は気にならないことにもムカッとしてしまいます。
藏本:生理前に心のバランスが崩れてしまうのは仕方がないこと。イライラしたり気分が沈んでしまうのも、女性ホルモンや脳内のホルモンの変動が原因なのです。
記者:女性ホルモンの影響はかなり大きいんですね。
藏本:精神的に不安定になってしまうのもPMSの症状の一つといえるでしょう。また、日常生活に支障をきたすほど心の不調が著しい場合はPMDD(月経前不快気分障害)の可能性も考えられます。
記者:そのような病名は初耳です。具体的にはどのような症状なのでしょうか?
藏本:PMDDの場合は、生理の1週間前あたりから怒りっぽくなったり、ひどく気分が落ち込んだり、涙もろくなったりなどが、一般の女性より強く出てしまいます。中にはさらに心の不安定さが強くなり社会生活に影響する人もいるのです。
記者:それは、日常生活にも影響しそうですね。
藏本:PMSでは集中力が途切れやすくなったり、強い眠気を感じてしまうこともあるため、高校生だと授業や勉強の邪魔になってしまうことも考えられますね。PMSは多くの女性に起こりますので、無理せず休息をとるようにしましょう。
☆頑張り屋な心はセルフケアでなぐさめて
記者:生理中は周りの人にきつく当たってしまい、後悔してしまうことも…。他人を傷つけないよう、ホルモンバランスの乱れと上手に付き合いたいです。
藏本:まずは「自分が今精神的に不安定なのは生理前だから」だと自覚することが大切です。生理現象だから仕方がないと考えるようにして、あまり自分を責めすぎないようにしましょう。
記者:イライラの理由が分かるだけでも安心しますね。セルフケアで対処できることはあるのでしょうか?
藏本:ストレスはPMSの症状を悪化させる原因になるため、まずはストレスをためないことが大切。好きな映画やドラマを見たり、音楽を聴いたり、友人に相談したりなど、自分にとってのストレス解消法を見つけると良いでしょう。また、規則正しい生活も症状の緩和につながります。十分な睡眠をとり、バランスの良い食事を心がけると良いですね。
記者:健康的な生活を送るのが良いのですね。他人とのコミュニケーション面ではなにか対策はありますか?
藏本:周りの人にあらかじめPMSや生理痛の症状を伝えておきましょう。「自分は生理になるとこんなことがつらいんだ」と気持ちを話しておくだけでも、症状が出た時の相手の反応は違うものになります。
記者:PMSや生理痛のことをお互い知らない状態だと、トラブルの原因にもなりそうですよね。事前に伝える際は、症状についてどのくらい具体的に話しておくと良いでしょうか。
藏本:なるべく具体的に伝えられると良いですね。生理周期を把握していれば、「この日はPMSや生理痛になるかもしれないから気をつけて」と周囲の人に予告することができます。日記などで生理前や生理中の症状を詳細に書いておくと、自分がいつ、どのような症状が出るのか把握できておすすめです。
☆切り出しにくい生理の相談、どうやって話す?
記者:他の人に生理の話を切り出すのはなかなか勇気がいります…。
藏本:そうですよね。勇気がいるかもしれませんが、普段から生理についてオープンに話しておくのが良いと思います。PMSや生理痛は体に痛みを伴う不調。家族や友人、恋人など身近な人から生理について理解を得られていれば、例えば生理用ナプキンを買ってきてもらうことや、つらい時にそばにいてもらうなど、あなたの助けになってくれるかもしれません。
記者:生理の話題は少しデリケートに扱われることが多いですが、話すのが当たり前だという感覚でいることが大切なんですね。
藏本:そうですね。普段から生理について周囲の人に話し、生理前の不調や症状について知ってもらうと安心できますよね。
記者:確かに、知っておいてもらえるだけでも、気持ちがラクになります。
藏本:PMSや生理痛の症状が重かったり異変を感じた場合は、産婦人科の受診もおすすめです。理由が分かる他、生理痛を緩和してくれる低用量ピルなどを処方してくれる場合もあります。高校生だと産婦人科に行きにくさを感じる子もいるかも知れませんが、専門家からちゃんとしたアドバイスをもらえるため、少しでも悩みがあれば気軽に相談してみてくださいね。
記者: SNSやインターネットで情報を集めるのはどうなのでしょうか?
藏本:SNSやインターネットだと、正しいかどうか曖昧な情報もあります。情報をうのみにしてしまうと後で自分がつらい思いをしてしまうことも考えられるため、本当にその情報が正しいのかを見極めることが大切です。もしインターネットで情報を探すなら、アドレスの最後に「go.jp」や「ac.jp」などがついた、個人のサイトではないものを見るようにすると良いでしょう。ですがやはり専門家に聞くことが一番正しい情報を得る方法だと思うので、まずは産婦人科で相談するのをおすすめします。
生理でも明るくステキな自分でいたい!
