【Kinjo Spirit】 生活環境学部 環境デザイン学科 朴 相俊 准教授
この記事は、2023年度金城学院報with Dignity vol.42に掲載された記事です。
ビルやダム、道路や橋など、社会インフラの整備に欠かせないコンクリート。一方で、製造過程で大量に排出されるCO2、良質な天然骨材資源の枯渇、コンクリート構造物の早期劣化など、多くの課題を抱えているのも事実です。
こうした中、コンクリートの未来に向けて、様々な研究に取り組む朴相俊先生。
「培ったコンクリート工学の知見と経験を活かして持続可能な社会に貢献したい」。
そんな朴先生の想いが、いま、少しずつカタチになろうとしています。
恩師との出会いから始まったコンクリート研究。
私がコンクリートの研究をしようと思ったきっかけは、大学のゼミ指導教員の紹介でコンクリート工学の権威である谷川恭雄先生に出会ったこと。
「勉強を続ける思いがあるなら、ぜひ来てください」と言っていただき、日本への留学を決意。
谷川先生が教鞭をとる名古屋大学大学院工学研究科でコンクリート研究を進め、博士を取得しました。
谷川先生からは、研究面ではもちろんのこと、探求のまなざし、研究者としての姿勢にも、多くを学びました。好奇心をもつこと。考え続けること。それは私の研究に対する姿勢の原点にもなっています。「研究者になろう」と決めたのも、谷川先生の影響が大きかったと思います。
現在は、「小径ドリル型削孔試験機による火害を受けたモルタルの強度推定のための検証実験」、「赤外線カメラを搭載したドローンを用いたRC構造物の劣化診断」、「PCを利用してコンクリートの破壊機構の数値解析やシミュレーションを行う研究」に取り組んでいるほか、新たな課題にも挑んでいます。
そのひとつが、「使用済み太陽光パネルの廃ガラスを有効利用する技術の研究開発」です。
太陽光パネルの大量廃棄時代の到来に備えて。
日本では2012年以降、太陽光発電が急速に拡大。
カーボンニュートラルの観点から、今後も増加し続けると予測されます。
ただ、太陽光発電のパネルには寿命があり、2030年代に大量廃棄されることが見込まれます。産業廃棄物処分の増設も厳しいため、パネルの再利用法の検討は急務です。一方、コンクリート材料の現状を見ると、 CO2排出量が多いセメントは使用量の削減が求められています。
また、川や山から採取できる良質な天然骨材資源が枯渇しており、自然環境保護の観点からも新しい代替材料の使用が求められています。
そこで本研究室が取り組んでいるのが、太陽光パネル由来の廃ガラスをコンクリート中のセメントの一部と、骨材として循環利用する技術の研究開発。
廃棄される材料を使い、天然骨材の使用量を削減することで、低炭素社会や使用済太陽光パネルの再利用推進に貢献できると考えています。
「竹炭入りコンクリートにおけるスギ花粉吸着性に関する研究開発」は、日本では今、土砂災害や環境破壊を引き起こす放置竹林が問題視され、竹の新たな活用法が模索されていることを背景に着手したテーマで、本研究室は竹炭の細孔構造の吸着性能に着目。
竹炭入りのコンクリート試験体を製作し、スギ花粉の吸着実験を行っています。これまでにスギ花粉が細孔部分にしっかりと入り込み吸着している様子を確認しています。
なお、本研究室の研究開発はすべて民間企業との共同開発研究であり、特にこの2つのテーマはSDGsの取り組みとして社会に貢献できる研究であり、社会への応用をめざして、ゼミの学生とともに取り組んでいます。
クリスチャンとして生きるということ。
私は高校2年生の時に韓国のプロテスタント教会で洗礼を受け、以来、クリスチャンとして毎日を生きています。
私の好きな聖書の言葉に、
「真理はあなたがたを自由にする(ヨハネ8:32)」という言葉があります。
私たちは弱い人間であり、悩み落ち込みます。
世間に振り回されることもしばしばあります。
しかし、イエス様を信じる信仰と、神様を知る心理の中に入れば、自由になれると思います。
研究においても同様で、上手くいかなかったり、壁にぶつかることがあります。そんな時に、私を励まし支え、前を向かせてくれるのが信仰であり、研究の仲間(ゼミの学生)。
一所懸命に卒業研究に取り組む学生たちがいるから、私も頑張れる原動力になっています。
【教えて先生!My Favorite】
体を動かすことが好きで、山登りをしたり、散歩したり、スポーツをしたりしています。コロナ禍の前は、ゼミの学生と御在所(三重県)の山登りをゼミの行事として行っていました。サボテンを育て、鑑賞することも好きです。
朴 相俊 先生のゼミ風景
ゼミでは1〜3年生で学んだ知識と技術をもとに、産学連携の共同研究を行い、様々な社会課題に取り組んでいます。研究では、竹炭を焼いたり、コンクリートを作ったり、強度の診断をするなど、実際に手を動かして作業を行っています。また、企業との打ち合わせや建設現場の見学会も行い、理解をさらに深めています。
Q. 朴 相俊 先生ってどんな人?
将来の夢は、建設現場の監督になること!
小径ドリル型削孔試験機で火害コンクリート構造物の損傷度を把握する研究を行っています。朴先生は、コンクリートの損傷度を早く、正確に診断して適切な対策をすることが、コンクリートをより長く安全に使うことにつながる、ということを理論と実験を通して教えてくれるので、使命感とやりがいを持って取り組んでいます(宮嶋)。
どんな相談にも親身に応えてくれる先生です
私は太陽光パネルの廃ガラスをコンクリートの骨材として再利用する研究に取り組んでいます。朴先生は実用化をめざして頑張っている私たちを見守り、励ましてくれます。いつも(夏休み中も毎日!)研究室にいて、学生を温かく迎えてくれるので、実験のことだけでなく、就職のことや悩みなども相談しています(西堀)。
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