YWCAの活動を通して愛と平和と笑顔を広げたい。
金城学院中学校・高等学校の中でも最も古くからある活動のひとつで、愛と平和と笑顔を広げるための働きをしている金城学院YWCA。
2023年5月には、「名古屋空襲の日」を制定する意義を話し合う市民集会でプレゼンテーションをしたり、2023年8月には、広島の地で行われた「ヒロシマ平和交流会」に参加するなど、学内外に活動の場を広げています。
そんなYWCA活動のまとめ役を担う早川凛さんと新海いろはさんに、日頃の活動やヒロシマ平和交流会の様子を聞きました。
名古屋空襲「慰霊の日」の制定に向けた
市民集会でプレゼンテーション。
― 金城YWCAはどんな会で、どんな活動をしているのですか。
早川:YWCA (Young Women’s Christian Association)は、キリスト教精神を基盤に、人権や健康・環境が守られる平和な世界を実現するために、女性を中心に活動している国際的な団体です。
日本では37の中学校・高等学校YWCAが活動をしており、毎年夏に地区カンファレンス、3 年毎に全国カンファレンスを行って、交流を深めています。
新海:金城学院のYWCAは、中学では配食ボランティアや炊き出しの手伝い、障がい者施設への訪問といったボランティア活動を、高校ではヒロシマ平和交流会やカンファレンスに参加するなど、平和のために私たちが今できることは何かを考え、行動に移しています。
高校では毎年、夏休み中の出校日を「平和を考える日」としていますが、そのテーマを企画するのも、私たちYWCAの役目。
2023年のテーマは「金城と名古屋大空襲」
2022年は「ウクライナ支援の現状と課題」
2021年は「日本のシンドラーと呼ばれる杉原千畝」
2020年は「ノーベル平和賞受賞ICANのサーロー節子さん」
と、テーマは毎年変わります。
早川:今年のテーマを「金城と名古屋大空襲」としたのは、金城には、軍需工場に動員された金城学院の先輩3人が爆撃の犠牲になったという悲しい歴史があること。金城が太平洋戦争とどのように向き合ってきたのかを知ることで戦争を身近に引き寄せ、戦争とは何か、平和な社会を作るためにはどうしたらいいのか、ということを改めてみんなで考えてみようと思ったからです。
新海:今年の4月から準備を始め、資料などを調べていたところ、ちょうど「名古屋空襲の犠牲者を追悼する日を制定しよう」と取り組んでいる市民や高校生の集会が5月6日に開かれることを知り、参加の申し込みをしたところ、「金城さんが来るのだったらプレゼンもしてください」と言われ、高校生や市民、約100人の前で話をしました。
早川:この集会には河村たかし名古屋市長も参加されていて、席も私たちのすぐ近く。「太平洋戦争のさなかでも、金城のアメリカ人宣教師が、愛と平和を取り戻そうという強い意志を持って日本にとどまり続けた」という話を、感心して聞いてくださいました。
4年ぶりに対面での実施が復活した
「ヒロシマ平和交流会」。
ー 「ヒロシマ平和交流会」とはどんな会で、いつから始まったのでしょう。
新海:広島女学院の核廃絶署名実行委員のメンバーと金城YWCAが、「平和」というワードでひとつになるプログラムで、今年で8回目の開催になります。
交流会が生まれたきっかけは、2014年、金城が行っている「平和を考える日」のプログラムを知った広島女学院の核廃絶署名実行委員の顧問の先生から、「もし、可能であるなら、次年度(2015年)の『平和を考える日』に広島女学院の生徒を参加させたい」という要望があり、それはそのまま実現。その日の午後には、名古屋駅前と栄で、両校の生徒が一緒になって、核廃絶の署名活動を行ったそうです。
早川:それは本当に良い交わりのときで、実際に、広島女学院の平和への取り組みを教えてもらい、平和についての学びを深められたのは金城の方でした。それで2016年からは、逆に、「金城生を広島女学院に行かせていただきたい」とお願いしたそうです。そうして始まったのが「ヒロシマ平和交流会」。以来、広島女学院が開催校として、毎年、金城を受け入れてくださいます。
新海:コロナ禍の2020年から3年間はオンラインでの実施でしたが、今年は4年ぶりに対面での実施が復活。金城YWCAのメンバー13人が広島を訪れ、8月1日、2日の2日間にわたる平和交流会を開催しました。
広島女学院生の案内で、碑めぐり。
ー「ヒロシマ平和交流会」はどんなプログラムで行ったのですか。
新海:交流会1日目の会場は広島女学院高校。礼拝から始まり、続いて両校の学校紹介。私たちからは金城クイズや名古屋の方言クイズを出し、広島女学院の皆さんからも、女学院クイズや広島の方言を教えてもらいました。名古屋の方言はかなり知られていましたが、広島弁はデラムズでした。
