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モノクロの映像が映し出す、自然と人が密接な江戸の暮らしと青春の輝き

映画やテレビドラマを通じて、かつての日本の暮らしや文化に触れることができる時代劇。私たちが経験していない出来事にもどこか懐かしさを感じたり、時代が違っても変わらない営みや人の思いにしみじみと感じ入ったりという楽しみがあります。

江戸時代を舞台に前向きに生きる若者たちを描いた作品で、その魅力を味わってみませんか。
  


■『せかいのおきく』

思わず引き込まれるモノクロの世界

©2023 FANTASIA

武家育ちでありながら、今は長屋で父と質素な生活を送るおきく。古紙や糞尿を売り買いする最下層の仕事に就く中次と矢亮。偶然に出会った3人が、つらい人生にくじけそうになりながらも心を通わせていく姿を描いた青春映画です。

主役のおきくを黒木華、中次を寛一郎、矢亮を池松壮亮が演じ、佐藤浩市、石橋蓮司などのベテランが脇を固めています。

作品を上映するミッドランドシネマ 名古屋空港の支配人、森さんに見どころを伺いました。
 

©2023 FANTASIA

― モノクロ映像の時代劇なんですね。

森:最近では珍しいモノクロ、スタンダードサイズの映像です。オープニングの雨のシーンなど、往年の黒澤映画を彷彿させるような映像で思わず引き込まれますね。とはいえ、フィルムではなくデジタル撮影なので、古い感じはなくてとても美しいです。モノクロであることで想像力をかき立てられますし、色という情報が入らない分、人物の表情などにより注目できるような気がします。
 
― 時代劇は難しいかも…と感じる人もいそうですが。

森:それがそうではなくて、言葉遣いも江戸時代らしくないところがあったりするんです。時代考証にこだわらず心情の表現を重視しているようで、そのおかげか若者たちのやりとりを自然に感じることができました。
 
― 江戸時代の庶民の暮らしが描かれているようですね。

森:主人公のおきくが暮らす長屋の人々が集まってわいわいしている場面など、猥雑だけれどにぎやかで楽し気に見えましたね。こんなやりとりは今でも変わらないなと思いつつ、核家族化が進んでご近所づきあいも希薄な現代と比べると、互いに助け合ったり思いやったりする関係性は古き良き日本の風景なのかなとも感じました。
  

若者の恋や成長を描いた青春物語

©2023 FANTASIA

― 3人の男女が物語の中心ですね。

森:若者の恋や成長という普遍的な内容が描かれています。教育を受けておらず読み書きができない中次が、おきくとの出会いによって文字を習いたいと思ったり、おきくの父の言葉で〝せかい〟という概念を知ったり、ステップアップしたいという前向きな姿勢や成長も感じられます。
 
― おきくと中次の恋も描かれます。

森:中次に恋をしたおきくのかわいらしい様子も出てきます。彼のことが頭から離れない自分に気づいて思わず恥らう場面など、現代の恋愛映画と変わらないなぁとほほえましくなりました。時代劇だから、と敬遠してしまうともったいないですね。
 
― 主演の黒木華は時代劇の出演が多く、とても安定感がありますよね。彼女の演技も見どころかと。

森:所作などにも違和感がなく、時代劇の世界になじんでいました。おきくはある出来事によって声が出なくなってしまうのですが、そこからが彼女の演技の真骨頂ですね。手話がない時代ですので、身振り手振りだけで思いを伝えようとする。資料によると、このジェスチャーは黒木さん自身が創作したそうです。
 

江戸の循環型社会から環境問題に思いをはせる

©2023 FANTASIA

― この作品は、気鋭の日本映画製作チームと世界の自然科学研究者が協力して、さまざまな時代の「良い日」に生きる人々を描き「映画」で伝えていくYOIHI PROJECTの第一弾作品だそうですね。

森:江戸時代の循環型社会を通して、環境問題を伝えるという趣旨が背景にあると聞いています。SDGsに関わるような現代的なテーマが時代劇になったことは非常に興味深いですね。中次と矢亮が携わる、糞尿を買って農村に肥料として売る仕事を通して、循環型社会が成り立っていたことをわかりやすく伝えています。また、劇中に「人間も死んで土に還る」といったセリフも出てきたりして、押しつけがましくなく、テーマを自然に受け入れられる内容になっています。
また、自然の風景を映したカットもふんだんに入っていて、それもテーマにつながっていると思いました。自然の循環を感じさせる描写にも注目しながら楽しんで頂くとよさそうです。見終わった後は、ほんのりあたたかい気持ちに包まれる作品ですね。
 
 

『せかいのおきく』ミッドランドスクエアシネマミッドランドシネマ 名古屋空港ほかにて、4月28日から上映予定。

予告編はこちらから。

 

ミッドランドスクエア シネマ 劇場情報

名古屋駅前に14スクリーン、全席ソフトレザー張りの2,205席を備える都市型シネマコンプレックス。メジャー作品はもちろん、アートレーベルやアニメレーベルも設けて、コアなファン向けの作品もカバーする。

ミッドランドシネマ 名古屋空港 劇場情報

県営名古屋空港に隣接する、エアポートウォーク名古屋内のシネマコンプレックス。ソフトレザーシートを配した12スクリーンを備え、バラエティに富んだ作品ラインナップとスタッフ手作りのPOPも魅力。



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