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アレルギーの発症メカニズム解明が、治療薬開発のカギ!?

104限目 アレルギー反応
『鼻水はどうして出てくるの?』
薬学部 薬学科

2017年11月掲載「車内の金城学院大学」

日本人の2人に1人が悩むアレルギー。

いま、国民の2人に1人は何らかのアレルギーをもっているといわれ、アレルギー疾患は日本人にとって身近な病気になっています。
 
そこで今回は、アレルギー症状の発症メカニズムを詳しく知ることで、治療薬がアレルギー症状をどのように緩和するのか、できるだけ科学的に探ってみましょう。
 

アレルギーはなぜ起こるの?

アレルギーは、抗原と呼ばれる花粉やハウスダストなど、外来性の「異物」が体内に侵入することから始まります。
 
これら「異物」が体内に侵入すると、免疫反応によりIgEと呼ばれるタンパク質が作られ、皮膚や粘膜にあるマスト細胞と結合し、同じ「異物」が再侵入してくるのを待ち構えます。
 
「異物」が再び体内に侵入すると、即座にマスト細胞表面のIgEと結合し、マスト細胞からヒスタミンやロイコトリエンなどの化学伝達物質が放出されます。
 
これらの物質が、くしゃみや鼻水、鼻づまり、咳、目や皮膚のかゆみなどのアレルギー症状を引き起こします。 
 

薬剤開発のキーワードは、IgE、マスト細胞、ヒスタミン、ロイコトリエン。

アレルギー症状が発生するメカニズムを解明することで、症状を緩和する薬や治療薬の開発につなげることができます。
 
そのキーワードは、IgE、マスト細胞、ヒスタミン、ロイコトリエンです。
 
まず、IgEを科学してみましょう。
 
「異物」が体内に侵入すると、免疫反応によりIgEが作られますが、IgEを作るには免疫系の細胞がインターロイキン-4というタンパク質を作る必要があります。
 
従って、インターロイキン-4を生成しにくくしたり、たとえ作られてもインターロイキン-4の作用を減弱させることができれば、アレルギー症状は改善されるはずです。
 
こうした発想から開発された薬にスプラタストがあります。また、2018年にはインターロイキン-4の作用を大きく減弱させる医薬品として、デュピルマブという薬が登場しました。
 
一方、作られてしまったIgEはマスト細胞の表面に結合しますが、この結合を防ぐオマリズマブという薬も開発されています。
 

ヒスタミンやロイコトリエンの働きを抑える薬も。


次に、マスト細胞が放出するヒスタミンやロイコトリエンを科学してみましょう。
 
マスト細胞がヒスタミンやロイコトリエンを放出する際には、細胞膜と呼ばれる細胞と外界とを隔てた膜にさまざまな変化が見られます。
 
従って、この変化を起こしづらくすれば、ヒスタミンやロイコトリエンの放出量が低下します。
 
この発想で開発された薬がクロモグリク酸やトラニラストです。
 
これらの薬は比較的副作用も少ない、良い薬ですが、少なくともアレルギー症状が起こる1カ月程度前から使用する必要があります。
 
一方、放出されたヒスタミンやロイコトリエンの作用を大きく減弱させる薬も開発されています。
 
ヒスタミンの作用を減弱させる薬にはフェキソフェナジンやオロパタジンなどが、ロイコトリエンの作用を減弱させる薬にはプランルカストやモンテルカストなどがあります。
 
これらの薬は抗アレルギー薬の中では一番よく使われており、アレルギー症状を非常に効率よく抑えることができます。
 

アレルギーを根本から治す新たな薬の開発に挑戦!

残念ながら、これまで紹介した全ての治療法はアレルギー症状を抑えることはできても、治癒させることはできません。
 
ただ、アレルギー性鼻炎に対しては、近年は治療薬を舌の下に投与する「舌下免疫療法」が徐々に普及し、治癒を視野に入れて治療計画を立てることができるようになってきました。
 
これからは、さらに副作用が少なく、効き目が鋭い薬剤の開発がなされることでしょう。
 
また、症状の緩和だけでなく、アレルギーという疾病を根本から治す方法についても研究が進んでいます。
 
金城学院大学薬学部の研究室でも、大学4、5年生を中心に、マスト細胞をあらゆる角度から科学し、マスト細胞の中にあるタンパク質をターゲットとして、全く新しいタイプの抗アレルギー薬の開発とアレルギーの根治に取り組んでいます。
 
身体の仕組みを学び、健康に役立てる
それが薬学部 薬学科
 


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