#9 自分もいずれなるかも??認知症って、どんな病気?その1
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みなさんは認知症というとどんなイメージを持っていますか?
「ご飯を食べたのに、忘れてしまう」
「出かけたら、帰り道がわからなくなって戻ってこられなくなる」
といった記憶の障害があるというイメージをお持ちの方も多いかもしれません。
しかし、記憶の障害が目立たない認知症もあることをご存知でしょうか。
認知症の原因となる疾患としては、アルツハイマー病、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症などがあり、それぞれの疾患によって現れる症状も違ってきます。
今回以降のコラムでは、認知症について詳しく解説していきます。
認知症の原因として真っ先に思い浮かぶのは「アルツハイマー病」だと思います。
本コラムの最初にあげた症状はアルツハイマー病によくみられる状態です。
アルツハイマー病に罹患すると、徐々に脳の一部が萎縮していきます。
その中でも記憶に関わる部分(海馬)や空間認知に関わる部分(頭頂―側頭連合野)が障害されやすいとされており、そのために記憶障害や帰り道がわからなくなるといった症状が出ます。
まず、見当識と言われる「今はいつ、ここはどこ、(私は)だれ」といった部分の記憶障害が目立ちます。
特に時間の見当識と言われる「今はいつか?(例:今日の日付を言う)」は初期から障害されます。
また、エピソード記憶と言われる自分が行った(行動した)ことや言ったことを忘れてしまうことが多いとされます。
これが「ご飯を食べたのに、忘れてしまう」につながっています。
さらに、空間認知が障害されてくるので、立方体(サイコロ)の模写をしてもらったときに、歪んだ模写になったり奥行きが描けなかったりします。
このことが、帰り道を忘れてしまって、自分がどこにいるのかわからなくなり、徘徊するといった症状にもつながっていきます。
症状が進むと、検査場面で、目を閉じてもらい、入ってきた部屋の入口を指し示してもらおうとしてもできなくなったりします。
ここまで説明してくると、物忘れはアルツハイマー病の兆候なのかと心配になる方もいるかもしれません。
物忘れは誰にでもありうることで、良性の物忘れは”指摘されたときに思い出せる”というものです。
例えば、「ご飯食べたかな?」と思ったときに、家人から「ご飯にピラフを食べたでしょ」と言われて、「ああ、そうだった、海老が入っていたな」と思い出せるようであれば良性の物忘れであることが多いとされています。
一方で、ご飯を食べたことそのものを忘れてしまっていて、思い出そうとしても思い出せない場合は注意が必要かもしれません。
なお、心配な場合は、自己判断はせず、精神科や心療内科など専門医を必ず受診しましょう。
次回以降のコラムでは、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症などについて解説していきます。
渡辺恭子:老年期の心理査定と心理支援に関する研究.風間書房,2020
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