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困難を乗り越えようとする若い世代のリアルな姿

4月から新しい環境での生活がスタートした人も多いですよね。思ったようにいかなくて戸惑ったり、悩んでしまったりすることもあるでしょう。そんな時、社会情勢や病気によって困難な状況に置かれながらも、前を向いて進んでいく若い世代の姿に力をもらえるかもしれません。今月、名古屋市内のミニシアターで公開される作品の中から、おすすめの2本をご紹介します。
  


■『少年たちの時代革命』

今のリアルな香港を切り取った青春群像劇

『少年たちの時代革命』(C) Animal Farm Production

2019年の香港の民主化デモに参加した若者たちが、抗議自殺しようとする少女を救うため、民間捜索隊を結成して香港を駆け巡る姿を描いた『少年たちの時代革命』。作品を上映するシネマスコーレの支配人、坪井さんに見どころを伺いました。

『少年たちの時代革命』(C) Animal Farm Production

- 2019年の出来事がもう映画化されているんですね。

坪井:2021年の作品なので、民主化デモの2年後。すごいスピード感で、まさに今の香港が切り取られているという印象です。ドキュメンタリーではなく劇映画なんですが、実際に撮影したデモの映像も使われていて、とてもリアルに感じられます。
 
- 民主化デモや香港の現状に詳しくなくても楽しめますか?

坪井:青春群像劇として、ストーリーも面白く感じて頂ける作品です。主人公の少女は、友達と一緒にゲームセンターで遊び、 デモにも参加するいまどきの香港の若者です。彼女を捜索する若者たちもSNSを通してつながるなど現代的な感覚で描かれているので、共感しやすいと思います。
 

香港映画の新たな可能性を感じさせる

『少年たちの時代革命』(C) Animal Farm Production

- 「新たな香港映画の幕開け」と称されている作品だそうですね。

坪井:まさにそうだと思います。香港国家安全維持法(国安法)施行によって、自由な映画制作が難しくなり、監督や俳優などこれまでの香港映画を担ってきた人材が海外へ流出しました。そのおかげで、若手の制作者たちに機会が与えられることになったようです。この作品も新人監督が低予算、ノースターで撮った作品ですが、過去の香港映画の枠にとらわれず、新鮮な魅力を感じさせる作品に仕上がっていると感じます。
 
- 同時期に上映されるドキュメンタリー作品もありますね。

坪井:『理大囲城(りだいいじょう)』というドキュメンタリーで、民主化デモの際の香港理工大学での13日間の籠城が記録されています。こちらは非常に緊迫感のある内容なので、『少年たちの時代革命』とあわせて見てもらうと、こんな出来事が起きた香港で撮られた作品なんだとより感慨深くなるはずです。
 

『少年たちの時代革命』『理大囲城』シネマスコーレにて、4月21日まで上映予定。

『少年たちの時代革命』 『理大囲城』 の予告編はこちら

 

シネマスコーレ 劇場情報

映画監督の若松孝二氏が1983年に立ち上げた、名古屋駅西口にあるミニシアター。2023年2月19日に開館40周年を迎える。アジア映画、日本映画、インディーズ作品などを中心とした多彩なプログラムに加えて、作品を盛り上げるイベントにも力を入れている。

 

■『ケアを紡いで』

27歳でがんを患った女性の日々の記録

27歳でステージ4の舌がんと診断され、仕事を休んで治療を続ける、看護師の鈴木ゆずなさん。『ケアを紡いで』は彼女の日々の暮らしをとらえたドキュメンタリーです。やりたいことをリストにして一つずつ叶えたり、夫や友人、仲間たちと大切な時を過ごしたり、命と向き合いながら紡ぐ日々がありのままに描かれています。作品を上映する名古屋シネマテークの支配人、永吉さんに見どころを伺いました。
 

― 20代の若さでがんを患う女性が主人公ですね。

永吉:私もこの作品を通して初めて知りましたが、「AYA(アヤ)世代」という表現があります。Adolescent(思春期)and Young Adult(若年成人)の頭文字で、主に、15歳から30歳代までのがん患者を指しています。経済的な支えとなる助成制度や、心理的なサポートなどが十分でなく困難を抱えている人が多いそうです。
 
― 看護師である鈴木さんならではの特徴や視点はありますか?

永吉:看護師の仕事を通して、患者さんの状況を把握されてきたんだなという印象です。病気を宣告されて冷静でいられる人は少ないと思います。治療をどうするか、お金のことは?保険は?などわからないことだらけでしょう。周りの家族に支えてもらいたいけれど、どうしてほしいかもうまく伝えられないと思います。その点、これまで医療の現場にいてわかっていることがあったんじゃないでしょうか。
  

重なりあって患者を支える、さまざまなケア

― 『ケアを紡いで』というタイトルに込められている意味は?

永吉:私の想像になりますが、ケアというものは単純ではなく、医療面でのケア、家族のサポート、経済的な支えなど、それぞれが重なり合い並行して、支え合って進むことが必要だと表しているのではないでしょうか。
映画の中ではNPO法人の仲間たちとの交流も描かれています。家族だけではない他の支え方もあって、ケアを必要としている人たちがお互いに支え合うという方法もあるのかと思いました。精神的な、心のサポートも重要な要素であるということでしょうか。
 
― この映画を通して感じられることは?

永吉:かなり進行した病気を宣告されているのに、彼女は非常に強くて冷静で、なんとか生きていく方向を探っている。その姿にとても驚きますし、すごい人だなと感じます。誰もが病気になる可能性がありますが、実際に自分がなってみたいとなかなか実感できないですよね。でも、この作品で命と向き合う彼女の姿を垣間見ることで、誰の身にも降りかかる自分の事として考えられるかもしれません。
 

『ケアを紡いで』名古屋シネマテークにて、4月15日~28日まで上映予定(延長の可能性あり)。

『ケアを紡いで』の予告編はこちら

 

名古屋シネマテーク劇場情報

1982年に設立された、名古屋・今池のミニシアター。邦・洋画を問わず、ロードショー公開から監督特集などの企画ものまでバラエティーに富んだラインナップで、シネコンでは出会えない良質の作品を多く上映する。

 


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