犯人はシーツのしわ!?
私たちは、目覚めている時はもちろん、寝ている時も自然に楽な体位をとっています。
しかし、入院している方の中には、検査や治療のために長い時間にわたって同じ体位をとらなければならないことや、さまざまな事情によって自分で体位を変えることが難しい方もいます。
体位を自由に変えることができない患者さんに、看護師は体位変換の援助を行うと共に、皮膚の清潔を保ったり、皮膚のマッサージによって血液の流れを促したり、保温・保湿に気をつけ、状態に合ったマットレスを選ぶなどして、患者さんの皮膚を危険から守ります。
看護師Aさんも、担当患者さんにいつも細心の注意を払ってケアをしています。ある朝、いつものようにごあいさつをして患者さんの状態を確認してから、清潔支援のために身体を拭くケアをしていました。ふと見ると、皮膚の一部が赤くなっています。
「どうして!? いつも気をつけていたのに…」。
原因を探していくと、どうやら犯人はシーツのしわ、だった疑いが濃厚になってきました。
では、なぜシーツのしわで褥瘡ができるのでしょうか。
シーツのしわは褥瘡の大敵!
褥瘡は一般に「床づれ」と言われ、寝たきりの状態などが続くと、体重で圧迫されている場所(骨と皮膚表面の間)の血液の流れが悪くなり、栄養や酸素が行き届かなくなってしまうことで引き起こされます。
お尻の中央にある仙骨部や後頭部、肩甲部、かかとなど、骨が突き出した部分にできやすく、はじめは皮膚の一部が赤くなり、進行するとただれや水ぶくれ、さらに圧迫が続くと黒く壊死してしまいます。
特に自分で寝返りを打てない人や、皮膚が薄く弱くなっている高齢者は褥瘡ができやすく、シーツのしわやパジャマのタグや縫い目、ひもなど、ほんの小さな突起でも皮膚に圧力が加わり、一晩で褥瘡ができてしまうことがあります。
褥瘡は一度できてしまうと治るのに時間がかかるし、何より患者さんにとっては身体的にも心理的にも大変な苦痛になるので、まずは褥瘡をつくらないよう予防することが重要です。
安全・安楽な環境を整えることは、すべての看護の基本です。
近代看護の基礎を築いたナイチンゲール(1820〜 1910年)は著書「看護覚え書(1859年刊)」のなかでこう記しています。
患者さん一人ひとりの健康状態や要望に合わせ、快適で気持ちよいと感じられる病床環境を整えることは、患者さんの自然治癒力を引き出し、高めることにもつながる重要な看護技術。
それは、時代が変わっても、どんなに医療技術が進歩しても変わらない、看護の原点です。
健康だけじゃない。その人らしさまでを支えられる看護職者へ。
金城学院大学 看護学部 看護学科