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美しい音色に心がおどる、音楽の本

指を折り曲げて1から順に数を数えるとき、6は小指を立てて数えます。このことから6は “子が立つ”縁起のよい数と転じて、“芸事の稽古は6歳の6月6日に始めると上達が早い”と言われてきました。

その習わしに由来して全国楽器協会が制定したのが、6月6日の「楽器の日」です。

今回のブックガイドは、「楽器の日」にちなんでご紹介します。
選書をしてくれたのは、名古屋市名東区の「Book Galleryトムの庭」の店主、月岡弘実さんです。
 


■『105にんのすてきなしごと』

105人がひとつになる時、美しいハーモニーに包まれる。

105人の登場人物は、これから始まる仕事のために準備を始めます。身支度を整えて、大切な仕事道具を持って、全員が出かけていった先は…?

美しい音楽を生み出すために年齢も容姿も家族も違う人々が同じ場所に集まり、心をひとつにして楽器を奏でます。演奏会の裏側と音楽の豊かさが読者の心を掴む物語です。
 
― この本を選んだ理由をお聞かせください。

月岡:
今回は、音楽がテーマということで、まずは私が大好きなマーク・シーモントが絵を手がけている絵本を選びました。ストーリーももちろん素晴らしい作品です。
マーク・シーモントは、1915年にフランスのパリに生まれ、フランス、スペイン、アメリカで幼少期を過ごしました。パリとニューヨークで美術を学び、物語と絵の両方を手がけた絵本作品『のら犬ウィリー』では、アメリカで権威のある児童書の賞『コルデコット賞』を受賞しています。今回の『105にんのすてきなしごと』は、彼の作品の中でもその優れた画力が味わえます。
 

演奏会が始まるクライマックスは、読者も気持ちは客席に。

― マーク・シーモントの絵の見どころは、どのようなところでしょうか。

月岡:演奏会の様子が描かれた最後の絵はとくに印象的です。開いたページから音楽が聞こえてくるような臨場感があって、読んでいる私たちも心が躍ります。

一人ひとりが仕事に向かうために身支度を整えている様子を描いたページには、それぞれの年齢や容姿の違いだけでなく、性格までも感じられるような描写にユーモアが溢れています。オーケストラ全体を描いた最後のシーンとの対比もまた彼の意図なのかもしれません。マーク・シーモントが“この作品の主役は音楽である”ということを、よく理解していることが表れていると思います。
 
― 絵にも様々な意図が隠れているのですね。

月岡:素晴らしい絵本の多くは、物語にも絵にも独自性があって、両者が互いの世界観を深め合って完成しています。この絵本は、まさにその素晴らしさを味わえる本。音楽の豊かさはもちろん、マーク・シーモントという作家の仕事にもぜひ触れてみてください。
  

書籍データ:『105にんのすてきなしごと』

『105にんのすてきなしごと』
文:カーラ・カスキン 
絵:マーク・シーモント 
訳:なかがわちひろ
発行:あすなろ書房

■『小学館の図鑑NEO 音楽』

貴重な楽器の演奏が聞ける<最新図鑑の現在地>

― こちらはQRコードを読み取ると演奏音源を聞くことができる、画期的な図鑑ですね。

月岡:私がこの本を手に入れたのは、店に併設しているカフェで演奏会を開いてくださっているギター奏者の方に「面白い本がある」と教えてもらったことがきっかけでした。
 
― 読んでみていかがでしたか。

月岡:驚きましたね。図鑑がこれほど進化しているとは思いませんでした。本書は、世界各国の楽器を約300種も掲載し、歴史や世界の音楽といったテーマで膨大な情報量を収録しているだけでなく、楽器の演奏を試聴できるようになっているのです。文化財として価値のある貴重な楽器や世界的な名器の音色も聞くことができ、文明的な付加価値のある図鑑だと恐れ入りました。
 

人類の歴史と共にあるものだからこそ、知れば知るほど奥深い

― 膨大な数の楽器と長い歴史を知ると、人類にとって楽器や音楽の重要性が分かります。人は、いつの時代も音楽を求めて命をつないできたのだなと感じました。

月岡:近年は、震災や自然災害が続いていますが、そのたびに演奏家自身からも「音楽には一体何ができるのだ」と悲観的な声が聞こえてきます。それでも演奏家たちは、被災した人々の不安や傷ついた心を癒そうと被災者のもとへと赴いていますよね。
音楽は、さしあたって日常になくてはならないものかもしれません。でも、太古の時代から人は祈りや信仰、そして娯楽のために、音楽と共に生きてきたということがこの図鑑を見ても分かります。
 
― 表紙には、ユニークな仕掛けがあるそうですね。

月岡:表紙は、小学館の図鑑NEOシリーズに倣ったデザインなのですが、リバーシブル仕様で裏側がとてもかっこいいのです。この仕掛けがあまりに素敵で、実はトムの庭ではちょっとした工夫をして陳列しています。もしこの図鑑をうちでお買い求めでしたら、声をかけてくださいね。
  

書籍データ:『小学館の図鑑NEO 音楽』

小学館の図鑑NEO 音楽
発行:小学館

愛知県名古屋市にある「Book Galleryトムの庭」の情報はこちら

Book Gallery トムの庭

海外の翻訳絵本や児童文学を中心に、新刊本、古書、アートや雑貨などをそろえる。店主の月岡さんの書斎のような空間で、厳選された本からお気に入りを見つけるのが楽しい。場所は、地下鉄「一社」駅から徒歩5分ほど。北欧テイストのカフェも併設する。  → 詳細はこちら

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