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当事者として政治や選挙を考えたくなるドキュメンタリー映画

日本各地で時折行われている地方選挙や、国政選挙。ニュースで見かけることはあっても、自分に関係のある出来事としてとらえている人は少ないかもしれません。
もしかして、自分が住んでいる自治体の選挙にも無関心という人はいませんか?

女性候補者が現職を破って当選した東京都の区長選挙を追ったドキュメンタリー映画を通して、日々の暮らしや未来に大きく関わるものとして選挙を考えてみませんか。
 


■『映画 ◯月◯日、区長になる女。』

区長選に立候補した女性と支援者に密着

©️2024 映画 ◯月◯日、区長になる女。製作委員会

2022年に東京都杉並区で行われた区長選挙。
地縁がなく、政党の後援も受けない岸本聡子さんが、3期12年続く現職区長を破って当選しました。岸本さんと彼女を支援する住民に密着し、選挙期間中の様子をとらえたドキュメンタリー『映画 ◯月◯日、区長になる女。』が、名古屋でも今月公開されます。

この作品を上映するのは、名古屋・今池に3月16日にオープンするミニシアター、ナゴヤキネマ・ノイです。

こちらの支配人・永吉さんに、映画の見どころとあわせて、名古屋の文化を支える新たな存在として期待されている映画館の情報も伺いました。
 
― これまでも選挙をテーマにしたドキュメンタリー映画はいくつかありますが、この作品は杉並区長選挙を取り上げています。

永吉:これまでに『香川一区』『センキョナンデス』などのドキュメンタリー映画がありますが、これらは国政選挙を扱ったものでした。ただ、国政選挙でも地方選挙でも代表を選ぶという意味では同じですよね。それに、東京都杉並区は〝区〟とは言っても人口が約57万人もいる比較的規模の大きな自治体です。
 
― 監督は杉並区在住の劇作家・演出家の女性で、これまで政治には無縁だったとか。

永吉:そうですね。監督が長年住んでいるアパートが、道路拡張計画によって立ち退きの危機にあると知って調べ始め、それを争点とした選挙に関わっていくことになったようです。そんな監督の視点で作られたこの映画で、選挙って誰でも参加できるものだし、活動が結果に結びつくこともあるという当たり前の事実を、あらためて痛感しました。
  

新たな選挙や政治の形に希望を感じる

©️2024 映画 ◯月◯日、区長になる女。製作委員会

― この区長選の話題性は、どんなところにあるのでしょうか。

永吉:長年区長を務めてきた現職ではなく、日本での政治経験がない岸本さんが選ばれたということでしょうか。わずか187票差で決着したので、1票の力って大きいなとも感じましたね。
 
― 区長になった岸本さんも監督も女性ですが、特に女性に注目して、という視点もあるのでしょうか。

永吉:女性の候補者に女性の支持が集まりやすい傾向はあるかもしれない、とは感じました。親近感もあるでしょうし、政治の世界は長年、男性中心で明らかにいびつな状態です。ただ、女性だけが担ぎ上げた候補というわけではありませんし、当然それでは勝てませんので、そういった誤解が生じるのは望ましくないですね。
 
― 選挙期間中の様子を観て、印象に残った点を教えてください。

永吉:岸本さんを支援する団体が複数あり、それぞれと対話しながら歩み寄って方向性を見出していくという過程に、新しい選挙や政治の形として希望を感じました。また、彼女は〝たすきをかけて選挙カーに乗り、名前を連呼する〟という日本の選挙になじみがないですから、政策の議論をしたいと主張します。新しい候補者や支援者が選挙に関わることで、政策の中身をしっかりと語ることが増えていくのかなとも思いました。
 
杉並区では今年の春から給食無償化の対象を広げるというニュースが、先日伝えられました。映画の後の話にはなりますが、次の選挙に勝つためではなく、世の中をよくするための仕事に取り組んでいて、今も前進しているんだなと感じましたね。
  

■ナゴヤキネマ・ノイ

名古屋ではここでしか観られない作品を

― ナゴヤキネマ・ノイは、昨年閉館した名古屋シネマテークの跡にオープンする映画館ですが、環境はかなり変わるそうですね。

永吉:場所は同じですが、床や壁などの内装をすべてリニューアルしているので、かなり印象は変わると思います。段差にスロープを付けるなどの対応も進めていますし、椅子も張り替えていて、座り心地もずいぶん変わるはずです。映写関係の機材はオープニングに間に合わないものもありますが、音響はかなりブラッシュアップされて良い環境になる予定です。
 
― 上映作品はどんなラインナップになりそうですか。

永吉:オープニング作品として、東海テレビ制作のドキュメンタリー映画『その鼓動に耳をあてよ』を上映します。こちらは、名古屋掖済会えきさいかい病院のER(救命救急センター)が掲げる〝断らない救急〟の現場に密着した迫真のドキュメントです。
今後は、アート系やドキュメンタリー作品、若い監督の新しい作品など、〝名古屋ではここしか上映していない〟という作品などが中心になると思います。
 
― その他、以前と変わる点はありますか。

永吉:オンラインでチケットが購入できるようになりますので、劇場まで足を運ばなくても事前に予約できます。また、よりよいサービスを提供するためにも、毎週火曜日を定休日とする予定です。
 

『映画 ◯月◯日、区長になる女。』ナゴヤキネマ・ノイにて、3月30日から上映予定。

『映画 ◯月◯日、区長になる女。』の予告編はこちら

 

ナゴヤキネマ・ノイ劇場情報

ナゴヤキネマ・ノイ
2024年3月名古屋・今池に誕生するミニシアター。元名古屋シネマテークのスタッフが代表となり、映画館の存続を望むファンや映画関係者、今池の人たちの期待に応えて立ち上げた。「何か」を持ち帰ることのできる、ミニシアターならではの映画体験を提供する。

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