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客室乗務員に学ぶ、おもてなしの極意とは?

66限目 ホスピタリティ
『気付き、気配り、気働き!』
文学部 英語英米文化学科

2014年9月掲載「車内の金城学院大学」

マニュアルから一歩超えた、気づき、気配り、気働き!

海外旅行や帰郷、出張の行き帰りなど、飛行機の旅は多くの人にとって非日常的な体験。
 
そんな特別な時間と空間にふさわしいおもてなしで、安全で快適な空の旅をサポートするのが、客室乗務員です。
 
では、客室乗務員は、いつもどんなことを意識して接客サービスを行っているのでしょうか。
 
それは、「気づき」「気配り」「気働き」の3つを大切にすること。
 
まずは、お客さま一人ひとりの表情やしぐさ、会話などから、お客さまがどんな状況で、何を望んでいるのか、何に困っているかにいち早く気づいて、的確に対処する。
 
さらにその先に何が起こるか、お客さまが何を思うか、常に想像力を働かせながら臨機応変な対応をする、一連の行動です。
 
その心づかいは、お客さまが搭乗されてから、飛行機を降りられ、地上のスタッフにつなぐ、その時までずっと続きます。
 

たかがお菓子、されどお菓子。

ひとつ、私が経験した客室乗務員時代のエピソードをご紹介しましょう。
 
それは、福岡から東京へ向かう便のファーストクラスを利用されていた30代半ばの女性のお客さまのお話です。
 
国内便でもファーストクラスは食事の提供があるのですが、食後のお茶をお出しするときに、そのお客さまとこんな会話を交わしました。
 
「来月提供される〇〇さん(福岡の老舗和菓子店)のお菓子、美味しいですよね。とても楽しみです」
 
「ありがとうございます。おかげさまでいつもご好評をいただいております」
 
「来月の〇日にも出張でこの便に乗るのですが、その日は〇〇さんのお菓子は出ますか?」
 
「はい、その予定でございます」
 
「楽しみにしています」
 
いま目の前にないお菓子、来月提供予定であるにも関わらず、お菓子のことをご存じで、楽しみにされていることが、お客さまとのわずかに交わした会話のなかから感じ取れたこと。

控えめで、物静かな方の中に熱いものを感じたことが心の中にずっと残っていた私は、飛行機を降りるとすぐに茶菓のスケジュール表を確認しました。
 
すると、お客さまが搭乗される日は「※例外」と記されていました。
 
小さなお菓子ですが、お客さまにとっては思い入れのあるお菓子なのかもしれない。私の勘違いが、お客さまをがっかりさせてしまうかもしれない。
 
そう思った私は、すぐに地上のスタッフに連絡して、その方のお帰りの便が何便で、どの辺りに席を取っていらっしゃるのかを確認しました。
 
羽田の地上スタッフはすぐに福岡空港の地上スタッフに連絡をとり、お客さまが福岡に到着された際に、「〇〇さま、お伝えしたいことがございますので、お声がけください」というメッセージボードを掲げてもらうよう依頼しました。
 
幸いなことに、福岡空港ではすぐにその方からお声がけいただき、「お客さまが搭乗される日はご希望のお菓子が出ない」ことをお伝えすることができました。
 

お客さまの思いを察知して、行動に移す。

その後、そのお客さまからこんな言葉を頂戴しました。
 
「実はあのお菓子のパッケージは自分がデザインしたもので、他のお客さまがパッケージを開く時の反応を見るのを楽しみにしていました。お菓子が出ないことは残念ですが、それよりも、このたびのスタッフの皆さまの思いに触れて、とても感激しました。仕事に疲れ、少し落ち込むこともあったのですが、また仕事がんばろう!という気持ちが湧いてきました」
 
同じ働く女性としてその言葉は本当に嬉しく、お客さまとの何気ない会話から、その方が本当に欲していることに思いを巡らせ、真摯に対応することの大切さを改めて感じました。
 
また、共に働く地上スタッフの迅速な対応と連携プレーにも、誇りと感謝の気持ちでいっぱいになりました。
 
おもてなしの心とは、いつ、どこにいても、誰に対しても、「気づき」「気配り」「気働き」の心をもち、その心をカタチにすること。
 
それは、航空業界や観光業界においてはもちろん、お客さまを相手にするすべてのビジネスに通じる“おもてなしの極意”でもあります。
 
 
人を思いやる気持ちを国際社会で活かす
それが文学部 英語英米文化学科

  


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