#1 “「リモート」での相互交流の登場と浸透”
2023年5月8日をもってCOVID-19の感染症法上の分類が2類から5類に引き下げられ、2020年初頭以来わたしたちの生活に大きな影響を及ぼしてきた「コロナ禍」が、一つの転機をむかえました。
この約3年に及んだ、いわば「特異」な時間の中で、わたしたちは様々なことに気づかされ、考えさせられました。ここでは、人と人との、オンラインではないオフラインの、リアルな「つながり」ということを足がかりに、改めて看護という営みについて考えてみたいと思います。
そのためにまず第1回目では、コロナ禍によりリモートスタイルでの相互交流が登場し、浸透した状況を確認し(第1回)、次に「寄り添う」について考え(第2回)、AIと看護実践(第3回)、「物語」を紡ぐ支援をする看護実践(第4回)、
これらについて考えながら人と人との「つながり」に内包される可能性をみていきたいと思います。
はじめての緊急事態宣言が発令されたのは、
2020年4月でした。
あの時のキャンパスの風景は今も目に浮かびます。
学生たちの姿は消えてキャンパスはしんと静まりかえり、一方で自然豊かな守山キャンパスには鳥の囀りが響き渡り、季節の草花がいつもと変わらず風に吹かれていました。
スポーツや文化芸術活動は中止となり、彩りを欠いた、静かで平板な、閑散としているのに閉塞感が漂う、独特な時間がそこには流れていました。
しかしほどなくリモートでの授業や会議、研究会などが、IT機器操作の得手・不得手とは全く関係なく、半ば暴力的な印象さえ伴いながら登場し、あっという間に浸透していきました。
おかげで、日常の時間の隙間をぬって様々な研究集会に参加することができるようになったり、海外在住のメンバーにも気軽に加わってもらえるなど、わたしたちは大いにそのメリットに浴し、現在に至っていることも事実です。
しかし、リモートスタイルでの相互交流で共有できることと、
対面でのそれとの間には違いがあるという印象が払拭しがたくあります。
この印象は、何から生じるのでしょうか。
次回は、リモートでの関わりと対面でのダイレクトな関わりの違いについて、文学作品などに触れながら考えてみたいと思います。
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