「ジュース」と呼べるのは果汁100%だけ!?
商品パッケージの表示にはルールがある。
果汁100%のジュースの缶やボトル、紙パックなどに描かれているみずみずしい果物の絵を見ると、美味しそうでつい手に取ってしまうことがあります。
実はこうした果実飲料のパッケージ表示には、さまざまな基準や規定があります。
たとえば、果物の「断面図」や「果汁のしずく」の写真や絵を使えるのは、果汁100%のジュースだけ。
果汁5%〜100%未満の飲料は、果物の写真や絵は使用できますが、断面図や果汁のしずくはNG。
果汁の割合が5%未満の飲料は、果実の写真も絵も表示できず、図案化したイラストのみ使用できます。
ちなみに、「ジュース」と名乗ってよいのは果汁100%のものだけで、果汁10%〜100%未満の飲料は「果汁入り飲料」と呼ばれます。
これらは「JAS法(日本農林規格)」や「果実飲料等の表示に関する公正競争規約」に基づくルールで、消費者の立場に立ったわかりやすい表示と、業界全体の公正な競争を図ることを目的に定められました。
この他にも商品パッケージや広告の表現にはさまざまなルールがあり、その中には、消費者自らが取り組む消費者運動によって作られたものもあります。
「果汁含有率の表示義務」は消費者運動の成果のひとつ。
現在のように、ジュースの名称が定義され、「果汁○%」のような表示が義務付けられるようになったのは、1969年に行った主婦連合会(主婦連)*の運動がきっかけとなっています。
当時は、「○○オレンジ」などの名称を使い、色、外観ともに、いかにも果汁入のように思われる飲料が各種販売されていました。
主婦連がそれらをテストした結果、ジュースと表示しながら果汁100%のものはわずか3%で、ほとんどがごまかし表示だったことが判明。この結果をもとに、公正取引委員会や関係省庁に問題を提起しました。
主婦連の主張は、最終的に「果汁100%以外にはジュースの名称は使用しない」ことと、「果汁含有率の表示義務」の実現につながりました。
不当景品類及び不当表示防止法制定のきっかけとなった「ニセ牛缶事件」。
また、こんな事例もあります。
1960年のこと、「缶詰にハエが入っていた」という消費者からの申し出があり、保健所が調べたところ、缶詰のレッテルの牛の絵に「ロース肉大和煮」と表示されているにもかかわらず、中身はクジラの肉だったことがわかりました。
さらに調査を進めると、牛缶と表示して売られていても、牛肉に馬肉などを混ぜて使用することが業界では当たり前のように行われていたことが明らかになり、怒った消費者から「本物の牛缶はどれか」という問い合わせが保健所等に相次ぎました。
この事件を契機に表示の適正化を求める声が高まり、公正取引委員会は1962 年、「不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法)」の案を国会に提出。この法案は同年5月に国会を通過し、消費者の商品選択を惑わす不当な表示に対する規制がより迅速かつ効果的に行われることになりました。
いま私たち消費者に求められていること。
欠陥食品、食品偽装、誇大広告、金融詐欺・・・
日本の消費者運動が高揚した1970年代から半世紀以上が経ったいまも、世の中にはさまざまな消費者被害が発生しています。
食品ロスやプラスチックごみ問題など、地球環境の問題も切実です。
消費者団体は、こうした問題に向き合いながら、よりよい消費社会を目指して運動をしています。
しかし、高度に発展した現代の消費社会においては、個々の消費者団体の力だけでは対処しきれない問題が広がっています。
こうした中で、消費者団体をうまく活用し、その力を十分に発揮させていくためには、まず私たち消費者が消費者運動に関心をもち、消費者団体が問題解決に重要な役割を持っていることに気づいて、消費者の代表として応援すること。
そうした消費者一人ひとりの意識が消費者団体に力を与え、やがて大きなうねりとなって、よりよい消費社会をつくることにつながっていきます。
よい社会に向かっていくための消費者運動は、特別な知識や情熱を持った運動家だけではなく、実は消費者一人ひとりの意識が原点になっているのです。
出典一覧
・主婦連サイト
・消費者庁『入門!消費者問題の歴史』
・丸山千賀子「消費者運動の変遷と消費者団体の行方」『ロスト欲望社会』橋本努編 (共著) 2021/06/勁草書房
暮らしを見つめる力で、社会を豊かにする。
それが生活環境学部 生活マネジメント学科