☆「知らぬ間に生理」にバイバイ!
藏本:生理周期を把握しておくと、PMSや生理痛の対策になることを伝えましたが、これは「知らない間に生理が来た」というトラブルの回避にもつながるといえます。自分の生理は大体どのような周期なのかを知るには、3カ月ほど記録をつけると良いでしょう。
記者:目に見える形で残すことで、対策がしやすくなるのですね!
藏本:生理周期の乱れも見つけやすくなり、生活習慣や自分の環境を見直したり、対策をとることができます。
記者:生理周期を知っておくのは大切ですよね。急に生理が来ると服やショーツが汚れたり、生理用ナプキンが足りなかったりというトラブルもありますし。恥ずかしながら、急きょトイレットペーパーで代用することもありました…。
藏本:正直なところ、トイレットペーパーでの代用はあまり良くありませんね。水に溶けやすいですし、吸収力も少ないため、下着が汚れてしまったり、デリケートゾーンが肌荒れしやすくなったりします。
記者:そうですよね…。
藏本:トイレットペーパーは応急処置としての使用にとどめておきましょう。いつ生理が来ても対応できるよう、普段から常に一つはナプキンを持ち歩いておいたり、手元になければ友人や保健室でナプキンをもらうと良いです。
☆生理中に大食いモードが発動!対策はある?
記者:生理前や生理中はとにかく食欲が増えます。つい食べ過ぎてしまい、後から反省することが今までにも何度か…。
藏本:食べ過ぎも良くありませんが、ダイエットのし過ぎも危険です。極端に体型が変化してしまうと、生理が長期的に来なくなってしまうことも。無理のない程度に食習慣を整えると良いですね。
記者:おすすめの食材や栄養素などはありますか?
藏本:PMSの緩和には、イライラを沈めてくれるカルシウムがおすすめです。また、幸せホルモンといわれる「セロトニン」を増やす作用のあるビタミンB6を含む食材も良いでしょう。例えばトウモロコシやレバー、トマト、ナッツ類などですね。
記者:生理が近づくと甘いものや炭水化物が摂りたくなるのですが、これらはあまり摂らない方が良いのでしょうか。
藏本:摂り過ぎは良くないですね。糖分を一気に摂取すると、血糖値が急上昇してしまいます。体で分解しきれなかった糖はインスリンという成分によって脂肪に変わり、太る原因となってしまいます。糖分を摂るなら、野菜や果物、チーズなど血糖値を急に上げないものから食べたり、食事の量を小分けにし、回数を増やすなどの方法がおすすめです。
記者:なるべく一気に食べ過ぎないよう気をつけようと思います。
☆これからの私達と生理との付き合い方は?
記者:今回はありがとうございます!普段は話しにくい生理の悩みについて聞けてとても嬉しかったです。
藏本:そうですよね。生理のたびに学校や会社を休むと、勉強についていけなくなることへの不安や、会社でも生理休暇をとることが難しい場合も。ですが、女性の社会進出が進んでいる中で生理自体も変化しているため、何か対策をとる必要があるのです。
記者:昔と現代で生理が違うということですか?
藏本:そうなんです。実は現代の女性の一生における月経の回数は、昔よりも増えていると言われているのです。
記者:そんなに増えているんですか!それはなぜなのでしょう?
藏本:昔は結婚年齢が早いため妊娠・出産をする確率が高く、妊娠の頻度も多かったため生理と付き合う期間が少なかったのです。また現代は初潮年齢も早まっており、80年前の平均年齢がおよそ14歳だったのに対し、今は平均年齢が11~12歳くらいと早くなってきているのです。
記者:生理と付き合う期間が昔より長くなっていたとは驚きです。
藏本:生理と付き合う期間が増えたことで、子宮内膜症などの病気やトラブルの発生率も高くなったといえますね。学生時代はまだ体が未成熟であるため、生理不順やトラブルが発生しやすい時期。過度なダイエットなどで無理をせず、規則正しい生活習慣で体の基礎作りをするようにしましょう。
生理は妊娠・出産など、命を育む体作りのための重要な生理現象。友人や家族、恋人にしっかりと話して、無理のないよう付き合っていくことが大切です。また、私達のような専門家に相談することも生理との付き合い方を知る上で正確な情報を手に入れるための良い手段ですよ。
記者:確かに専門家に相談すると、ちゃんとした情報をもらえるだけではなく、自分の悩みに寄り添って対応してくれるため、不安が和らぐ気がします。
藏本:看護師という仕事は病気の看護の他にも、患者の心のケアもするまでが仕事です。誰かの悩みに寄り添い、助けたいという思いから看護学を学ぶ学生も多いですね。特に女性は特有の体の悩みを持つことが多いため、誰かの役に立ちたいという思いがある方は看護学を学んでみるのも面白いですよ。
取材日:2023年3月6日
編集者:鈴木
記者:柳瀬
カメラマン:高木
☆看護学部 看護学科 HP
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