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自炊や料理の捉え方が変わるあたらしい料理本

毎日何かを食べずには生きられない私たち。外食やテイクアウト、デリバリーなどを活用してさまざまなメニューを手軽に楽しめる現代ですが、自分が食べたいものを自分で作れたらそれは何より安心でうれしいこと。

でも、〝レシピ通りに上手に作れない〟〝献立を考えるのが大変〟〝自分だけのために作るのは億劫おっくう〟など、料理に関する悩みは尽きません。

そんな悩める人の心を軽くしてくれる料理本をご紹介しましょう。
食に関する本棚も備える、名古屋市金山の書店「TOUTEN BOOKSTORE」の店主、古賀詩穂子さんが、料理することが苦手な人に読んでほしい2冊をおすすめしてくれました。


■『たすかる料理』

自炊の方法や食材の使い方などヒントがいっぱい

東京・代々木上原で行列の絶えない「按田餃子あんだぎょうざ」は、水餃子をメインにした、女性ひとりでも入りやすい飲食店。お店を営む料理家の按田優子さんによる画期的な自炊方法や、食材を食べつなぐヒントが詰まった一冊です。お店の共同経営者である写真家の鈴木陽介さんによる、メニューや食材の写真も魅力です。

― 2018年に初版が発行された本ですが、どんなきっかけで読まれたのですか。

古賀:発売当初からお店に置いてあるロングセラーです。按田餃子のことも以前から知っていましたが、スパイスを使うのが得意な友人がこの本を頼りにしていると聞いて気になり、読んでみました。

― 素材の詳しい紹介があったり、お店の紹介もあったりと個性的な内容ですよね。

古賀:料理本はたくさんありますが、調味料だけの項目があったり、理念を含めて料理の説明がしてあったり、レシピがほとんど文字だったり、ちょっと不思議な本ではありますね。そのおかげで、同じ材料でも調理方法をどう変えるかなんだな…とか、料理をするときのコツのようなものがつかめるのがいいなと感じました。
 

大胆で自由、おおらかな料理スタイルが心地よい

― 豚肉をひたすら茹でていく料理など、按田さんのユニークな自炊にも驚きます。

古賀:そのお肉をベースにどんどんいろんな料理ができていくなんてすごく自由だし、柔軟性がありますよね。冷蔵庫を持たない生活とか、海で塩を採集したなんてエピソードにもたくましさを感じます。レシピについても結構大雑把で、失敗してもいいよっていうおおらかさがいいですね。

― お店の成り立ちやメニューなども興味深いです。

古賀:〝包みたい助けたい~〟というお店のキャッチコピーも面白いし、味付けが濃過ぎなくて野菜を蒸しただけの料理って外食ではなかなか出合えないから、近くにあったらうれしいですね。仕事を人に任せる力の抜き方やスタッフとの関係など、お店づくりの裏側も参考になるはず。出てくる料理はどれもシンプルですけど、本当においしそうですしね。
 

書籍データ:『たすかる料理』

『たすかる料理』
著:按田優子
写真:鈴木陽介
発行:リトル・モア

■『自分のために料理を作る―自炊からはじまる「ケア」の話』

料理家と精神科医が料理のバックグラウンドを探る

自炊料理家の山口祐加さんのもとに寄せられる、「誰かのためにだったら料理をつくれるけど、自分のためとなると面倒で、適当になってしまう」という声。そんな〝自分のために料理ができない〟と感じている参加者に、山口さんが3ヵ月間自炊コーチを実践。それを通して起こった変化や発見を、精神科医の星野概念さんとともに明らかにしていきます。自炊をして食べる実践法とその効用を伝える画期的な料理本です。

― この本のどんなところに関心を持ちましたか。

古賀:自炊に注目して、料理をするバックグラウンドや、料理に対する気持ちに寄り添う本はあまり読んだことがなかったので、興味を持ちました。山口さんの自炊料理家という肩書きも面白いですよね。

― 斬新なアプローチの料理本だと感じましたが、どんなところが特徴として挙げられるでしょうか。

古賀:構成が独特ですよね。まず、料理に関するさまざまな問題を提示する山口さんの話があって、参加者と一緒に料理を作るパートがある。それに続いて、概念さんが加わって語り合うという流れ。対話の方法も特徴的で、山口さんと概念さんが参加者について話している内容を、参加者も一緒に聞くというオープンダイアローグ的な手法が取り入れられています。それによって、参加者は自分の悩みや変化を客観的に見つめることができているようでした。
 

アドバイスや適度な距離感で気持ちも楽に

― 自炊コーチには年齢や生活環境が異なるさまざまな人が参加していて、読者が共感できる点が多くありそうだと感じました。

古賀:調味料を何のために使っているかわからないとか、レシピを見ながら作らないと不安だという人がいて、私もすごくわかる!と思いました。自炊コーチを通して大きく変化した人もいて、それにはちょっと感動しましたね。

― 対話方式の料理シーンにも発見がありました。

古賀:「ここにヨーグルトを入れましょう」
「ヨーグルトがないんです。○○ならありますが」
「じゃあ、○○で代用しましょう」といったやり取りが印象に残っています。レシピにとらわれ過ぎず、その場にあるものを臨機応変に利用すればいいんだって気づきましたね。その道のプロが提案してくれるから、ですけど。
 

― 2冊に共通することですが、「自炊をしましょう」と強く勧めるのではなく、そっと支えてくれるような距離感がほどよいですね。

古賀:無理に毎日続けなくてもいい、途中でやめてもいいよとも書かれています。食材はこうしておけば保存できるといった具体的なアドバイスがあるので、料理に対する気持ちが軽くなりますし、こういうことが知りたかった!という情報も得られました。
これから自炊をスタートする人も、この本を読んでから始めると楽しく料理ができるんじゃないでしょうか。すでに料理をしている人にとっても、料理に対する見方が変わってくると思います。

書籍データ:『自分のために料理を作る―自炊からはじまる「ケア」の話』

『自分のために料理を作る―自炊からはじまる「ケア」の話』
著:山口祐加、星野概念(対話に参加)
発行:晶文社

著者の山口祐加さんのnoteはこちら

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