主人公とともにパリの街をめぐりながら女性の生き方に思いをはせる
長い人生でさまざまな経験を重ねた人の言葉には、想像を超える奥深さがあります。人生の先輩との交流は、気持ちや考え方に大きな影響を与えてくれるかもしれません。意外なめぐりあわせが繰り広げる展開に驚きながら、その時々の時代を映す女性の生き方についても考えたくなる映画がフランスから届きました。
■『パリタクシー』
女性の過去を通して自分を見つめ直す
パリのタクシー運転手シャルルは免停寸前で、お金も休みも足りないという散々な状態。そんな彼はある時、パリの反対側まで行きたいという92歳のマダムを乗せることに。自宅を離れて介護施設へ向かう彼女は、忘れられない思い出の場所をめぐりたいと告げます。ドライブを続けるうちに彼女のドラマチックな過去が明らかになり、次第にシャルルも引き込まれていきます―。
ミッドランドシネマ 名古屋空港の支配人、森さんに見どころを伺いました。
― タクシー運転手と乗客として出会う二人が主人公ですね。
森:運転手の男性はいろいろうまくいかない状況で、遠距離の予約にもちょっと不機嫌なんですが、稼げそうだということで渋々行くんですよね。寄り道してというマダムの希望も最初は嫌がりますが、話を聞くうちに彼の気持ちも変わり、自分は家族と向き合っているのかなどと自分を見つめ直すことにつながります。
― 思い出話を聞くそうですが、彼女の過去には驚きのエピソードが多いのですか?
森:彼女が長い人生を振り返る回想シーンもあります。ネタバレになるので詳しく話せませんが、戦中~戦後の忘れられない恋や大切な人との暮らし、その後に起きる悲しい出来事などかなり波乱万丈ですね。でも、人生の後半ではその経験がある活動につながったりもするので、つらいだけではないと言えるかもしれません。
― 戦後から現在まででは女性を取り巻く環境もずいぶん変わっています。彼女が振り返る長い人生の中には、そういった時代背景も感じ取れそうですね。
パリの街を旅するように楽しみたい
― 美しいパリの街並みも楽しめますか。
森:そうですね。凱旋門とシャンゼリゼ大通り、エッフェル塔などパリを代表する眺めはもちろん、セーヌ川のほとりや閑静な住宅街など、いろいろな景色が楽しめます。しかも、二人のドライブは夜まで続くので時の移ろいも感じられて、一日観光をしているような贅沢な気分が味わえますね。
― フランス映画らしいユーモアや小粋なムードも期待できそうですね。
森:「怒ってばかりいると年を取るけど、笑顔でいると若返る」といったような、マダムの素敵な名言もいくつか出てきて、すごくウィットに富んでいるなと感じます。機転を利かせてシャルルのピンチを救う場面もあって、ちょっと不思議な組み合わせのバディものといった趣もありますよ。
年を重ねることを魅力的に感じる豊かさ
― マダムを演じた女性は役柄とほぼ同じ90代なんですよね。
森:それほど高齢には見えないですね。女性としてもとてもチャーミングに映ります。先ほどの名言にもありましたけど、いろんな経験をしながらも笑顔で前向きだから、魅力的でいられるのかなと思いますね。
― フランスやヨーロッパの映画では、年を重ねてますます輝きを増す女性がたくさん見られるように感じますね。
森:そうですね。素敵な年の取り方をしているなと感じる女優さんも多いですしね。この作品の中で食事をするシーンがいくつかあるんですが、マダムも結構食欲旺盛なんですよ。高齢になっても元気な人って、ポジティブで活力があふれているなと感じました。
森:マダムの人生を振り返りながら、シャルルのように自分の今を見つめ直すこともできますし、パリの美しい街並みも望める。ちょっといい映画見たなぁと満たされた気持ちになれる作品です。
『パリタクシー』の予告編はこちら
ミッドランドスクエア シネマ 劇場情報
名古屋駅前に14スクリーン、全席ソフトレザー張りの2,205席を備える都市型シネマコンプレックス。メジャー作品はもちろん、アートレーベルやアニメレーベルも設けて、コアなファン向けの作品もカバーする。