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明るくパワフルに生き抜くおばあちゃんたちの姿に想う

映画やドラマ、音楽や食など、韓国の文化に興味がある人も多いはず。韓国旅行に出かけて、文化や歴史を体感した人もいますよね。実は私たちのすぐ近くに、ずっと以前から、朝鮮半島からやってきて日本で暮らす在日の人たちの文化やコミュニティはありました。それはあまり広く伝えられず、意識されてこなかったかもしれません。

日本で人生の大半を過ごしたおばあちゃんたちの今を映したドキュメンタリーを通して、日本と韓国の関係にあらためて目を向けてみませんか。


■『アリラン ラプソディ 〜海を越えたハルモニたち〜』

今ようやく青春を謳歌するハルモニの姿

© Kimoon Film

主人公は、神奈川県川崎市で暮らす、朝鮮半島にルーツがあるおばあちゃん(ハルモニ)たち。戦争に翻弄され、生きる場所を求めて日本と朝鮮半島を往来し、在日一世として差別や貧困も経験。たどり着いた川崎でたくましく生きてきました。年を重ねた今、若い時にできなかった経験を取り戻すかのように仲間との学びや集いを楽しみ、明るく元気に過ごしています。

映画『アリラン ラプソディ 〜海を越えたハルモニたち〜』は、想像を絶する苦労をうちに秘めながらも、チャーミングな笑顔を見せるハルモニたちの今を映した作品です。

作品を上映するシネマスコーレの支配人・坪井さんに、映画の見どころを伺いました。
 
 金聖雄きむそんうん監督も在日二世の方なんですね。

坪井:そうですね、金さんのデビュー作『花はんめ』(2004年)も、ハルモニたちのドキュメンタリー映画で、その後もずっと続けて撮影されてきたそうです。約四半世紀にもわたって寄り添い続けているので、ハルモニたちと監督の距離が近くて、素の部分が撮れた感じがしますね。
 
― ハルモニたちの歴史を伝えるような内容でしょうか。

坪井:戦争や差別に関わる部分も出てきますが、それを無理に語ってもらうような作品ではなくて、今ようやく青春を謳歌できているハルモニたちの日常をとらえています。主人公はおばあちゃんたちですが、青春映画として撮っているのでは?と思いました。
 

主義主張があり、自ら行動を起こす力強さも

© Kimoon Film

― ハルモニたちからどんな印象を受けましたか?

坪井:最高齢の方は90代なんですが、みんなとにかく元気で、喜怒哀楽がはっきりしているなと感じました。みんなでご飯を作って食べて、踊ったり、一緒に旅行に出かけたり、喜ぶにしても悲しむにしても、本当に表情豊かですね。
サポートを受けて、若い時にできなかった読み書きを学んだり―、老いることがマイナスになっていなくて、今こそ青春を謳歌するんだという姿にこちらが元気づけられてしまいます。
 
― 戦争反対のデモ行進を行う場面もあるとか。

坪井:戦争についてはあまり語りたくないというハルモニたちですが、やはり自然と語ってくれるシーンもありますし、日本が再び戦争に向かっているのでは?と感じたら、行動を起こしていくんですよね。戦争が起きたら当たり前の日常がいとも簡単に崩れ去ることを経験している彼女たちだからこそ、戦争反対の言葉がとてもリアルです。
 
― ヘイトスピーチが押し寄せてきたりもするそうですね。

坪井:川崎に差別団体がやってきてヘイトスピーチをするんですが、これを川崎在住の日本人たちが阻止したり、コミュニティがしっかりしていると暮らしやすい社会にできるのかなとも感じました。差別団体と対峙する場にもハルモニがやってきて、自分の言葉で“差別を許してはいけない”と語る。みんな明るく元気で楽しい人たちですが、主義主張はしっかりしていて、自ら行動する姿勢がパワフルですね。
 

明るい日常の中にも考えるべきテーマが見える

© Kimoon Film

― 日本でともに暮らす仲間として理解を深めたい在日の方のドキュメンタリー、どんな見方をするとよいでしょうか。

坪井:あまり構えずに、ただ単に元気なハルモニを見に来てくれたらいいと思います。日本のおばあちゃんたちとはちょっと違う特別な元気が映っているので、元気の秘訣を探るのもいいですよね。悲しいシーンも出てきますが、それを超えていく強さをハルモニたちは教えてくれます。また、在日や戦争、差別などさまざまなテーマが出てきますので、自分たちは今何を考えるべきかという課題も自然と見えてくると思います。
 
初日と二日目は監督の舞台挨拶もありますし、上映2週目からは『花はんめ』も上映しますので、2本あわせて見て頂くのもおすすめです。
 

『アリラン ラプソディ』シネマスコーレにて、7月20日から上映予定。

『アリラン ラプソディ』の予告編はこちら

 シネマスコーレ劇場情報

シネマスコーレ
映画監督の若松孝二氏が1983年に立ち上げた、名古屋駅西口にあるミニシアター。2023年に開館40周年を迎えた。アジア映画、日本映画、インディーズ作品などを中心とした多彩なプログラムに加えて、作品を盛り上げるイベントにも力を入れている。



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