その後は、両校それぞれが考える平和についてプレゼンテーションし、意見交換も行いました。午後からは、広島女学院の皆さんの案内で、女学院の校内を散策しました。
早川:広島女学院では、原爆で350人の教員・生徒が命を落としたそうです。原爆が投下された8月6日8時15分は全校礼拝が終わった直後で、教室に帰ろうとしたとき、校舎は崩れ、吹き飛び、炎に包まれたのだと聞きました。校庭には350人のお名前が刻まれた慰霊碑がありました。
新海:その後、平和記念公園に場所を移し、広島女学院生の案内で碑めぐりを体験。慰霊碑の説明はすべて自分たちで調べたもので、毎年、アップデートされます。「高校生である自分たちが、自分たちの言葉で語ることで、平和や戦争を身近なこととして受け止めてほしい」という思いがあるそうです。
早川:2日目は平和公園に集合し、広島女学院生と一緒に平和記念資料館を見学。女学院の皆さんは年に一度は必ず入館するそうですが、その日を金城生が来た日に合わせてくれています。女学院生の金城への愛を感じました。
確かな手応えを感じた
核廃絶署名活動。
― この日は、広島女学院の生徒さんと、核廃絶を訴える署名活動も行いました。
新海:この署名活動は、「核廃絶!ヒロシマ・中高生による署名キャンペーン」として2008年に始まったもので、集めた署名は平和首長会議を通して、国連関係者に届けられます。「ヒロシマ平和交流会」でも、この署名活動は例年のメインプログラムになっています。
早川:街頭に立っての署名活動は初めてで、最初は緊張と不安でいっぱいでしたが、広島女学院の皆さんが明るく、元気にやっていることに勇気をもらい、一歩を踏み出せました。いざ始めてみるとどんどん力が湧き上がって、気がついたら、海外の人にも英語で呼びかけている自分がいました。
新海:今年はG7広島サミットがあったせいか、海外の人もたくさんいて、欧米人もアジア人も、核保有国の人も、皆さん積極的に署名してくださいました。
早川:猛暑の中、たくさんの人が足をとめ、私たちの言葉に耳を傾け、署名に協力してくださいました。もちろん、署名活動は全員がしてくれるわけではありません。中には断る人もいれば、「核は必要だ」って意見された生徒もいます。でも、私はやっぱり核兵器の惨禍を2度と繰り返してはならないし、唯一の被爆国、日本にいるからこそ、核廃絶や平和の大切さを世界に訴え続けなければいけないと思っています。
新海:ロシアのウクライナ侵略やイスラエルとガザの軍事衝突で苦しんでいる人がたくさんいて、核兵器が使われる危険性も消えない今だからこそ、声を上げることが大事。戦争の悲惨さや核の怖さを、日本だけでなく世界中の人に伝え、平和の大切さを知ってもらえれば、もっと平和な世の中になると思います。
核のない、平和な世界をめざして
できることを続けていきたい、これからも。
― 平和交流会に参加して感じたこと、これから取り組んでいきたいことを聞かせてください。
新海:広島女学院の皆さんは、おじいちゃん、おばあちゃんなど、身のまわりにも被爆された方がいて、小さい時から平和について話し合ったりする機会が多く、それだけ「平和への思いの強さ」が私たちとは違うな、ということを実感しました。海外の人にも英語で慰霊碑の説明をしたり、平和の大切さを訴えている姿を見て、私ももっと英語を勉強しよう、もっと世界に目を向けよう、と思いました。
早川:広島の人の心の中にはいつも平和という言葉があって、私たちとは平和への思いの大きさが違う。私たちも、平和についてもっと学び、平和への思いを広く発信していかなければ。広島を訪れて、その思いをいっそう強くしました。
新海:コロナ禍が明けた今年は、ヒロシマ平和交流会やYWCAのカンファレンスなど、県外の高校生たちと交流し、協力しながら活動する機会をもつことができました。そこで学んだこと、経験したことを活かし、これからも平和の種まきをしていきたいと思っています。
早川:今回の交流会には金城YWCAの1年生が全員参加して、元気に、積極的に活動に取り組んでくれました。その姿を見て、私たちのやっていることが後輩へもつながっているんだなと感じてすごく嬉しかったし、愛と友情を持って私たちを迎えてくれた広島女学院の先生方、生徒の皆さんにも、感謝の気持ちでいっぱいです。ありがとうございました。
<YWCA活動アルバム2023>
■ 金城学院報 with Dignity vol.42 はこちら
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